105 ようこそ! 2ページ目
「えへへ~~。きょうのそーるはね~~~、りゅーいとおでかけするの~~~~。」
みなさん、おはようございます。今日のソールさんは、嬉しさのあまりにか満面笑顔でアスラさんの外套をグルングルンに巻き付けながらゴロ寝スペースに転がっています。
アスラさんはこれからお仕事なので、ソールさんの様子に構う事が出来ていません。でも、その視線が「残念な子」を見る感じである事が全てを物語っています。ソールさんから外套を剥がそうと奮闘している私にも、同じような視線を向けている様な気がするのはどうしてなのですか!アスラさん!私は頑張っていますよ!
「リューイ殿、ソールが迷惑を掛けると思いますが、今日はよろしくお願いします。」
アスラさんはお兄ちゃんにそう言います。
「えぇ、何も起きない事が1番ですよね。フィーナには良く言っておきます。任せて下さい。」
お兄ちゃんの言葉に私は驚きましたが、アスラさんは「えぇ、お願いします。」と言ってお兄ちゃんと頷き合っています。ニアちゃんとティアちゃんが「今日着ていく服」を選んでいるので、私がお2人の言葉にツッコミを入れなければいけないのですね!
「どうして私の方なの!お兄ちゃん!アスラさんも同意しないで下さい~~!」
私の言葉に、アスラさんとお兄ちゃんが笑っています。アスラさんは「すみません」と言っていますが、お兄ちゃんは「フィーナがしっかりしていれば、ソール君もしっかりするはずだからね。」と言っています。
お兄ちゃん、もしかしてアレですか?「親の背中を見て子は育つ」的な?・・・それって、アスラさんにも適応されるのでは?何て思ったのですが、どうなのでしょう?
「忘れ物は無いね?」
お兄ちゃんの言葉に、それぞれが「大丈夫」と答えます。お家のチェックも忘れていませんよ!ソールさんはニコニコしながら「だいじょぶでし!」と言ってお兄ちゃんの隣りにいます。
お兄ちゃん達の帝都滞在は8日間です。お兄ちゃんは滞在中に帝都での流行や、お店で扱えそうな商品の下見をするそうです。なので、雑貨や輸入品を多く扱っている南地区に向かう事にしました。ここには前に行ったアリアちゃんの小父さんが経営しているお店もあるので、時間があったら行ってみようと思います。
久し振りに来た南地区は、相変わらずたくさんのヒトが通りを歩いています。
早い段階でソールさんはお兄ちゃんに抱き上げられているので、私はティアちゃんと手を繋いでいます。
「お姉ちゃん、スゴいヒトだね!」
ティアちゃんの言葉にニアちゃんも「そうね」と言っていますが、2人とも目線はお店の方に向いています。
「どこか気になる店があったら、言ってくれ。そこに入るから。」
お兄ちゃんは後ろを歩いている私達にそう言います。
始めに通りに面した雑貨屋に入りました。この雑貨屋さんは生活用品を扱う雑貨屋さんで、お皿やカップ、カゴ製品を扱っていました。その次に入ったのも同じ雑貨屋さんだったのですが、扱っていた物は文房具やカバンなどの学校用品を扱っている雑貨屋さんでした。このお店でニアちゃんとティアちゃんはお友達用のお土産を買っていました。
リボンやアクセサリー類を扱う雑貨屋さんに入った時には、2人のテンションが一気に上がったみたいです。ティアちゃんは「すごい!可愛いリボンがいっぱい!」と言ってはしゃいでいました。ニアちゃんも「本当ね!ピンも種類が豊富だわ。」と言って棚に並んだ商品を楽しそうに見ています。
可愛い雑貨にキャッキャとはしゃいでいる2人はとても可愛らしいです。さすがにここの商品はお家では扱えない物なので、お兄ちゃんはソールさんと一緒に棚の商品を眺めていました。ソールさんが私に何本かリボンを持ってきたので、その中の1本「茜色」のリボンを買ってしまいました。
それから、早めの昼食をとってアリアちゃんの小父さんのお店に向かいました。
お店に入ったら、アリアちゃんの小父さんが前に来た時と同じように「いらっしゃいませ」と出迎えてくれました。ニアちゃんとティアちゃんはお店の大きさにも驚いていましたが、お兄ちゃんは商業都市でもいろいろなお店を見ていたからかそれ程驚いてはくれませんでした。・・・残念!
昼食を食べていた時に、お兄ちゃんから「父さんと母さんに何か贈り物を考えているんだけど、何が良いと思う?」何て相談をされたので、私達みんなで選びました!今回帝都に来られなかったスバル君にも、お土産を選びましたよ。
その時、アリアちゃんの小父さんがお兄ちゃんと何かお話をしていましたが、私はアリアちゃんとお話をしていたので、内容は分かりませんでした。アリアちゃんはニアちゃんも顔見知りなので、お兄ちゃん達のお話が終わるまで、ティアちゃんとソールさんと一緒にお話に花が咲いてしまいました。
「時間はまだあるけど、今日はそろそろ帰ろうか。」
アリアちゃんの小父さんのお店を出た後、私達は広場の屋台を見て休憩していました。でも、風が冷たくなってきたからか、ティアちゃんの顔色も少し悪くなってきた様に見えます。お兄ちゃんのこの言葉で今日は帰る事になりました。
ティアちゃんは「まだ大丈夫なのに!」と言っていますが、ニアちゃんが「今日無理をして、残りの日をベッドに入っているのは嫌でしょう?」と言っているのを、ソールさんが不思議そうに見ていました。
「おかしゃん、どうして『むり』でしか?」
ソールさんの質問はとても答えやすい物でした。
「ティアちゃんは少し体が弱いの。だから、今日みたいに急に風が冷たくなってくると、体調を崩しやすいのよ。」
私の言葉に、ソールさんは「かぜがつめたいのは、だめでしか?」と言って来たので、私は「違いますよ」と言います。
「確かに風が冷たいと体調を崩すヒトも増えるのですが、キチンと体調の管理をしていれば、元気でいれるのよ?私は体調を崩した事の無い『健康優良児』ですからね!保証しますよ!」
私のこの言葉に「そうだね」とお兄ちゃんが同意してくれました。
「ソール君は寒いのは嫌いかい?」
お兄ちゃんの言葉にソールさんは「むぅ?」と言って首を傾げています。その様子にお兄ちゃんは困った様に笑ってしまいます。
「私は寒いのも好きですよ。」
私の言葉にティアちゃんが「えぇ!?」と驚いた様に声を出します。ニアちゃんも驚いた様にしているので、私の意見は少数派なのでしょうか?
「だって、寒い時には暖炉の前でのんびり出来るでしょう?」
「フィーナはその暖炉にイモを入れていたな。」
お兄ちゃんの言葉に、ニアちゃんとティアちゃんは驚いた様に私を見ています。暖炉でジックリと焼いたお芋を食べるのは、私の密かな楽しみなんですよ!
「寒い時は皆と一緒にいられますからね。だから、これからの時期も好きなんですよ。」
私のこの言葉に、ティアちゃんも「みんなでいられるのは良いよね。」と言ってソールさんを見ます。
「ソール君、今日はゴメンね。お姉ちゃんに言われた通りに『上にはおる物』を持ってきていたら、もう少しいる事が出来たんだけど、わたしが持ってこなかったから帰る事になっちゃった。」
ティアちゃんの言葉にソールさんは「だいじょぶよ!またくるのよ!」と言ってウンウンと頷いています。
「ソール君はスバルと違ってかわいくて良いなぁ・・・。」
ティアちゃんの言葉にソールさんは首を傾げていますが、お兄ちゃんとニアちゃんは笑っています。
「えっ!?スバル君と何かあったのですか?」
わたしの言葉にティアちゃんは「ううん、なにも無いけど、スバルにもソール君くらいのかわいさがあっても良いと思うのよ。」と言っています。ニアちゃんも「そうねぇ、姉さん限定だからねぇ。」何て言っています。お兄ちゃんを見ても「まぁ、これからどうなるか。」と言っているので、わたしの知らない所で何かがあるようです。
「そーる、かわいいでしか!」
ソールさんが突然、私達を見上げてそう言って来ました。
「ソール君はとってもかわいいよ!」
ティアちゃんの言葉に、私達兄妹は同意しました。ソールさんの可愛らしさは「本物」だと思っています。
そんな中・・・
「少し訪ねたいのだが、君達はどう言った集まりだい?」
・・・今日、何回目の「兵士団からの聞き取り」でしょう。多分、ソールさんの「髪の毛の色」が「銀色」だからでしょう。「誘拐」を疑われてなのか、今日は兵士団の皆さんに良く声を掛けられます。
ついさっきに声を掛けられたばかりな事もあって、対応が面倒になってきました。
「フィーネリオン嬢か・・・?」
少し離れた所からわたしを呼ぶ声が聞こえました。声が聞こえた方を見たら、そこには大きな箱を持ったゼーセス義兄さんがいました。
「ぜーせす!」
「ゼーセス義兄さん!お久しぶりです。どうしたのですか?何かお買い物ですか?」
近付いてきたゼーセス義兄さんに兵士団の皆さんが驚いています。
「あぁ、久し振りだな。今日は母上に頼まれた物を取りに来たんだ。・・・何かあったのか?」
ゼーセス義兄さんは箱を少し持ち上げて帝都に居る理由を教えてくれました。視線が兵士団の隊員さんに向いています。
「アスライールは一緒じゃ無いのか?」
ゼーセス義兄さんは不思議そうに聞いてきました。
「アスラさんはお仕事なんです。今週は商業都市から私の兄妹が来ているので、南地区にお買い物に来たんですよ。」
わたしの言葉を聞いたゼーセス兄さんは、傍に居るお兄ちゃん達に納得したようです。ソールさんも「りゅーいよ!」とお兄ちゃんの紹介をして(ナゼか)ムイッと胸を張っています。
ゼーセス義兄さんが「問題ない」と言って、手を払って兵士団の兵士さんを帰します。
「兵士団への対応ありがとうございました。
妹がお世話になっています。私はフィーネリオンの兄のリューイです。こっちが妹のジスリニアとティアーナです。」
お兄ちゃんのあいさつに合せて、ニアちゃんとティアちゃんが「初めまして」とあいさつしています。
「あぁ、立ち話も何だし・・・、帰るなら家まで送っていくが、どうする?」
ゼーセス義兄さんはティアちゃんの顔色を見て「馬車があるから」と言って私達を馬車まで誘導してくれました。
馬車の御者さんは「フィーネリオン様!」と言って馬車の扉を開けてくれました。
ソールさんはゼーセス義兄さんと一緒に御者台に乗ったので、馬車内は私達兄妹が乗っています。
ニアちゃんとティアちゃんは「クッションの刺繍が素敵!」「ソファーがフカフカしてる!」なんて言いながら「アスライールさんのお兄さんは、大きいヒトね。」「本当ね!でも、かっこいい!」何てキャッキャとはしゃいでいます。
ゼーセス義兄さんに「これ持っててくれ」と渡された箱を待ったまま、馬車に乗せられた私達はお家まで送って貰ったんだけど、ゼーセス義兄さんが御者台に乗った事にお兄ちゃんは「フィーナ、これは普通なのか?」と言って頭を抱えていました。
ゼーセス義兄さんのフットワークの軽さは、アスラさんの兄弟の中では1番だと思うのです。
アスラさんが帰ってきた時、ニアちゃんとティアちゃんが「はい!」と言って組紐を渡していました。何でも、商業都市からの馬車の中で編んでいたみたいなんです。アスラさんは編み込まれている紐に感心した様で、嬉しそうに「ありがとうございます」と受け取っていました。
ソールさんには木で作られた「パズル」を渡していました。
お兄ちゃんが「父さんから預かった物なんだけど」と言ってアスラさんに包みを渡していました。アスラさんが渡された包みを開けたら、満面笑顔のソールさんの絵が出てきました。
「そーる!そーるでし!」
ソールさんは驚いた様に絵を覗き込んでいます。アスラさんも「凄いですね」と言って、ソールさんの絵を見ています。
「お父さん、絵が趣味だもんね。」
私の呟きに、お兄ちゃんも「そうだね」と小さく返してくれます。
お父さんの「記憶力」って本当にスゴいなぁ・・・。
私とお兄ちゃんは嬉しそうに絵を見ているソールさんを見ながらそう思ったのです。
ソールは「リューイ」も「ゼーセス」も両方好き。もちろん「ジスリニア」も「ティアーナ」も。
アスライールとフィーネリオンの「大切なヒト」は、ソールも「大切」にしたいから。
兵士団の団員がフィーネリオン達に声を掛けていたのは、フィーネリオンの思った事と同じなのですが、フィーネリオン達を見て兵士団に「通報」したヒト達がいたので、声を掛けていました。
ゼーセスが南地区にいたのは本当に偶然で、マゼンタの「お使い」で帝都に来ていました。
フィーネリオン達を送った後、マゼンタに「荷物を受け取った事」を伝えた時に「ついで」に「兄妹が帝都に来ているみたいだ」と伝えたら、涙を流して悔しんでいたとか・・・。
フィーネリオン達が両親に選んだ贈り物は、ラルフにループタイ、ネリアイールにストール、スバルには小物入れのポーチを選んでします。
ジスリニアの理想のヒトは「気遣いの出来るヒト」
ティアーナの理想のヒトは「元気なヒト」
今の所、ラルフの妨害工作は成功中。ネリアイールとリューイの悩みは続いています。




