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115 きになるきになる






みなさんこんにちは。時が経つのは早いもので、今日で6月が終わります。




今日は、帝都に戻ってきたアメリアさんたちとリンカーラさんたちから、素敵なお土産を頂きました。

アメリアさんからはリリンの木から作られたカトラリーで、リンカーラさんにも同じ物が渡されていました。アメリアさんも同じ物を持っている様で、アメリアさんのお兄さんが私達の分を作ってくれたんだそうです。お兄ちゃんは工作系が苦手だったので、手先の器用なお兄さんがいるのは羨ましいです。


リンカーラさんからは、とても手触りの言い毛織物を頂きました。一緒にアメリアさんにも色違いの同じ物を渡していました。リンカーラさんのご実家は、辺境伯領を治めているサイジェル家なのですが、そちらの特産品は意外にも「毛織物」なんだそうです。国境付近の辺境伯領で放牧している事に驚きましたが、そう言われてみればモコモコしていて可愛らしいマムのその一蹴りは、脅威なんでしたっけ。

マムは何よりも「悪意」「害意」に敏感で、自分のテリトリーにそんな思惑を持ったヒトが入ると、一斉に逃げてしまうみたいなんです。そんなマムの最終手段が後ろ脚での「蹴り」なんだそうで、近付く際は「正面からが基本」なんだとリンカーラさんに教えて貰いました。

それでも飼育されているマムは(何もなければ)大人しいので、プギル、チーラに続いて飼育されている魔獣なんですよ。



「それにしても、ここは落ち着くな。」

リンカーラさんの言葉にアメリアさんも「本当に」と言って頷いています。お2人にここまで言って貰ったのです、準備していたモンブランを出しますよ。



「これは、リロマかしら?驚いた!リロマってこんな風に使う事も出来るのね。」

モンブランを一口食べたアメリアさんは、マロンクリームを絶賛しています。


「中にもリロマが入っているんだな。・・・不思議だ、パサパサしていない。」

リンカーラさんも甘く煮たリロマに驚いています。



ソールさんたち「精霊さま」組も、幸せそうにモンブランを食べていますよ。



・・・そう、こちらの世界でのリロマの調理法は、とても「残念」なんです。

私はニリアさんがリロマの調理している所を見て驚きました。前世の世界では、毬栗の毬から出して鬼皮と渋皮を剥いてから栗を料理していたのですが、こちらの世界では毬栗のまま火の中に放り込んでいるのです。

確かに「焼き栗」も美味しいです。美味しいのですが、栗を覆っている毬は勢いよく燃えますし、鬼皮の付いたままの栗を火の中に入れたら危険なので、前世では「やってはいけない事」の中に入っていましたよ?私の知っている「焼き栗」は、毬から出して鬼皮に傷を付けたものを火の中に入れる物だったので、衝撃が大きすぎました。火の中でパンッパンッパンッ!と弾けたリロマに驚いた私は、その場にいたライ兄さんを盾にしてしまいました。

火が消えた後には黒焦げのリロマの実があちこちに散乱していましたが、この黒焦げのリロマの実を調理に使うのがこちらの世界での「普通」だと知って本当に驚きました。もちろん焦げている所を削ぎ落とすので、食べられる所はとても少なくなっています。


そのスグ後です。私がニリアさんに「リロマの『安全な』調理の仕方」を一生懸命になってレクチャーしたのは。ニリアさんも初めの内は「いつも通りで大丈夫よ」と言っていたのですが、私が調理したリロマを差し入れした時にダンさんが「味が違う」と言った事で、安全な調理方法に変わりました。



モンブランだけでなく、チーズケーキやプリンも出しました。プリンを出したら、リープさんが「ぷりん!」ととても喜んでくれたので良かったです。チーズケーキにはリリンも入れたので、アメリアさんが驚いていました。はしゃぐソールさんとリープさんの横に座ったステイさんは、とても静かにお皿に載ったチーズケーキを食べていました。お代わりを聞いたら、とても嬉しそうに「いいの?」と言ってくれたので、少し大きな所をお皿に乗せました。ソールさんが「むっ!?」と反応していましたが、ソールさんにはまた後で作りますからね。



「アメリアさんに送って貰ったリリンは本当に美味しくて、お義父さんの所にも持って行ったんです。ソールさんも美味しそうに食べていたので、本当に嬉しかったです。」

「本当?それなら、もっと送れば良かったわ。フィーナさんから送られたケーキも家族が喜んでいたのよ。」

「無事に届いて良かったです。皆さんで食べて貰えて本当に良かった!」

どうやら、人数分足りたようです。本当に良かった!私の言葉にアメリアさんは嬉しそうに答えてくれました。アメリアさんから送られたリリンは、食後に食べたりソールさんのおやつにもなっていました。とても美味しかったので、もうすぐ無くなります。でも、ジャムやシロップ漬けにもしたので、寒くなったらおやつに加工しようと思います。



「あぁ、そう言えば、フィーネリオン嬢が兄上に渡したケーキがあったろう?母上が『調理方法を買い取りたい』と言っていたのだが、大丈夫だろうか?」

リンカーラさんの言葉に、アメリアさんが首を傾げています。


「大丈夫ですよ。リンカーラさんにお渡ししても大丈夫ですか?」

そう言った私の言葉に、リンカーラさんは「ギルドを通して貰った方が嬉しい、と母上が言っていたのだが出来るかい?」と言ってきました。


「えぇっと、そうなると生活ギルドでの登録になるのですが、大丈夫ですか?」

「・・・うん?そうなのかい?」

リンカーラさんは首を傾げながら「確認してみるよ」と言って席を立ちます。


「フィーナさん、何かあったのですか?」

アメリアさんが私にそう聞いてきたので、レイドさんに渡したパウンドケーキの説明をしました。ナゼかソールさんはプルプルしていましたが、私の説明を聞いたアメリアさんは「そのケーキの調理法、農耕地帯の生活ギルドにも出した方が良いですよ!絶対に!」と力強く言って来たので、登録料は掛かりますが出してみようと思います。


私は生活ギルドの登録を商業都市に居た時に済ませていました。生活ギルドは主婦が主体のギルドなんです。「料理のレシピ」や「掃除のコツ」を登録できるのです。料理のレシピを1つから登録できるので、主婦の皆さんは「お小遣い稼ぎ」感覚での登録をしているようです。料理のレシピ登録は前世でも似た様な仕組みがあったので、私は割と早くから活用していました。毎月口座に入ってくる金額を見るのが楽しくなって、調子に乗ってお菓子のレシピを登録したのは良い思い出です。

私が登録したのは商業都市でしたが、登録されたレシピは帝国内でしたら私が指示した所で開示できる様になっています。でも、その開示場所ごとに金額が掛かるので、今までは商業都市でしか開示していませんでした。ちなみに、生活ギルドも他のギルドと同じで、他の都市部であってもシステムは統一されています。似た様なレシピは、例え登録する所が違っても登録する時になかなか審査が降りないそうです。レシピを1つずつ確認しているのでしょうか?気になる所です。


今はアスラさんの収入に満足しているのでレシピの登録をしていないのですが、そろそろ口座が気になってきたので確認した方が良いかも知れませんね。



「フィーネリオン嬢、生活ギルドで良いみたいだ。頼めるかい?」

リンカーラさんの言葉に「分かりました」と答えつつ、生活ギルドに行ける日を確認しました。





久し振りの再会に積もる話がありすぎて、気が付いたら夕方になっていました。


アメリアさんとステイさんをローラントさんが迎えに来たので、少しお家の中で待って貰い、準備していた「キノコパイ」を焼きました。同じように、お迎えの馬車を呼んだリンカーラさんとリープさんにも同じ物を渡しました。



・・・キノコ嫌いの方がいたらどうしましょう。この事に、夕食の時にハッと気付いてしまいました。






夕食後、アスラさんとお話ししていたら、お義父さんからアスラさんに連絡が入りました。お義父さんとアスラさんの会話が終わった後、アスラさんから「少し良いですか?」と声を掛けられます。



お邪魔してはいけないと思ってお風呂の準備をしていたのですが、何かあったのでしょうか?



「フィーナ、明後日の2日なのですが、何か用事はありましたか?」

アスラさんからの言葉に首を傾げてしまいましたが、その日は生活ギルドに行こうとした日だったので「生活ギルドに行こうと思っていました」と伝えたら、アスラさんは驚いた様に私を見てきました。


「先月レイドさんに渡したパウンドケーキの調理方法を、辺境伯領と農耕地帯向けに登録してこようかなと思ったのです。何かあったのですか?」

私の言葉を聞いて、アスラさんは納得した様に頷きます。


「その後でも構いませんので、2日の日に屋敷に行って欲しいのです。大丈夫ですか?」

アスラさんは少し困った様に私に言って来ます。


「?大丈夫ですが、何かあったのですか?」

「えぇ、シルミア嬢がフィーナに頼みたい事があるそうなのです。内容までは父上も知らないみたいなのですが、もし、無理そうでしたら断っても大丈夫だそうですよ?」

私の疑問にアスラさんは答えてくれました。


シルミアさんの用事とはなんなのでしょうか?気になります。



「いいえ、ちょうどお義父さんに渡す物もありますし、お散歩代わりにソールさんと出かけてきますね。」

「では、父上に『2日の日に伺う』と伝えますね。それと、屋敷の方から迎えの馬車が来ますので、フィーナは家で待っていて大丈夫ですよ。」

私の言葉にアスラさんは「ありがとうございます」と言って言葉を続けました。お家から生活ギルドまでは歩いて行ける距離にありますし、そこからお屋敷までは少し遠いですけれど、歩いて行ける距離なんですよ?「お散歩」と思えば、良い運動になるのですが?



「フィーナ、馬車が生活ギルドへも向かってくれる様なので、迎えが来るまで家で待っていて下さいね。私も仕事が終わったら屋敷に向かいます。」

お義父さんとの連絡が終わったアスラさんは、とても素敵な笑顔でこう言っていました。



・・・あれ?もしかして私、迷子を心配されているのでしょうか?



ゴロ寝スペースにいるソールさんも首を傾げてこちらを見ています。










アメリアの実家の冬の収入は、木工品と刺繍とレース編みとなります。

リンカーラから貰った毛織物はシンプルに作られていたけれど、とても高級品です。


リンカーラの刺繍の腕が上がったのかは、聞かないでやって下さい。リープは(鬼の様なスパルタをする)ジンニーナを見て泣きそうになりました。エイミールは何回も逃走を図っていたけれど、ジンニーナが先回りする為に失敗を繰り返していました。


アメリアから手紙を貰ったヘストは、帝都滞在中のお礼も込めてフィーネリオンの所にリリンを送りました。フィーネリオンからお返しのパウンドケーキは、家族で喜びました。


ジンニーナも生活ギルドに登録されていたビグンのパウンドケーキを真っ先に購入しました。それと一緒にビグンのお菓子が登録されていたので、一緒に購入しています。辺境伯領では花粉症用の薬が広まってきたので、ビグンの木を家庭で育てる様になります。

ビワとは違ってビグンには独特の苦みがあるので、フィーネリオンは砂糖漬けやシロップ漬けのレシピを登録しました。レイドは嬉しくてフィーネリオンに手紙を書きました。


キノコ嫌いはいなかったので、その日の食卓は3家庭でキノコパイでした。


フィーネリオンが「生活ギルドに行く」と言った時にアスライールが驚いたのは、「自分の収入が足りない」のかと思ったから。生活ギルドがどんな所なのかは、知っていました。アスライールはフィーネリオンの説明を聞いて安心しました。


ウロチョロするソールが一緒な事も心配なのですが、アスライールが何より心配しているのは、迷子では無くて「ナンパ」の方だったり。

 


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