100 おいわいのせきで、のその後で・・・ 2ページ目
あの後、ハッと「ナニか」を思い付いたリープさんは、リンカーラさんのお膝からピョンと飛び降りて私とアメリアさんの所にやって来て「りーぷ『ばにら』がしゅきでしゅのよ?」と言って来ました。
その言葉に私とアメリアさんは首を傾げます。「バニラ」はお菓子やアイスクリームの種類ではありません。こちらでの「チョウチョ」の呼び方なのです。
リープさんは、私とアメリアさんの様子に「あとね!『おはな』もしゅきでしゅの!」と言います。でも、私とアメリアさんが大きな反応を返さないので、リープさんはどんどんと声が小さくなって行きます。
そんなリープさんを見て、私とアメリアさんはお互いに頷き合います。
「リープさん。もう、ソールさんの足を持ち上げたりしませんか?」
「しないでしゅ!」
私の言葉にリープさんはパッとお顔を上げて、元気な声でお返事をしてくれました。
「リープちゃん。・・・じゃあ、ステイ君のおやつを取ったりしない?」
「・・・ぁい!しましぇん!」
思いも掛けないアメリアさんの言葉に、リンカーラさんが「リープ・・・。」と言って頭を抱えています。
何より、私の時と違ってリープさんの返事に迷いがありましたから、アメリアさんも困ったようにしています。
「・・・じゃあ、そんなリープさんに・・・。」
ここまで言って、ここがサロンだったと思い出しました。アメリアさんも「あっ!」と言って笑っていましたから、同じように思ったのでしょう。
「フィーナ?どうしたのですか?」
ソファーから立ち上がった私に、アスラさんが声を掛けてきました。
「ちょっとお部屋に行ってこようかと・・・。」
「何かお持ちする物がお有りなのでしょうか?どの様な物なのかを教えて頂けましたら、私が持って参ります。」
私とアスラさんの会話を聞いたジーナさんが、やんわりと私をソファーに座るように促します。
「えぇっと、これくらいの大きさの黄色の包みで、空色のリボンが結ばれている物が私の荷物の中にあるのです。少し大きいので大変かと思うので、私も・・・。ジーナさん、よろしくお願いします!」
少し大きな物なので「私も一緒に行きますよ?」と言おうとしたのですが、ジーナさんはニッコリ笑顔を湛えたまま「分かりました」と言ってお部屋から出て行きました。
ジーナさんの様子に、アスラさんのお膝に座っていたソールさんが「ぴっ!」と言っていましたが、私の傍に居たリープさんはアメリアさんのドレスのスカートを掴んでプルプルしています。
ジーナさんが笑顔の時の「え?何か仰ろうとしています?」は結構な威力がありますよね・・・。
それ程経たない内に、ジーナさんが黄色の布に包まれた物を持ってお部屋に戻ってきました。
私がジーナさんから受け取った黄色の包みは2つあります。大きな包みはそのままで、少し小さな包みには幾つかの箱が入っています。
「リンカーラさんにはとてもお世話になっているので・・・。」
少し驚いた感じの表情をしているリンカーラさんに1番大きな包みを渡します。
「なんだい?開けても良いかな?」
大きな包みを受け取ったリンカーラさんの言葉に、私とアメリアさんが「どうぞ」と答えます。
「これは・・・!」
「素晴らしいですね。」
リンカーラさんが包みを開けて、中から出てきたのは「テーブルクロス」です。
アスラさんとローラントさんは何かに気付いたのか、私とアメリアさんの方を見ています。
「しゅごいでしゅの!」
アメリアさんの傍に居たリープさんが、笑顔になってリンカーラさんの所に戻ります。
「素敵ですわぁ」
「本当だね」
リンカーラさんの傍に寄って、ジンニーナさんとカイエールさんがテーブルクロスを一緒に見ています。
目の前のリンカーラさんたちを見ていた私は、お義父さんと宰相さんが私とアメリアさんの事を見ている事には気付きませんでした。
「これは、どうしたんだい?」
リンカーラさんは本当に驚いたように私とアメリアさんを見ます。
「そちらのテーブルクロスは私とアメリアさんとで刺繍した物なんです。えぇっと・・・、私達・・・、と言うか、平民の女の子は『仲の良い友達』が結婚した時に、テーブルクロスに刺繍をして渡しているんです。貴族の皆さんはどうするのかが分からなかったのですが・・・、もし良かったら、使って下さい。私達からの結婚のお祝いの品です。」
私の言葉に続いて、アメリアさんも「使って貰えたら嬉しいです。」と続けます。
「後、私からの個人的な贈り物はこちらです。私からはリンカーラさんに扇を。キールさんにはペンを。」
私は、お2人に箱をそれぞれ渡します。
「私からも。リンカーラさんにはバレッタを。キールさんには髪紐を。」
アメリアさんも、お2人に箱を渡します。アメリアさんの贈り物は、私が前日にこちらのお屋敷にお世話になるので、預かっていたのです。
「おはながたくしゃん!きれいでしゅ!」
リープさんは、広げたテーブルクロスに目を輝かせています。
「後、こちらをリープさんに。」
私の言葉に、リープさんがこちらを振り向きます。
「!そーるといっしょ!」
「ぼくの!」
ソールさんとステイさんがとても良い反応をしてくれます。
「こちらはリープさんに。これは、ソールさん、ステイさんと『お揃い』なんですよ?」
実は、ソールさん用に作ったポシェットがアメリアさんにとても評判が良かったので、お2人にも同じ物を作ったのです。
ソールさんのポシェットには黄色で「ヒマワリ」の刺繍を、ステイさんのポシェットには空色で「ブルースター」を、リープさんのポシェットには薄紅色で「ルピナス」を刺繍しました。
・・・出来上がった時に「信号機みたい」なんて思ってしまったのは、秘密です。。
「私からはこれを。」
アメリアさんがリープさんに送ったのは、何とレースのリボンです。アメリアさんはレース編みが出来るようなのです。私は、傍でアメリアさんの手元を見ていたのですが、私にはサッパリ分かりませんでしたよ。
リープさんはとても嬉しそうに「ありがとうでしゅの!」と言って、私とアメリアさんからのプレゼントを受け取ってくれました。
その後、夜の9刻付近になってソールさんたちが眠たそうにし始めたので、私達は整えて貰っていたお部屋に移動しました。
「まさか、連日でお世話になるとは思いませんでした。」
「えぇ、そうですね。」
お部屋に戻って一段落した私とアスラさんは、のんびりお話をします。ついさっきまではジーナさんも居たのですが、私達は自分の事はある程度出来るので「今日も1日ありがとうございました。ゆっくり休んで下さい。」と続きのお部屋に下がって貰いました。ソールさんは、お風呂から出て直ぐに夢の国の住人となっていますよ。
「フィーナ、少し聞きたいのですが、どうして『テーブルクロス』だったのですか?」
そう言ったアスラさんは、私とアメリアさんのプレゼントに首を傾げます。
「そうですねぇ・・・。実は、理由はあまりないのだと思うのです。ただ、『家族揃って、食事をしましょう。』が、コン・・・、なんて考えが始まりだったのではないのでしょうか?」
コンセプトってどう伝えれば良いのか迷いますね。でも、私の言葉にアスラさんは納得したように「それは良い事です。」と言います。
「貴族は、なかなか家族が揃う事がありません。私の幼かった時など、両親のどちらかが不在の食事が殆どでした。家族が揃っての食事は月に数えられるくらいしかありませんでしたから、そういった考えは本当に素晴らしいと思います。」
アスラさんはそう言って「・・・私が言えた事では無いのでしょうが・・・。」と言います。
「・・・?アスラさんはお仕事の時間がシフト制ですから仕方がありませんよ?て言うか、アスラさん、たまには同僚の方や、お友達とお食事に行っても良いのですよ?」
私の言葉に、アスラさんは「しふとせい・・・?」と首を傾げていましたが、驚いたように「私と食事は嫌ですか?」と言って来たので驚きました。
「いえいえいえ!そんな事はありません!そんな事はありませんよ!ただ、『そういった日』が無くて大丈夫なのかなぁ?何て思ったのですよ!」
少しだけ悲しそうに言って来たアスラさんに驚きましたが、全力で否定させて頂きます!「一緒の食事はとても楽しいですからね!本当ですよ!」と言った私の言葉に、アスラさんは嬉しそうに「えぇ、それなら大丈夫です。今のままで問題はありません。」と言っています。
・・・ですが、私は本当に心配なのです。
ローラントさんやキールさんは別として、騎士団で同じ師団の騎士さまや、帝都内を警護していらっしゃる時々お目にかかる同僚の騎士さま、先日お会いしたアリオスさん・・・。アスラさんがお話で名前を出す方はとても少ないのです。いえ、同僚の方と仲が良さそうなので良かったとは思うのですが、やっぱり気になります。
アスラさん、お友達、いますか?・・・・と。
私からは到底口に出来ない言葉なので、あえては聞きませんが、とても気になる所です。
テーブルクロス作成において、1番の功労者はリンカーラの家の家事メイドさんです。
リンカーラたちが居ない時にテーブルのサイズを測っていました。テーブルクロスは応接間のテーブルに使用されます。
ポシェットに刺繍されたお花は、「ヒマワリ」→「光輝」、「ブルースター」→「信じ合う心」、「ルピナス」→「いつも幸せ」なんて意味を込めていたり・・・。
当たり前のようにフィーネリオンとアスライールのベットが一緒でした。でも、安心の「そーる、ここ!」が発動したので、サイジェル家でのお泊まり中は「川」の字での就寝でした。
アスライールは「家族」での食事が1番の楽しみのようです。




