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本日最大の衝撃が私を襲っていますよ!
前世の言葉で言うならば「モテ期到来!」でしょうか?・・・何だか違うような気がします。
・・・今朝、確かにお母さんと「そろそろ、私の結婚相手を探しましょう!」何てお話をしていました。
・・・確かに、学院で一緒だった子には「だって、婚約者いるし~」と言われて羨ましく思っていました。
・・・確かに、結婚相手のいない周りの子たちと一緒に婚活しよう!と言っていました。
・・・確かに、私にも「19歳になったら結婚しますよ!」と思っていました。
・・・確かに、心の何処かでは『結婚なんてまだ考えなくても・・・』なんて思っていました。
朝から自分に起きているこの一連の騒動は、扉から「ドッキリでした~!」と言って、お父さんが入ってきても大丈夫なくらい「いつも」の私の日常からは考えられない、不自然な事が続いています。
今だって、騎士さまが私に跪いているのがありえません!
前世の私であれば「リアル騎士さま!きゃっほ~い!」とか言い出しそうですが、その上で「ただし、騎士さまの存在は2次元に限る!」という言葉に続くのです!
あちらでは、現実に「イケメン騎士さま」なんていませんでしたからね!
「き・・騎士さま!どうか、お気を確かに持って下さい!
お父さんの登場が遅いのは、ドッキリのプラカードを何処かに置き忘れてしまったのかも知れません!
お父さんうっかり屋さんだから!見つからなくて泣いているのかも!・・・カメラとかはありませんが、大丈夫です!何とかしますよ!
・・・私、一緒にプラカードを探してこないと!」
そんな現実逃避をしながらワタワタと扉の方に向かおうとするのですが、騎士さまに左手を掴まれているのでその場所から動く事が出来ません。
「フィーネリオン嬢の仰る事が理解できず、申し訳ありません・・・。
私も婚姻については何の準備もしていませんが、父君からは書類上ですが婚姻を認めて頂けますので後ほど挨拶致しましょう。
ですが、私からもフィーネリオン嬢に婚姻を申し込ませて欲しいのです。
・・・それとも、先程は『婚約者』はいらっしゃらないと仰いましたが、本当はどなたか心に想う方がいらっしゃるのですか?」
「ぴょっ!?」
少しだけ視界の端に入る精霊さまがこちらをビックリしたように見ています。
私自身が今この状況に追いついていませんから!ただ、騎士さまの仰っている内容に心が涙で溢れます・・・。学生時代も恋人だなんてヒトは居ませんでしたよ!私の傍に家族(従業員含む)以外の男の人なんて居ませんでしたから、17年間1人身でしたが!なにか!
「いえ・・・、そのような方はいませんが・・・。」
「それならば、私との婚姻も考えて頂けませんか?」
私の答えに、騎士さまが言葉を続けます。
「どうして『婚約』や『結婚』ではなく、『婚姻』・・・・なのでしょうか・・・?」
私は戸惑いながら答えます。
「・・・・?
ソールが成長するまで、どれだけの年月が掛かるのか分かりません。婚約や結婚だなんて不確約な状態でいるよりも法的に婚姻という形を取って、夫婦として生活した方がフィーネリオン嬢のこれからにも良いと思うのですが?」
・・・・なるほど。騎士さまは、私の問いに「私のこれから先」をしっかりと見据えたお答えをくださいました。
確かに精霊さまの成長速度によっては、お互いに結婚適齢期を遥かに過ぎてしまうかもしれませんよね・・・。婚姻の手続きをしてしまえば、私は法的に騎士さまの「妻」と言う肩書になりますからね。騎士さまはお優しいから、精霊さまが無事に成長されてもそのまま私を「家族」として養ってくださるのかも知れません!
「『ふぃーにぇりおん』は、『あしゅらいーる』といっしょは『いや』でしか?」
騎士さまとの婚姻に付いて色々な事を考え過ぎてグルグルしてきた頭には、すぐ傍に寄ってきた精霊さまの言葉が直ぐには入って来ませんでした。でも、何だか色々と考え過ぎていた自分に笑えてしまいます。
「ふふっ。何だか、楽しくなってきました。」
「??」
「どうなさいました?」
良く理解できていない精霊さまと、いきなり笑いだした私に驚いている騎士さま。お2人を見て、ますます笑ってしまいました。
「騎士さま。私の名前はフィーネリオン・ミューです。
私は、ここミュー商店店主の第2子で、長女です。どうぞ、「フィーナ」とお呼びください。
趣味はお菓子作りや裁縫。あと、家事は得意です!本を読むのも演劇を見るのも大好きです。
騎士さま、精霊さま。不束者ですが、これからどうぞよろしくお願いいたします。」
「!・・・私はアスライール=ディ=ヴァレンタです。名前は呼びやすい様に好きに呼んでください。
帝国騎士団第3師団第5部隊に所属しています。本を読むのは好きです。騎獣での遠乗りが趣味のようなものです。
フィーネ・・・『フィーナ』こちらこそよろしく頼みます。」
「『そーる』でし!
えっと、えっと・・・。がんばるでし!」
私が「ふふふっ」と笑って騎士さまの手と繋がっている左手を握り返しながらながら自己紹介をすれば、騎士さまも精霊さまも自己紹介をしてくださいました。
こちらの世界ではたとえ自分が一方的に知っている方でも、自己紹介をして頂かないと「相手のお名前をお呼びする権利」がありません。今までは、私が「騎士さま」とお呼びして、騎士さまも私が名乗らなかったので私の事は「フィーネリオン嬢」もしくは「娘」「お嬢さん」でしたからね。呼び方についてはお互い初めてのあいさつです。
「・・・私が婚姻を申し込んでこんな事を言うのも何かと思うのですが・・・。本当に私と『婚姻』でよろしいですか?」
「?騎士さまがお嫌なのであれば、私は『同行者』でも構いま「いえ、『婚姻』でお願いします!」はい!こちらこそよろしくお願いします。
・・・騎士さまが不安に思うのも、何となく私にもわかります。ですが、先程考えたのです。
たくさん考えて、騎士さま・・・、『アスラさん』とお呼びしても良いですか?「はい、どうぞ」
・・・自分でも驚いたのですが、私はアスラさんとソールさん「あい!」『お2人と一緒に生活する事』を前提に考え事をしていたのです。そうしたら、何だかイロイロと考えるのが馬鹿みたいに感じました。
・・・もう!アスラさんっ!一度決めたら、『女は度胸!』ですよ!アスラさんは男性なので、『男も度胸!』ですよ!」
胸を張って「謎の格言」で答えた私にアスラさんが嬉しそうに「そうですね!」と言いました。
そんなアスラさんを見てソールさんも嬉しそうです。
「・・・だいぶ長い間話をしていたようです。外も暗くなってきましたし、私達はそろそろお暇して宿に向かった方が良さそうですね。」
そう言われて外を見てみると、外は陽も落ちて夜の帳が下りてくる時間になっていました。
そんな時、トントントン・・・とドアがノックされました。
?誰でしょう、アスラさんと顔を見合わせました。
「フィーナ。話は終わりそうなの?」
扉の向こうからお母さんの声が聞こえます。
扉を開けると、お母さんとお兄ちゃんが立っていました
「今日は、もう暗くなってきたから家に泊まって頂いたらどうかしら?と思ったのだけれど・・・?
・・・どう?お話は纏まりそうなの?」
私達がずっと部屋に籠って話をしていたので、お母さんが心配そうに私に聞いてきました。
「はい、もう大丈夫ですよ!
あ!そうでした、お母さん、お兄ちゃん。私、騎士さま・・・アスラさんと『婚姻』する事にしました!」
「「ええっ!!」」
私の報告に2人は驚いていましたが、すぐに「良かった!フィーナが結婚できた!」とか「心配事が1つ消えたわ!」とかイロイロ言っていますが、どういう事なのですかね?
・・・純粋に結婚を喜んで貰えているハズなのに、逆に不安になるのはナゼなのでしょう・・・?
「騎士様、どうぞ妹を・・・フィーナをよろしくお願いします!」
「私からも、フィーナをお願いしますね。」
「!こちらこそ、大切にいたします。」
そんな事を言いながらお兄ちゃんとお母さんは、アスラさんとガッチリと握手をしています。
・・・。
・・・あれ?
「そう言えば、・・・お父さんは?どうしたのですか?」
「父さんね・・・。」
「もう、あのヒトったら・・・。」
私の問いは、お母さんとお兄ちゃんの「溜め息」による答えで何となく答えが分かってしまいました。
お父さんはドッキリのプラカードを探していた訳ではなくて、「天岩戸」に籠ってしまったのですね・・・。
そして、私の結婚の大きな障害は、(やっぱり)お父さんなのですね。
何となく、・・・何となくは分かっていましたよ。お母さんも「困ったわ」何て言ってますから。妹達の時は、もっと大変になるんだろうなぁ・・・って思います。
でも、その時には妹達の未来の旦那様とお兄ちゃんがお父さんに立ち向かうはずなので、大丈夫でしょう。・・・そして、こちらにはアスラさんが居るので巻き込まれる未来しか見えませんが、お姉ちゃんは遠い帝都から頑張って応援しますからね!
・・・出来れば、巻き込まないで欲しいと思うのですが・・・。無理っぽいですよね。
今現在、最終決戦に臨む勇者の気持ちが(分かりたくないけれど!)分かった気がします・・・。
最終パーティーは、「勇者」フィーネリオン・「戦士」(騎士?)アスラさん・「僧侶」お母さん・「商人」お兄ちゃん・「マスコット」ソールさん。の5人(?)パーティーで立ち向かおうと思います!
やっぱりラスボスはお父さんで!