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103 むいむいむい!


タイトルが思い付かなかったので、後で違うタイトルになるかも知れません。

・・・このままの可能性もあります。







みなさんこんにちは!長かったアスラさんのお休みも今日で最終日です。


それと同時に、今日、リンカーラさんとキールさん、リープさんがご家族の皆さんとご実家のある辺境伯領に出発です。今日から2ヶ月間、リンカーラさんとお会いする事は出来ません。



「あぁ、アスライール達も来てくれたのか。」

私達に気付いたリンカーラさんが声を掛けてくれます。


「ローラント達も来てくれたんだ。さっき帰った所だから、ちょうど入れ違いになってしまった様だな。」

リンカーラさんは残念そうに言っていました。


そうなのです。今日、ローラントさんは「外」に出る依頼が入ったと言っていました。アメリアさんも「トライデント候爵さまのお屋敷に呼ばれているの。」と言っていたので、私達とローラントさん達のお見送りが分かれてしまったのです。今頃、ローラントさんとアメリアさん、ステイさんはトライデント候爵さまのお屋敷に向かっているのでしょう。



「リンカーラさん、道中は本当に気を付けて下さい。まだまだ暑い日が続くので、こまめな水分補給と休憩には気を付けて下さいね!」

私の言葉にリンカーラさんは「あぁ、気を付けるよ。」と言って困ったように笑っています。


「・・・アメリア嬢にも似たような事を言われたのだが・・・。安心してくれ、フィーネリオン嬢。この移動は、私1人では無いからな・・・」

「自慢気にそう言うものではありませんよ。リンカーラ?」

私とリンカーラさんがお話ししていたら、ジンニーナさんが会話に入ってきました。


「フィーネリオンさん、私達の見送りに来て頂けるなんて、本当にありがとうございます。」

ジンニーナさんがそう言って微笑みます。


そうでした。今回の移動は家族皆さんでの移動ですから、何かあっても大丈夫でしょう。



「そうです。リンカーラさん、レイドさんはどちらにいらっしゃるのでしょう?」

私の言葉に、ジンニーナさんとリンカーラさんは首を傾げて「呼んでこようか?」と言ってくれました。










「こんにちは、フィーネリオン嬢。私に何か用があるって聞いたのだけど、どうしたのかな?」

レイドさんがリンカーラさんに連れられてやって来ました。


「こんにちはレイドさん。お薬はキチンと飲めていますか?・・・飲めそうですか?」

私はあいさつもおざなりに、先日レイドさんに勧めた「お薬」について聞きます。


「・・・あぁ、何とか飲めているよ。」

レイドさんはそう言いますが、お返事に一瞬の「ためらい」が出ていましたよ。


「・・・本当ですか?本当に大丈夫ですか?」

私の言葉に、リンカーラさんが「兄上」と言っています。


「・・・うん、何とか飲めているから、大丈夫だと思うんだ。飲み続けたら、いつかはこの味に慣れると信じているよ・・・。」

少しだけ「遠い目」をしたレイドさんの本音に、私は「やっぱり!」と声を出してしまいました。


「フィーネリオン嬢?」

リンカーラさんとレイドさん、ジンニーナさんは、驚いたように私を見ます。



「お母さんが、『ビグンの種から作る薬はとても苦いから、それでお薬を飲む事を止めてしまうヒトがいるのよ。』って言っていました。それで、どれ程の苦さなのかお薬を一包買って飲んでみたのです。

・・・一口飲んで、私は悶絶してしまいした。

そこで、レイドさんにこのお薬を勧めてしまった事を思いだした私は、レイドさんに苦行を課してしまった事に気付いてしまったのです!」

私の言葉にレイドさんが驚いています。・・・実は、リンカーラさんの披露宴の次の日、お母さんから「確認の通信」が来たのですが、そのお話をしている最中に「どれ程苦いのでしょう?」と気になってしまったのです。なので、アスラさんとのお買い物ついでに治療院へと寄って、お薬を一包だけ買ってみたのです。



「そんな・・・。どうして、あの薬を飲もうと思ったんだい?」

レイドさんの言葉に、私は何とも言えない気持ちになりました。


「いえ、・・・お母さんも心配していたので・・・。」

まさか「興味本位で」とは言い辛い雰囲気でした。


「それ程苦い薬なのか・・・。」

リンカーラさんはレイドさんを見ながら心配そうに言っています。


でも、お薬は飲み続ける事に意味があるのです。途中でお薬を飲む事を止めると、前よりも症状が酷くなる時もあるので、本当に危険なんだそうですよ!前世の私もお医者さんに言われていましたから、多分間違いは無いのです。



言い訳ですけどね!




「それで、少しだけ気休めかも知れませんが、これをレイドさんにお渡ししようと思って!」

持ってきたバスケットからパウンドケーキを出します。


「お薬は1日3回、食事の時。そう言われていると思うのですが、こちらはビグンの実を乾燥させたモノが入っているのです。なので、何処か1回分のお薬と交換で、食後に1切れずつ食べて下さい。」

私が持ってきたバスケットには、「皆さん(主にリープさん)で食べて貰う用」と「レイドさん用」のお菓子類が入っていました。



「フィーネリオン嬢・・・。」

レイドさんは「ありがとうございます。」と言って馬車の方に戻っていきました。



・・・花粉症は、本当に大変なのです。前世の医療技術が進んだ世界であっても「完治できない」と言われていた病気だったのです。魔法世界であるこの世界では、「もしかしたら」完治するのかも知れません。そうなったら、本当に幸せだと思います。

私は治療師でもお医者さんでも無いので、どうする事も出来ないのですが「せめて症状が軽くなる様にお手伝いできたら・・・」と思い、昨日、せっせとパウンドケーキを2本焼いたのです。


レイドさんにお渡ししたパウンドケーキですが、アスラさんとソールさんに試食して貰ったのです。アスラさんからは「美味しいです。」と言って貰えたのですが、ソールさんは無言で食べていました。ソールさんの様子に心配になったのですが、「もしかして・・・」と思ってビーネの蜜を掛けてみた所、ソールさんは「おいしいでし」とお顔を上げて食べてくれました。


ソールさんの様子から、「もしも」の時の保険でパウンドケーキにはビーネの蜜を塗ってみました。甘いお菓子が苦手だったら、ストレートのお茶で頑張って食べて下さいね!





移動の準備のお邪魔をしてはいけないので、私達は「無事の到着をお祈りしています」とリンカーラさん達に断りを入れて、サイジェル家の帝都邸宅を出ました。







「今日の夜はアスラさんの食べたい物を夕食にしましょう!」

明日からはアスラさんはお仕事なので、私はお家を出る時にこう提案していました。アスラさんは「ありがとうございます。」と嬉しそうに言ってくれました。


サイジェル家の帝都邸宅から出た私達はそのまま商店街へと向かったのですが、商店街でのお買い物途中で私と手を繋いでいたソールさんは、何か思い詰めたように「・・・おかしゃん。」と私に声を掛けてきました。



「どうしました?ソールさん?」

私はソールさんと目線を合わせます。ソールさんの様子にアスラさんも足を止めました。




「・・・おかしゃん。そーる、おやつは『おいしい』のがいいでし。」

ソールさんはとても「真剣」な目をしてこう言います。


「そーる、きのうのは『いや』でし・・・。」

ソールさんはそう言って「いつものがいいでし」と続けます。




昨日のおやつですか?・・・昨日のって・・・。




「ソール・・・!」

「あぁぁぁあ!?」

アスラさんが何か言おうとしていましたが、それを遮るように私は「思い出した」事に大きな声を出してしまいました。


「ぴぇ!?」

「・・・フィーナ!?どうしたのですか!?」

ソールさんは驚いていますし、アスラさんも驚いたように私を見ています。



「えぇっ!ど・・・、どうしましょう!?あ・・・、アスラさん!私、思い出した事があるので先に帰りますね!後、何か食べたいものがあったら買ってきて下さい!・・・果物とか!そう!果物なんて良いですね!果物ですよ!後、ソールさんをよろしくお願いしますね!」


「はっ?フィーナ!どうしたのですか!?何かあったのですか!?」

「お・・・、おかしゃん!?」


アスラさんとソールさんがとても驚いています。周りにいる皆さんもこっちを見ているような気がしますが、そんな事は気にしていられません!私は「それでは、お願いしますね!」と言ってお家に向かって走ります。











物凄く久し振りに走ったからでしょうか、息切れで呼吸が苦しいです。お家に駆け込んだ私は、まっすぐ台所に向かいます。


「・・・はぁ、・・・はぁ、・・・やっぱり!」

私の「思い出した物」は、・・・昨日の「おやつ」用に焼いていたフィナンシェです。・・・いえ、フィナンシェとはもう呼ぶ事は出来ない、・・・フィナンシェ「型」の炭がオーブンの中に入っていました。



オーブンの中から出した「炭」にガックリと肩を落としますが、これを見られる訳にはいきません!私は、(元)フィナンシェをそっと裏庭に埋めました。元は食べ物です。食べる事の出来た材料で作られた「炭」なので、良い肥料になると思うのです。







片付け(と言う名の証拠隠滅)に一段落付いた頃、たくさんの荷物を抱えたアスラさんと、なぜか「半泣き」状態のソールさんが帰ってきました。


「ふえぇ~~~ん!おかしゃ~~~ん。」

今にも本格的に泣き出してしまいそうなソールさんの状態に驚きましたが、たくさんの荷物をテーブルに乗せたアスラさんは「何があったのですか?」という言葉を私に向けてきました。


「アスラさん、ソールさんお帰りなさい。ソールさんどうしたのですか?転んでしまったのですか?」

私のスカートにしがみついてきたソールさんは「ごめんなしゃい」と言って来ます。



「どうしたのですか?どこか、痛い所があるのですか?」

ソールさんはますます私のスカートにしがみついてきます。どうしましょう?アスラさんに見て貰った方が良いですかね?


「そーる、『わがまま』はいわにゃいから、そーるをきらいにならないで~~。」

そう言ってソールさんは泣き出してしまいました。



「えっ!?えっ!?ソールさんが我が儘ですか!?ど・・・、どんな・・・!?」

私の様子に、アスラさんは困ったように「先程の会話の事ですよ」と教えてくれました。


「ソールがおやつの事を言ったから、フィーナは先に帰ったのではありませんか?」

「えぇ!?そんな事はありませんよ!少し思い出した事があったので、先に帰ってきたのです。本当ですよ?あっ!アスラさん、お買い物の荷物を全部押し付けてしまって、すみませんでした。」

アスラさんの言葉に驚いてしまいました。おやつは私もおいしい方が良いですね。なので、ソールさんの意見には大賛成ですよ!・・・でも、アスラさんとソールさんに「炭」の事は絶対に言えません。



「そうなのですか?それなら良いのですが・・・。ソール、そろそろ離れなさい。」

アスラさんはそう言ってソールさんをスカートから剥がそうとしますが、ソールさんは「ほんと?」と言ってきます。


「えぇ、本当ですよ?今日はゼリーがあるので、手を洗ってうがいをしたらおやつにしましょう。」

お家を出る前に冷蔵庫に入れてあるので、ちょうど良い冷え具合でしょう。


ソールさんは「ぜりー!」と嬉しそうに言って、アスラさんを引っ張って手洗い場に向かって行きました。





・・・でも、アスラさん・・・。この山盛りのペオルはどうしたのでしょう?


確かに「果物」を連呼してしまった気もするのですが、ペオルであれば2個くらいで良かったのですが・・・。いえ、ペオルは好きですよ?梨のような食感のペオルは、サッパリとしていますし今の時期に好まれる果物だと思うのですが、この量は多いような気がするのですよ?


・・・もしかして、一箱分買ってきました?



まぁ、ペオルは皮を剥いたら直ぐ食べられますから、良いでしょう。今日はゼリーと一緒にペオルも出しましょうか。


お皿とナイフを準備して、ソールさんとアスラさんを待ちましょう。













レイドは、移動が始まった始めの3日間、別の時間帯にパウンドケーキを食べました。その上で、「幸せな睡眠がとれる、夜」にパウンドケーキを食べるようにしていました。領地に近付くにつれてジワジワと花粉症の症状が出てきましたが、「薬の効果」は覿面で目の痒みが軽減されていた事に驚きました。くしゃみは「少し回数が減ったかな?」くらい。ヒッソリと「飲み続けよう・・・!」と誓ったとか・・・。


辺境伯領では、少しずつ「薬」が浸透して行きました。

ジンニーナはレイドと領民の為にビグンの木を育て始めます。フィーネリオンにレイドが渡されたお菓子のレシピを聞こうか迷い中。(買い取り目的で。)



フィーネリオンがフィナンシェの存在を忘れたのは、ソールの様子から「ビーネの蜜を塗る」に至るまでの試行錯誤をしていて忘れていました。オーブンが付いていた事自体をすっかり忘れていたので、溜め込んでいた魔力が消えるまでオーブンはフィナンシェを焼いていました。一歩間違えると「火事」の危険もありました。

夜にオーブンを使わなかったので、フィーネリオンが思い出すまで「炭」はそのまま放置されていました。


アスライールが大量のペオル(梨)を買ってきたのは、フィーネリオンがいつも買い物をしているお店の女将さん(フィーネリオンとのやり取りを見ていた)が、「ここ最近はペオルを見ているから、機嫌を直して貰うならたくさん買っていったらどうだい?」と言って籠盛りの5個を勧めてきたけれど、ソールの「おかしゃん、いっぱいたべたらにこにこでしか?」の言葉に、旦那さんが「もちろんだとも!」と箱を叩いたので、箱入りの15個を買ってきました。女将さんは止めようとしたけれど、躊躇うアスライールにソールが「こっち!」と箱を指差したので、アスライールも「それじゃあ・・・」となりました。


フィーネリオンも頑張って食べたのですが、後日、アメリアが遊びに来た時に「お土産」として3個渡しました。



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