表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/163

109 ようこそ! 6ページ目






みなさんこんにちは。今日は5月の最後の日です。




明日がお兄ちゃん達の帰る日という事もあって、今日のソールさんはアスラさんがドン引きするくらいお兄ちゃんにベッタリとくっついています。今日の夜は一緒に眠る約束までしているので、ソールさんの「お兄ちゃんロス」が心配でなりません。


楽しい時間はあっという間に過ぎて行く事を、改めて実感したフィーネリオンです。



この1週間、いろいろな事がありました。でも、お兄ちゃん達に帝都滞在を楽しんで貰えて、本当に良かったと思います。




何より、ティアちゃんの「騎士団に行ってみたい!」の言葉は、ティアちゃんの意思とは180度正反対に受け取ったアスラさんと騎士さんたちによって「とても」しっかりとした「騎士団見学」が出来ました。建物内を案内してくれた女性の騎士さまが、とても熱心に騎士団への勧誘していましたが、アスラさんはティアちゃんを騎士にしたいのでしょうか?私は断固拒否させて貰いますよ!この事に関しては、徹底抗戦の構えです!


ティアちゃんの言い分としては、ただ「帝都旅行案内」という本に載っていた「騎士団の建物見学」というページを思い出しての言葉だったのでしょう。ですが、その言葉を聞いたアスラさんはとても嬉しそうに「隊長に掛け合ってみますね。」と言っていたそうです。私とニアちゃんが夕食の準備をしていた時のお話だった様で、夕食中に次の日の予定が埋まりました。・・・アスラさんの「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」はその場で行われていたのでしょうか?隊長さん、お仕事が早すぎです!




次の日、お兄ちゃんはアリアちゃんの小父さんのお店に行ってしまったので、私たち姉妹とソールさんとで騎士団に向かいました。ソールさんはお兄ちゃんに付いて行きたそうにしていましたが、「すおんがいるから、おかしゃんといっしょにいくでし」と言ってお兄ちゃんに手を振って見送っていました。


騎士団に着いた時に、入り口にある受付の所にいた騎士さまに声を掛けたら、入り口までアスラさんが迎えに来てくれました。一度応接間に案内さたのですが、アスラさんはここまででした。今回は前回の時の様に「奥の奥」まで連れて行かれる事は無かったのですが、ここに来るまでも何だか視線を集めていたような気がしましたよ?



・・・「ニアちゃんとティアちゃん効果」ですかね?



それから女性の騎士さまに建物内を案内して貰ったのですが、その合間合間にニアちゃんとティアちゃんは「体力測定」させられていた様な気がしました。木の剣を持たされた時には、さすがに2人も「あれ?」と思ったみたいですが、あえてツッコミを入れずに流されながら木の剣で素振りみたいな事をしていました。


一通り建物内を見学して、最後にアスラさんが所属している第3師団の騎士さまたちが訓練している訓練場に案内されたのですが、そこでは師団を5つに分けての「模擬戦」が行われていました。私たちが到着した時にはアスラさんたち第5部隊の皆さんの出番は終わっていたようでした。


上からアスラさんを見つけたのですが、アスラさんは見覚えのある騎士さまとお話をしていて、私たちには気付いていないようでした。でも、アスラさんと一緒にいたソールさんが私たちに気付いて、大きな声で「おかしゃ~~ん!」と私たちに大きく手を振った事で、私たちは注目の的になりました。




「お、久し振りだな。」

アスラさんの上司である第5部隊の隊長さんのエスターさんが「どうせなら下で見たらどうだ」と騎士の皆さまの傍に私たちを呼んでくれました。騎士さまたちの居る所まで降りる事は出来ませんでしたが、皆さんニアちゃんとティアちゃんに興味津々のようでした。


でも、皆さんは「そうか・・・、フィーネリオン嬢の妹君と言う事は、アスライールの・・・」と言って遠い目をしています。どうしたのでしょうか?アスラさんの方をそっと見てみたのですが、アスラさんも不思議そうにしていました。



その後、アスラさんたちの第5部隊が入っているグループと別のグループとの対戦が行われたのですが、当たり前の様にアスラさんに付いていこうとしたソールさんに驚いて、思わず引き留めてしまいました。



「そーるね、つおいのよ!」

私とティアちゃんの間に収まったソールさんは、キリッとしたとても良いお顔でこう言います。


「でも、ケガしたら危ないからここから一緒に見ていよう?」

ティアちゃんの言葉に私とニアちゃんが「そうですね」「その方が良いよ」と言った事で、ソールさんは私たちと一緒にアスラさんの応援をしていました。ですが、最後の方には「すおん、がんばるでし~~~!」と席から立ち上がり、両手を振り回しての応援をしていました。応援で大ハッスルしたソールさんは、アスラさんたちの対戦が終わった時「ふぅ」と息を吐いて「よいしょ」と言いながら私とティアちゃんの間に収まり直していましたよ。


ソールさんのその応援の様子が可愛らしかったのでしょう。ニアちゃんとティアちゃんも「可愛すぎる~!」と言ってソールさんに「お茶飲む?」と聞いていましたが、そんな2人とは違って、私はソールさんのその「貫禄」のある応援後の様子が面白くて笑ってしまいました。



アスラさんの帰る時間に合わせて帰ろうと思ったのですが、隊長さんがアスラさんに「上がって良いぞ」と言った事で、アスラさんは定時よりも1刻早く帰る様になりました。




帰りに「今日の夕食は何が良いですか?」と聞いたら、ソールさんが「おにく!」と元気にリクエストを返してくれました。ネコさんも「なぁ~~」と賛成のようですが、ネコさんのご飯はいつも通りのメニューですよ。安心して下さいね。


「ニアちゃんとティアちゃんは何が良いですか?」

私の言葉に、ニアちゃんは「私は何でも良いですよ」と言いますが、ティアちゃんは「私ね、『うぃんなー』が良いなぁ」と私に言います。


「ウィンナーですか?それなら、ウィンナーをたくさん作りましょう!」

私の言葉にティアちゃんは「やったぁ!」と嬉しそうに声を上げます。




アスラさんが荷物を持ってくれたので、たくさんのお肉と野菜を買いました。ネコさんがお肉屋さんでお肉をジッと見ていましたが、ネコさんに驚く事無く店主さんは「プギルの肉とマムの腸だな」と言って会計をしてくれました。ネコさんの喉がゴロゴロと鳴っていましたが、ネコさんは「待て」の出来る賢いカリャンなので、目の前のお肉に飛びつく事はありません。マムはヒツジの様な魔獣です。モコモコしていて大人しいと聞いていたのですが、その後ろ脚で一蹴りされると死者が出る時もあるようです。アスラさんが「とても恐ろしい魔獣です」と言っていました。マム・・・、何て恐ろしい子・・・。






お家に戻った私は、早速ウィンナー作りを始めます。前世ではパッケージされていたウィンナーですが、こちらの世界にもウィンナーに似た様な「セリーニ」というお肉の腸詰めがあります。

でも、セリーニは「ウィンナーの様でウィンナーでは無い」食べ物です。ウィンナーは「生のお肉」を詰めて作りますが、セリーニは「加熱したお肉」を詰めていくのです。セリーニを作る時、マムの腸にお肉を詰める時にお肉で腸が破れやすいので、私はウィンナーしか作らなくなりました。


ニアちゃんが「手伝います!」と言ってくれたので、一緒にウィンナー作りを始めました。




まず、マムの腸を水に漬して柔らかくします。ニアちゃんにお願いしてプギルのお肉をミンチにして貰い、下味を付けて粘りがでるまでよく混ぜ合わせて貰いました。その間、私は絞り袋に口金をセットしたり、お鍋や道具類の準備をしましょう。

セリーニ用の器具は普通に売っているのですが、作る予定の無いセリーニ用の器具を揃える気にはならなかった私は、ウィンナーを作る時用の口金には生クリーム用の口金の中で先が細い物を代用品にしています。もちろんお菓子用とは別にしてありますよ。



「ニアちゃん、それくらいで大丈夫ですよ。ありがとうございます。」

しっかりとお肉が混ぜ合わせられていたので、ニアちゃんに声を掛けて絞り袋に混ぜ合わせて貰ったお肉を入れていきます。結構な量のお肉を混ぜて貰ったので、ニアちゃんには休んで貰いましょう。



お水に漬して柔らかくしたマムの腸を、口金に端から通していきます。3回分くらいの量があるのですが、我が家には「食欲魔神」が2人程いるのでこの量でも大丈夫です。今日残っても、明日の朝食べられますから問題はありませんよ。


絞り袋をお肉が出てくるまで絞ったら、先を取り除いてマムの腸の先の方を固結びします。お肉をマムの腸に絞り出していくのですが、たくさん入れすぎるとマムの腸が破れてしまいます。なので、様子を見ながらお肉を出していくのです。

マムの腸にお肉を入れ終わったら、最後に後ろの部分を固結びしてから好きな長さにクルクルねじって止めていきます。口金にマムの腸をセットした時に、ティアちゃんが「私もやりたい!」と言ってきたので、ティアちゃんが緊急参戦してきました。

時々、ティアちゃんの「あぁ!?」とか「やばっ!」と言う声が台所に響きましたが、どんな形をしていても「ウィンナー」なので、大丈夫ですよ。ティアちゃんの様子を見ていたソールさんは、ニキニキとさせていた両手をソッとお膝に戻してアスラさんに絵本を読んで貰っていました。

ニアちゃんも両手を戻そうとしていましたが、意を決した様に「私もやります!」と言って3本目の腸詰めを行っていました。



・・・ニアちゃんとティアちゃんは「初めてのウィンナー作り」だった訳ですから、そんなに気落ちしなくても良いのですよ?食べたら全部同じ味なんですから。


心なし気落ちしているニアちゃんとティアちゃんには座って貰って、私は大きめの鍋を2つコンロに乗せてお湯を沸かします。作ったウィンナーの量が多いので、茹でる為のお鍋です。

お湯が沸いてきた所で、ウィンナーを投入しました。


この時にお兄ちゃんが帰ってきましたが、お兄ちゃんはドンヨリとしているニアちゃんたちに首を傾げています。お兄ちゃんに駆け寄ったソールさんが「うにょうにょしてたの!」のと言った事で、ますます首を傾げてしまいましたよ。


・・・ソールさん、ニアちゃんとティアちゃんは「うにょうにょ」していませんよ?それはウィンナーの方ですからね?


お湯が再沸騰したら、コンロの火を止めてお鍋に蓋をして半刻くらいそのまま放置しますよ。こうやって置いておく事で、中までジックリと火を通すのです。



冷蔵庫から作り置きしていたミートパイを出します。これは、朝の内に仕込んで置いた物で、あとは焼き上げるだけの状態にしてあります。これはオーブンに入れて、焼き始めましょう。


後は、野菜類を刻んでサラダを作ります。お肉だけではバランスが悪いですからね。・・・特にソールさんなんですが。


野菜を切り終わった後、お皿に盛り付けをしながら時計を見たら、丁度ウィンナーを取り出す頃でした。ウィンナーをトングで掴んでお鍋から取り出すと、捻ったところを包丁で切っていきます。

お鍋のお湯は捨てて、空いたコンロにフライパンを載せます。火加減を調整したフライパンでこんがりと焼き上げると完成です。ウィンナーを焼くのはニアちゃんにお任せして、私はオーブンからミートパイを取り出しましょうか。


ソールさんはお兄ちゃんと一緒にテーブルに移動していて、ティアちゃんは立ち上がる時にアスラさんに手を差し出されて恥ずかしそうにしていました。

テーブルに夕食の準備が揃うと、ソールさんの元気な「いただきます!」で食事が始まります。


ティアちゃんは嬉しそうに「そうそう、この感じ!」と言いながらウィンナーを食べています。山盛りのウィンナーにソールさんは大興奮ですが、「うにうに」と言いながらニアちゃんとティアちゃんが作ったウィンナーを食べるのは止めてあげて下さい。味は一緒でしょう?個性的な形なんですよ!



夕食が終わってお風呂に入る時、ソールさんはお兄ちゃんをご指名していました。アスラさんが「すみません。ソールをよろしくお願いします。」と言ってソールさんをお兄ちゃんに託していましたが、その間のソールさんのお顔がキリリッとしていたのはどうしてなのでしょうか?


今日はお兄ちゃんがソールさんの所でお休みなので、1階のお部屋をニアちゃんとティアちゃんが使う様になります。何だか気を遣ったソールさんがご自分のぬいぐるみを大量にベットの枕元に並べていましたが、ニアちゃんとティアちゃんは「久し振りの2人部屋だね!」と言いながら楽しそうにしています。



お兄ちゃんたちは明日のお昼の馬車に乗って帰るので「お弁当とお菓子の詰め合わせを作ろう」と思いながら、5月の最後の日が過ぎていきました。












(独身の)騎士の皆さんからしてみれば、ジスリニアとティアーナは、アスライールの妻であるフィーネリオンの「妹」で無ければ「お嫁さん候補」に入れたいくらい。後ろに控えている家が怖すぎて、勝負に出る前に諦めました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ