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107 ようこそ! 4ページ目






「・・・」

「・・・」



「いらっしゃいませ。お嬢様。お部屋の準備が整っていますので、ご案内致します。」

ヴァレンタ家のお屋敷に到着した私達を、ギースさんが出迎えてくれます。お屋敷に入る前から、周りの皆さんが無口になっている事に不安を覚えます。






「相変わらずここは凄いな・・・。」

「えぇ・・・。本当ね・・・。」

ローラントさんとアメリアさんが少しだけ遠い目をしている様に見えるのは、きっと気のせいですよね。

お2人だってトライデント候爵さまのお屋敷に出入りしているんですから、こう言った対応には慣れていると思うのですよ。






私達はギースさんの先導で、準備されていたお部屋に案内されました。アスラさんはギースさんに「ローラントさんとアメリアさんのお客様」と説明していた様で、私達はお屋敷の西側にある応接間に通されました。

こちらの応接間は角部屋なので、お部屋の壁2面がガラス窓になっています。今は夕時となっていますが、日中であればとても綺麗なお庭を一望出来ます。いえ、夕日に照らされているお庭も素敵ですよ!でも、私のお勧めは日中の太陽に照らされたお庭です。



「では、何かご入り用がございましたら、ベルを鳴らして下さい。メイドが直ぐにこちらに参ります。」

準備されたお部屋に通され後、ギースさんはそう言ってお部屋から出て行きます。お部屋を出る前にお義父さんがいらっしゃるのか聞いたら、「本日はお帰りになっております。」と教えてくれたので、ローラントさん達の「話し合い」の間にお顔を出そうと思います。



「フィーナ、アスライールさんのお父さんの所に行く時に、オレも付いて行っても良いかい?」

お兄ちゃんの言葉に驚きましたが、お兄ちゃんの「フィーナがお世話になっているからね。挨拶はしないと。」という言葉に嬉しくなりました。




「フィーナさん、私達は大丈夫なので、どうぞ伯爵様の所に行って来て下さい。」

アメリアさんの言葉に「そうですか?」とお部屋の中を見ます。

ローラントさんのお姉さんたちは「伯爵!?」と驚いた様にしていますが、そう言えばアスラさんのご実家の事は伝えていませんでしたね。

ローラントさんのお姉さんたちは、移動先が「貴族の屋敷」と分かってから随分と大人しくなっていましたが、お屋敷の持ち主の爵位が分からなかったからだったのでしょう。移動中、初めの内はローラントさんに対して「私達はそろそろ帰らないと・・・。」と言っていましたが、ローラントさんの「それだと、ただの先延ばしにしかならない。今日の内にしっかりと話を聞いて貰う」の言葉にますます項垂れていきました。

お姉さんたちはこのお屋敷に着いてから落ち着かないのか、ずっとソワソワしています。


アメリアさんのお兄さん家族もヴァレンタ家のお屋敷を見た時に「場違いじゃ無いか?」と言っていました。







「では、私達は席を外させて貰いますね?何かあったら、ベルを鳴らして下さいね?」

そう言った私は、ふとソールさんを見ます。


「ソールさんはどうしますか?ステイさんと一緒にこちらに残りますか?」

「ぴっ!?」

私の言葉に驚いたソールさんは「おかしゃんといっしょにいくでし!」と言って、ぽてぽてっと私の所に来ました。ソールさん、ステイさんの手を引いているのはどうしてなのですか?


「すていもいっしょ!」

私の視線に気付いたソールさんはこう言っていますが、ソールさんに手を引かれてきたステイさんはローラントさんを見ています。


「ステイ、行ってこい。俺の方は大丈夫だ。」

ローラントさんの言葉を聞いて、ステイさんはアメリアさんを見ます。


「えぇ、私も大丈夫だからソール君と一緒にお屋敷の中を見てきて?」

アメリアさんの言葉にステイさんは頷きます。


「あ・・・!でも、良かったら、シュウ君とソウ君も連れて行って貰えると、とても助かります。」

アメリアさんの言葉に、アメリアさんのお兄さん夫婦が驚きます。コレから行われる「話し合い」に、小さなこの子達は肩身が狭いかも知れませんからね。


「えぇ、大丈夫ですよ!シュウ君、ソウ君、一緒に行きましょう!」

お屋敷の様子に驚いたままの2人に声を掛ければ、2人はご両親を見上げます。アメリアさんのお兄さん夫婦が「いってらっしゃい」と言った事で、ソファーから降りて私達の所に来ました。



「フィーネリオン嬢、すまないな。」

ローラントさんの言葉に「大丈夫ですよ」と言ってお部屋を出ました。









「やぁ、フィーナさん。こんばんは。」

私がお義父さんのいらっしゃったお部屋に通された時、お義父さんは和やかに出迎えてくれました。



ニアちゃんとティアちゃんが居る様に見えるのは、私の目の錯覚ですかね・・・?




お義父さんの座っていたソファの向かいには、プルプルしているニアちゃんとティアちゃんの姿が見えます。私と一緒に来たお兄ちゃんは「あぁぁ~~・・・」と小さな声で言っています。

ソールさんはニアちゃんたちに気付いたのか、ステイさんの手を引いてお部屋の中に入って行ったのですが、その際に「ほっとけ~~~き~~~!」何て言っていました。確かにテーブルの上には見覚えのある「ホットケーキの山」が鎮座していましたが、もしかしてお家から持ってきたのですか?


お父さんはとても和やかにしていますが、ソールさんは挨拶もしないでお部屋に入って行ってしまいました。お義父さんはお兄ちゃんに「初めまして。」と声を掛けています。お兄ちゃんも「初めまして、ヴァレンタ伯爵様。」とお仕事用のお顔であいさつを返しています。

お兄ちゃんとお義父さんは違うソファーに座ったので、私はシュウ君とソウ君をニアちゃんたちの居る席に連れて行きます。シュウ君たちはさっきのお部屋を出てから、とても大人しく私に付いてきてくれます。



「姉さん・・・!」

「お姉ちゃん・・・!」

私がニアちゃんとティアちゃんの座っているソファーの反対側に座ったら、ニアちゃんが「ごめんなさい」と私に謝ってきました。


「ニアちゃん、どうしたのですか?」

驚いた私に、ニアちゃんが「どうしたら良いのか分からなくなって、アスライールさんに連絡してしまったの・・・。」と言います。


アスラさんとの連絡が切っ掛けとなってヴァレンタ家のお屋敷に連れられてきたニアちゃんは、「事を大きくしてしまった」と思ってしまったのでしょう。


「ニアちゃん、大丈夫ですよ。後は当人たちで何とか出来ると思いますし、今は落ち着いてお話ししていますよ。」



・・・たぶん。



ローラントさんのお姉さんたちの「あの」様子では、話し合いは長引く恐れもありそうです・・・。ローラントさんは兄姉の「末っ子」と言う事で、お姉さんたちにとても可愛がられていたのでしょう。お姉さんたちは、ローラントさんが工業都市を離れた事に不満を持っていた様で、ローラントさんのお家から出る時に頻りに「工業都市に帰りましょう?」と言っていました。


今頃、激しい言い争いが繰り広げられているのでは無いかと心配になってきます。




「おかしゃん。たべてもいいでしか?」

私の心配を他所に、ソールさんはホットケーキの山を気にしていたようです。私が「どうぞ」と言ったら、ジーナさんが取り皿をチビッコさん組の4人に準備してくれました。こちらのお部屋にジーナさんがいらしたので、先程のお部屋にはいつもと違うメイドさんがいたのですね。



目の前に出されたホットケーキに困惑中のシュウ君とソウ君は、美味しそうにホットケーキを食べるソールさんたちを見て、恐る恐るホットケーキを食べ始めます。


「おいしい!」

ソウ君がお兄ちゃんであるシュウ君に向かってこう言います。シュウ君も「うん」と言ってソウ君に笑いかけています。ニアちゃんとティアちゃんには、シュウ君とソウ君の事を簡単に説明しました。ソールさんとステイさん、シュウ君とソウ君というチビッコさん4人組の可愛らしさに、私達はとても癒やされましたよ。




しばらく経って、アスラさんが帰ってきました。シュウ君とソウ君は、アスラさんの着ている衣服が「騎士」の制服だった事に目を輝かせていましたが、そんなお2人に、ナゼか自慢気なソールさんが「おとしゃんでし!」とアスラさんを紹介していました。その様子が面白かったので、私とニアちゃんとティアちゃんは笑ってしまいました。






ローラントさんたちの話し合いは、夜の8刻にようやく終わりました。


アメリアさんのお兄さん家族はお宿を取っていた様なので、お義父さんが馬車を出してくれたようです。ローラントさんのお姉さんたちはお迎えのヒトが来たようでしたが、お姉さんたちの方はお宿の手配をしていなかった様なのでローラントさんのお家に泊まる事になったと聞きました。その際、ローラントさんは、アスラさんに「アメリアとステイを泊めて貰えないか?」と聞いてきたのですが、今はお兄ちゃんたちが泊まりに来ているのでお家に余裕がありません。

そんな中、お義父さんが「ここに泊まったら良い。」と言ってくれた事で、私たちとローラントさんたちはヴァレンタ家でのお泊まりが決定しました。




お部屋に案内されたニアちゃんとティアちゃんは、キャッキャとはしゃぎながら「お姫様のお部屋みたい!」と楽しそうに言っていましたが、その後ろでは、メイドさんたちが「獲物を見つけたハンター」のように気配を消しながら「私はジスリニア様」「私はティアーナ様」と頷き合いながら布陣を敷いています。その完璧な追い込みに、私は2人を助けられませんでした。



ステイさんは、それまでソールさんと一緒にいたのですが、ローラントさんのお姉さんたちがお部屋に案内された後、ローラントさんの所に駆け寄っていました。やっぱり寂しかったのでしょう。


ローラントさんは「ステイが世話になった」と言って、アメリアさんと一緒に準備されたお部屋にいきました。





お兄ちゃんが「実家に繋がる魔石を貸して欲しい」と言ってきたので、お兄ちゃんに魔石を渡して私達はそれぞれのお部屋に向かう事にしたのですが、ソールさんがお兄ちゃんの後ろを付いて行こうとしていたのに気付いたアスラさんによって、ソールさんのお部屋に連れられて行くのをお兄ちゃんと笑ってしまいました。



「おやすみなさい。明日も良い日であります様に。」

私のこの言葉に、アスラさんとお兄ちゃん、ソールさんがそれぞれ「おやすみなさい」「おやすみ」「おやすみでし」と返してくれました。
















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