123 おまつりです! 1ページ目
みなさんこんにちは。収穫祭も6日目、今日はリンカーラさん達とお祭りに来ていますよ!
「ふおぉ~~~!」
「ふわぁ~~~!」
先程から、ソールさんとリープさんは中央広場から大通りへと流れるヒトの波に大興奮です。ソールさんとリープさんはアスラさんのコートの裾を左右でしっかりと掴んでいるのですが、お2人はこのヒトの波に(絶対に)飲み込まれてしまうので、もちろんこのまま進む事はありませんよ。
収穫祭のお祭りは、他の都市や町、村でも行っているのにこのヒトの量なのです。新緑祭の時も凄いヒトの量だったのですが、収穫祭も負けてはいない感じがしますよ。たくさんのヒトが集まる帝都は、やっぱり凄いですね。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
キールさんの言葉にアスラさんは「そうですね」と言ってソールさんを抱き上げたのですが、その反対側にいたリープさんがアスラさんに向かって「はいでしゅの」と言って両手を伸ばしています。リープさんのその様子に、アスラさんはリンカーラさんを見ます。
「リープ。リープはキールだよ。」
リンカーラさんがリープさんを抱き上げようとしますが、リープさんは「きょうは、あしゅらいーるがいいでしゅの!」と言ってアスラさんのコートを離しません。
「リープ、急にどうしたんだい?」
リンカーラさんがリープさんにそう聞きますが、リープさんは頻りに「あしゅらいーるがいいのでしゅ」と言ってフルフルと首を振ります。
「りーぷ、おとしゃんはそーるのでし。」
ソールさんの言葉に、リープさんも「しってましゅ」とお返事しています。これはもしかして、アスラさんのモテ期到来ですかね?
「あしゅらいーるのほうが、おおきいでしゅ。りーぷはちょうてんをめざしゅのでしゅ。」
アスラさんを見上げたリープさんは、何とも不思議な言葉をソールさんに言います。その言葉にリンカーラさんとキールさんがアスラさんに気の毒そうな視線を送っているように見えるのは、気のせいでしょうか?
「頂点、ですか?」
アスラさんの言葉に、リープさんは肩車をしている親子を指差し「あれでしゅ!」と言います。
「すていが『たかいところから、みることができる』っていっていたでしゅ!りーぷも、たかいところからみおろしたいのでしゅ!」
肩車の親子を指差していたリープさんの指はリンカーラさんによってソッと下げられましたが、リープさんの言いたい事はとても良く分かりました。確かにアスラさんは大きいですからね、そのアスラさんに肩車をして貰えるのであれば、とても良い眺めを体験できると思うのです。
「なる程・・・。」
リンカーラさんが納得したように周囲の様子を見回します。私もグルリと周りを見たのですが、確かに肩車をしている親子が目立ちます。
「リープ、基本的に肩車は男の子しかしないのですよ。」
リンカーラさんの様子に驚いたキールさんがリープさんにそう言いうと、リープさんは「ぴっ!」と驚いたようにアスラさんを見上げます。
「ええ、私も男の子に対しては肩車を行った事がありま「みゅっ!?」が、女の子に対しては肩車をした事はありませんね。」
「しょんな・・・。」
アスラさんの言葉にリープさんはしょんぼりと肩を下ろします。アスラさんの言葉の途中にソールさんが驚きの声を上げていましたが、アスラさんは気にした風も無く言葉を続けていましたよ。
「アスライール、待ってくれ。どうしてその時に、女の子に対しては肩車をしなかったんだ?」
「カーラ!?」
でも、そんな中、アスラさんの言葉に「異議あり!」とリンカーラさんが声を上げます。その言葉にキールさんはとても驚いていましたが、私も同じように驚いてしまいましたよ。
「リンカーラさん!女の子はスカートを履いている事が多いので、身内のヒト以外からはあまり抱き上げられたりしないのですよ。・・・ほら、抱き上げた時とかに足とかをそのまま触れちゃいますからね。私も小さな時は、お父さん以外のヒトにはあまり抱き上げられた事がありませんでしたよ?」
私の説明に、リンカーラさんもハッとしたように「そうだったね」と言います。キールさんがホッとしたように頷いているので、多分間違いではないはずです。
「り・・・、リープがおんなのこだからいけないのでしゅか!?」
リープさんが驚いたように私に言って来ますが、それは間違いですよ。
「いえいえ、リープさんは可愛らしい女の子なので、何も間違ってはいけませんよ。ただ、リープさんの今のお姿では、ヒト目のある所で肩車をする事が出来ないだけなのです。」
私の言葉にリープさんはパチパチと瞬きをします。
「私が学園に入るより前、お兄ちゃんの服を着て肩車をして貰った記憶があるのです。リープさんくらいの身長でしたら、男の子の格好をしていても多少は問題ないかと思うのですが・・・。」
言ってから「どうしよう」と思ってリンカーラさんを見てしまいましたが、リンカーラさんもキールさんもリープさんをジッと見ています。
「キール、私も騎獣する時にはキュロットを履くからドレスなんて着ないし、普段着にも何着か持っている。リープも1着くらいキュロットで合わせられる衣服を揃えても良いと思うのだが?」
「・・・そうですね。何かあった時に着替えられるようにした方が良いのかも知れませんね。」
リンカーラさんがキールさんにそう言った事によって、リープさんの衣服関係は何とかなりそうですね。
・・・でも、女のヒトの騎獣時の衣服について、私も聞きたい事が出来てしまったのですが?
「ソール!落ち着きなさい。どうしたのですか!?」
「そーるも、あれがいい!」
今度は先程のアスラさんの言葉に衝撃を受けたソールさんが、抱き抱えられていたアスラさんの腕から立ち上がり一生懸命アスラさんの頭を狙っています。そんな様子をリープさんが羨ましそうに見ていましたよ。
「ソールさん。ソールさんが高い所に行ってしまったら、私はどうやって食べ物をソールさんに渡したら良いのでしょう?残念ですが、アスラさんの頭の上だなんて高い所には、私からソールさんに食べ物を手渡せそうにありませんよ?」
「ぴっ!?」
私の言葉を聞いたソールさんには、私の言葉が意外だったのでしょう。少し笑いそうになったのですが、ソールさんは私の言葉を聞いてピタリと動きを止め、そうしてソッと元の位置(アスラさんの腕)に戻ったのです。アスラさんはホッとしたように「フィーナ、ありがとうございます」と私に言って来ましたが、このソールさんの動きはリンカーラさんとキールさんも面白かったようで、お2人とも少しだけお顔を逸らして「ふふっ」「ふっ」と笑っていました。
唯一、リープさんだけが「たくしゃんたべるのよ!」とソールさんに声を掛けていました。お2人はどれだけ食べるつもりなのでしょうか?リープさんの言葉に力強く「むっ!」と頷いたソールさんを見ながら、ちょっぴりお財布が心配になってしまいました。
ソールさんをアスラさんが抱き抱え、リープさんをキールさんが抱き上げたので、私はリンカーラさんと手を繋いで大通りに入りました。
初めは大通りの右側に並ぶ屋台を見ながら進みます。所々、ソールさんやリープさんが反応した屋台で足を止めたりしていたのですが、さすが収穫祭です。新緑祭の時とは違って、お野菜や稀少な果物を扱っている屋台も多く出店していました。それと、これから寒くなってくるので保存食を作る方も多いのでしょう。保存用のビンを扱っているお店もありましたよ。
私が意外に思った事は、リンカーラさんとキールさんが屋台の食べ物に対してそれ程驚いていない事でしょうか?
今だって、普通に屋台で買った食べ物を手に持って食べています。
「ん?どうしたんだい。」
私の視線に気付いたリンカーラさんは不思議そうに私を見てきます。
「いえ、リンカーラさんは屋台の食べ物に抵抗が無いようだなと思いまして・・・?」
「あぁ、その事か。そうだね、何だかんだ言って、私はフィーネリオン嬢よりも長く生きているからね。屋台の食べ物を食べる事くらいは何度も体験しているよ。」
リンカーラさんが手に持っているのは「イアル」というクレープのような物です。前世にもクレープ生地にお野菜やハム、ベーコンなどを包んだものがありましたが、イアルもそれらと同じような食べ物です。私が個人的に作る時には果物と生クリームを包んでいましたが、ソールさんがなかなか野菜を手に取らない時にはイアルを作って食べて貰っています。なので、ソールさんはお野菜を包むイアルと果物を包むクレープは別物と考えていますよ。
「アスラさんはお肉の串焼き以外、屋台の食べ物をほとんど知りませんでしたよ?」
「まさか!・・・アスライール、流石にそんな事は無いだろう?」
リンカーラさんの言葉に「あれ?」と思いながら口にした言葉は、リンカーラさんに疑われてしまいました。私達の前を歩いているアスラさんが困ったように振り返った事で、私の言葉を信じて貰えましたよ。
アスラさんの腕の中で「うまうま」と幸せそうに「ねり飴」を食べているソールさんの方が、アスラさんよりも食べ物の名前を知っていた事にリンカーラさんとキールさんが驚いていました。
ちなみに、ソールは「好きな物は最後に食べる」派で、リープは「好きな物を先に食べる」派です。ステイもソールと同じ「好きな物は最後に食べる」派なのですが、リープの毒牙が(今でも)ステイを襲っています。
リープに対しては、リンカーラの悩みは尽きません。
ソールも「野菜が嫌い」と言う訳ではありません。特別「野菜を食べなくてはいけない」と思っていません。食べたい物があれば、野菜もキチンと食べています。




