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106 ようこそ! 3ページ目






みなさんこんにちは。お兄ちゃん達が帝都に来て3日目です。






今日のソールさんは、ご自分で植えたヒマワリの花から種を収穫しました。ポロポロと種を取るのが楽しかったのでしょう、ソールさんはとても楽しそうにヒマワリの種を取っていました。たくさん採れた種は、来年もお花を咲かせられる様に麻袋に入れて保管することにしました。




アスラさんは今日もお仕事です。今日はローラントさんのお家に遊びに行く予定だったのですが、どうやら予定外のお客様が来ている様なので、また今度会う事になりました。お兄ちゃんも「ちょっとで掛けてくるよ。」と言ってお昼前に出掛けてしまいました。ソールさんはお兄ちゃんに付いて行こうとしたのですが、お兄ちゃんに「フィーナ達をよろしく頼むね。」と真剣に言われた事で、私達と一緒にいます。






「姉さん。『ほっとけーき』の作り方を教えて貰っても良いですか?」

ニアちゃんがメモ帳片手に私の所に来てこう言います。ゴロ寝スペースにいたソールさんとティアちゃんは「ホットケーキ」と聞いて瞳が輝いています。



「ホットケーキですか?良いですけど、どうしたのですか?」

時計を確認したら、ちょうど「おやつ」の時間です。


「前に、姉さんから料理の作り方が描かれたノートを送って貰ったんだけど・・・、どうしてもお菓子類が成功しないの。前に『きゃらめる』の作り方を教えて貰ったけれど、今でも成功する時の方が少ないし・・・。」

ニアちゃんのメモ帳には「お菓子の作り方を聞く!」と描いてありました。



「どうしても『ほっとけーき』を焼く時に失敗しちゃうの!焼いている時に上手にひっくり返せないし、上手にひっくり返せたとしても真っ黒に焦げてたり・・・。『上手に出来た!』と思っても中に火が通っていなかったり・・・。」

ニアちゃんはとても真剣に私に詰め寄ってきます。


「ニアちゃん・・・・。」

ニアちゃんのその様子に、私は1歩後ろに下がります。



「姉さんが商業都市に帰ってきていた時に、お父さんが嬉しそうに『ほっとけーき、久し振りだなぁ。』って言っていたから、私も作りたいの!」

ニアちゃんの並々ならぬ勢いに、ナゼかティアちゃんがソールさんの目を両手で覆っています。ソールさんが「なぁに~~?」って可愛らしく言っていますが、私はそれどころではありません。



「・・・ニアちゃん、ホットケーキ作りましょう!」

「はい!姉さん!」

ニアちゃんの『やる気』は本物のようですね!





メイの粉とお砂糖はしっかりと軽量をしますよ。ニアちゃんにメイの粉を篩に掛けて貰っている間に、冷蔵庫の中に入っていた卵とミルクを出します。


「うん、材料を混ぜ合わせるのは大丈夫なのね!」

出来上がったホットケーキの生地を見て安心しました。どうやら、ソールさんたちのおやつは案外簡単に出来上がりそうです。



「フライパンを温めて、バターを入れて生地を焼いていきますよ!」

「はい!」

ニアちゃんは手慣れた様にフライパンにバターを入れてホットケーキの生地を流し入れます。ホットケーキの生地を入れたばかりなので、焼き上げたホットケーキを載せるお皿を準備しようとしたその時に、ニアちゃんは早くもホットケーキの生地をひっくり返そうとしています。


「ニアちゃん!ちょっと待って!まだ早いですよ!」

私の言葉に、ニアちゃんは驚いた様に私を振り返ります。



「えっ!?でも、ひっくり返さないと焦げちゃいますよ!?」

ニアちゃんの言葉に私が驚きます。思わずコンロの強さを確認してしまいましたが、どう確認しても「弱」の威力です。


「ニアちゃん、大丈夫ですよ。ホットケーキは、弱い火力でジックリ焼いていくんです。もう少し待ちましょう。」

それでもニアちゃんはホットケーキが気になる様なので、私はソッとニアちゃんの手からヘラを抜き取りました。




「ニアちゃん、ほら、ホットケーキのフチがぷつぷつとしてきたでしょう?こうなってきたら、ひっくり返す頃なんです。中央の方はひっくり返した時に焼き上げるので、このタイミングが1番なんですよ。」

ヘラでフライパンとホットケーキの間にヘラを入れます。ニアちゃんが「あぁっ!」と言っていますが、私がクルッとホットケーキを裏返しにしたらちょうど良い色合いに焼けていました。


「綺麗に焼けてる!?」

ニアちゃんは驚いた様にフライパンの中のホットケーキを見ています。離れた所にいたソールさんとティアちゃんは、テーブルの席に座ってホットケーキを待っています。



「焼き方はこんな感じなのです。今日はホットケーキをたくさん焼いて、お父さんを驚かせましょうね!」

私の言葉に、ニアちゃんは「はい!」と言ってホットケーキを焼き始めます。





それから、ホットケーキを焼くコツを掴んだニアちゃんによって大量生産されたホットケーキを前に、ソールさんとティアちゃんの幸せそうなお顔を見ながらおやつの時間を堪能していました。




でも、ちょっとした異変がソールさんに起きたのです。



笑顔で「うまうま。」と幸せそうにホットケーキを食べていたソールさんが、急にホットケーキを食べる手を止めました。ティアちゃんが「どうしたの?」と聞いていましたが、ソールさんは突然「すていのところにいくの!」と言います。


ニアちゃんとティアちゃんは「?」と首を傾げていますが、ソールさんの只ならぬ様子に驚いています。


ちょうどその時にお兄ちゃんが帰ってきたのですが、ソールさんは私に「すていのところにいくでし!」と言って来ます。

ソールさんのその様子に「何かあったのかな?」と思いましたが、ソールさんとステイさんは「精霊様」です。私達の感覚とは違うのかも知れませんが、ソールさんはイタズラに他所のお家に突撃はしません。



「お兄ちゃん、ちょっと出てきます。コレ、アスラさんへの魔石なので、何かあったらアスラさんに連絡して下さい!」

私の腕輪に付いていたアスラさんとの連絡用の魔石をお兄ちゃんに渡します。お兄ちゃんは驚いた様に受け取りましたが、何かを思い出した様にその魔石をニアちゃんに渡します。


「外に出るなら、オレも付いていこう。」

お兄ちゃんの言葉に驚きましたが、お兄ちゃんの「外が暗くなってきているから、出歩くのは危ない。」の言葉に私も時計を確認してしまいました。今の時刻は夕方の4刻になろうとしていました。今は良くても帰ってくる頃には暗くなっている可能性もありますよね。



「ニアちゃん、ティアちゃん、後1刻半くらいしたらアスラさんが帰ってくるので、お留守番をお願いしますね?」

私はソールさんに上着を着せながらニアちゃんとティアちゃんに声を掛けます。


「うん、分かったわ。」

ニアちゃんとティアちゃんが「気を付けて」と言って留守番を引き受けてくれたので、私とお兄ちゃんは「はやく!はやく!」と急かすソールさんと一緒にお家を出ます。








お兄ちゃんがソールさんを抱えて、私の道案内でローラントさんのお家に向かいます。



「フィーナさん!?」

もう少しでローラントさんのお家に到着する頃、声を掛けられました。聞き覚えのあるその声はアメリアさんの声で、私が止まった事でお兄ちゃんも足を止めます。


「フィーナさん、こんな時間にどうしたのですか?」

アメリアさんは驚いた様に私に声を掛けてきましたが、アメリアさんの傍には見慣れない方がいます。



「アメリアさん、こんにちは?ソールさんがステイさんに会いたくなった様で、少しだけ顔を見に来たのです。・・・お出掛け中でしたか?」

私の言葉にアメリアさんは瞬きしながら「今帰る所だったの」と答えてくれます。


「おかしゃん!はやく!」

ソールさんはお兄ちゃんに抱き抱えられていますが、一生懸命先に進む事を促してきます。




アメリアさんと一緒にローラントさんのお家に急ぎます。ソールさんの様子にアメリアさんも驚いて駆け足になりました。

その合間にアメリアさんと一緒にいた方達がアメリアさんのお兄さん家族と聞きましたが、直ぐにローラントさんのお家に着いたのでお互いに自己紹介までは出来ませんでした。



「ステイ君!」

アメリアさんは、お家の扉を開けてステイさんを呼びます。私達はアメリアさんに続いてローラントさんのお家に駆け込みます。




お家の中にはローラントさんとステイさん、後、私の知らない女性が2人いました。





ローラントさんのお家の中は、台風が来た様になっています。




「アメリア!」

ローラントさんはアメリアさんの所にステイさんを連れて来ました。心なしホッとしている様に見えます。


「ローラント、コレは一体・・・?どうしたの!?」

アメリアさんは「おかあさん・・・?」と言っているステイさんを抱き抱えて、呆然とした様にお家の中を見ています。私はお兄ちゃんに抱き抱えられているソールさんをソッと見て思います。




アメリアさん、私は何回かこの状態を体験していますよ。




アスラさんにソールさんについて相談した時に「感情が昂ぶった時に、魔力が暴走するみたいです。」と教えて貰いました。確かに思い返してみると、ソールさんの「泣いている時」や「嬉しい時」に(プチ)台風が起きている気がしました。「どうしても我慢できない!」って言う時の台風は私には対応できないので、その状態が過ぎるのを静かに待つ様にしています。

その後に片付けをする私を見てソールさんは「ごめんなさい」してくれるので、今の所は「(可愛いから)仕方ない」と思っています。その代わり、アスラさんには2人で怒られています。



「何なの!?一体、何なのよ!」

突然、お家にいた女のヒトの内の1人が大きな声を上げます。


「ローラント!その子供はダメよ!姉さんは許さないわ!」

もう1人の女のヒトも同じように声を上げます。





・・・ねえさん・・・?そう言えば「兄姉が上にいる。」って言っていましたっけ?




「まったく!年上の女なんかに誑かされて!ローラントったら、何て可哀想なのかしら!」

「本当だわ!さぁ、ローラント帰りましょう?」

お姉さん達の言葉に驚きました。



「姉さん!待ってくれ!話をちゃんと聞いてくれ!」

ローラントさんはこう言っていますが、ローラントさんのお姉さん達は「私達はキチンと話を聞いているわ!」と言って取り付く島もありません。このお家の状態では落ち着いてお話も出来なさそうです・・・。



そう思っていたら、ソールさんの腕に付いている魔石がピカピカしています。不思議に思って私が出ました。



『フィーナ、どうしたのですか!?大丈夫ですか?』

通信の相手はアスラさんです。このやり取りでローラントさんのお姉さんが私達に気付きました。


「アスラさん、お仕事お疲れ様です。お仕事は大丈夫ですか?」

『ジスリニア嬢より連絡を貰ったので、連絡しています。仕事の方は、もう終わりの方なので問題ありません。』


ニアちゃん・・・。やっぱり心配だったのですね・・・。



「アスライール、ローラントだ。すまないが、話し合いに使えそうな場所を貸してくれないか?」

ローラントさんは私に「すまん」と言って通信に入ってきました。


『ローラント?どうしたのですか?』

アスラさんはローラントさんの言葉の内容に驚いています。


「いや、少し面倒な事になって・・・。場所さえ提供して貰えれば、後はこっちで何とかする。どこか良さそうな所は無いか?」

ローラントさんの言葉に、アスラさんは『それなら、実家の応接間を使って下さい。私の方から説明しておきますから、そのまま向かって下さい。』と言います。


確かに、このままではお話は出来ませんね・・・。お家の中の惨状を見てそう思います。



『それと、フィーナ達も連れて行って下さい。私もそちらに向かいますので、よろしくお願いします。』

アスラさんの言葉に、ローラントさんは「分かった」と答えて通信が終わりました。



「姉さん、ここでの話し合いは無理そうだから、場所を変えよう。」

そう言ってアメリアさんとアメリアさんのお兄さん家族に「すみません」と言います。


「僕達も付いていった方が良いのかな?」

アメリアさんのお兄さんがローラントさんにそう聞きます。



「出来れば来て貰った方が助かります。不快かも知れませんが、よろしくお願いします。」

ローラントさんの言葉にアメリアさんのお兄さんが「いいや、そんな事は無いよ。」と言って私を見ます。


「僕達の事に巻き込んで申し訳ない。」

アメリアさんのお兄さんの言葉に驚きましたが、ローラントさんも「すまない」と言って私を見ます。



「そ、そんな事はありませんよ!?ソールさんがステイさんに会いたがったので来ただけです。むしろ、他所様の家庭の事情に踏み込んでしまってすみません。」

私はアワアワしながらお兄ちゃんを見ます。



お兄ちゃんは首を傾げてローラントさんを見ています。



「・・・間違っていたらすみません、お会いした事がありませんか?」

お兄ちゃんの言葉に驚きましたが、ローラントさんは困った様に「店に行った事があるから、その時に会っていると思う。」と言います。


「そうで「ええぇぇっ!?ローラントさん、お客さんだったのですか!?」

お兄ちゃんの言葉を遮ってしまいました。


「あぁ・・って、言っていなかったっけ?」

ローラントさんの言葉に、私は驚いたまま「聞いていませんよ」と言ってしまいました。でも「商業都市に居た」と言っていましたから、その時に来ていたのでしょうか?



「あれ?確か、ジジッタさんの所の冒険者だったと思ったけど・・・?」

お兄ちゃんの言葉にローラントさんは「良く憶えているな・・・」と言ってお兄ちゃんを見ています。




「取り敢えず、アスライールさん?のご実家に向かいませんか?」

アメリアさんの義姉さんの言葉に私達は現実に戻ってきました。




「・・・兄さん、義姉さん・・・、驚かないでね・・・?」

アメリアさんがお兄さん夫婦にソッと伝えていますが、私もお兄ちゃんに「覚悟を決めてね」と言いました。お兄ちゃんは、それはもう深いため息を吐きながら「・・・あぁ・・・」と言っています。





大丈夫ですよ、お兄ちゃん!ヴァレンタ家のお屋敷は、初めの見た目で受けるダメージが大きいだけで、その後は流れる様に「お世話」されるだけですから!
















ホットケーキは、おやつの定番!ソールも大好きなおやつです。


ジスリニアが今まで作った「失敗したおやつ」は、ジスリニアが自分で食べていました。泣きたくなるくらい「苦い」ゼリーを飲んだ事もあります。失敗を恐れないで作り続ける姿は「ネリアイールにそっくり」と従業員達に言われています。

実はリューイの方が料理の才能がある。(ジスリニアはそれが悔しい。)


リューイはフットワークが軽いので、中央通りのお店を覗いたりしています。商業都市とは違う品揃えに、熱心にリサーチしていました。





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