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99 おいわいのせきで、のその後で・・・ 1ページ目








リンカーラさんの披露宴は「貴族さま仕様」なのでしょう。お昼の2刻から始まった披露宴でしたが、夜の7刻現在で終わる気配がありません。私とアメリアさんはこんなに長い披露宴に参加した事が無かったので、着慣れないドレス姿だからでしょうか?それとも、慣れない靴だったからなのでしょうか?・・・多分、・・・いえ、きっと両方だったのでしょう。この時間になって、私達の足は「歩く事」を拒否し始めたのです。


この状態はさすがに「障り」があるので、私とアメリアさんはアスラさんに治療をお願いしました。アメリアさんの治療が終わる頃、リンカーラさんがアメリアさんの隣りに座って、アスラさんに「私も頼みたい。」と言って手を差し出していました。アスラさんがリンカーラさんの治療を終えた後、私達は「いつもと違う姿は、やっぱりダメですね。」と言って笑ってしまいました。







「お疲れでしょう?良かったら、今日は泊まっていって?」

リンカーラさんのお母さん、ジンニーナさんがそう言った事で私達のお泊まりが決定しました。



・・・いえ、本当は「昨日に続いて今日までお世話になるなんて!」と思い辞退しようと思ったのですが、穏やかな微笑みを浮かべたジンニーナさんに握られた私の両手に、ギリギリと不思議な圧力を受けたのです。

その痛みに耐えかねた私は「は・・・、はい・・・。」と答えてしまい、お泊まりが決定しました。その後にアメリアさんも同じように答えていたので、両手に受けた圧力は間違いないのでしょう。私はソッとアスラさんに治療して貰いました。アメリアさんの両手は大丈夫だったのでしょうか?






「妻がすまない。」

リンカーラさんのお父さん、カイエールさんが「妻は、少し押しが強くてね・・・。」と言いながら私達の所に来ました。リンカーラさんのお兄さんであるレイドさんも一緒です。


「今晩もよろしくお願いします。」

アスラさんの言葉に私も「ありがとうございます。」と言います。ジーナさんがお義父さんに連絡をしてくれたので、着替え類をお屋敷から運んで貰えるみたいです。お義父さんも今日の披露宴に参加しているのですが、明日はお仕事があるようです。「キリの良い所で帰るよ。」と言っていましたが、今は別室で宰相さんとお話をしています。




本当は、まだ披露宴は続くみたいなのですが、これから先の時刻は「成人」しているヒトだけの参加のようです。小さなソールさんたちも居ますし、私が「(この中で唯一の)未成年」と言う事で私達はホールから出てサロンへ移動します。

アメリアさんから「フィーナさん!ありがとうございます!」と言って貰えました。最後の方はずっとソファーに座っていましたが、やっぱり足が限界でしたよね。ローラントさんも「疲れた・・・。」と言っていました。「貴族さま仕様」の披露宴は、(元)平民組には「長すぎる」披露宴でした。












「そう言えば、兄上、お体は大丈夫なのですか?」

お屋敷のホールからサロンに移動した私達はソファーに座り会話をしていましたが、リンカーラさんがレイドさんに声を掛けます。リンカーラさんのご両親は、リンカーラさんたちの代わりにホールで招待客の相手をしていらっしゃるみたいです。



「あぁ、不思議なくらいに問題ない。」

レイドさんがそう言います。


「レイド兄さん、そのまま元気になって領主になって下さいよ!もう本当に、気合いでその状態を維持して!」

げんなりとした様にアルバートさんはそう言って、軽食に手を伸ばしています。アルバートさんは次期サイジェル伯爵としてのあいさつ回りをずっとしていたので、何も口にしていなかったようです。


「こんなにお元気そうなレイド兄様を見るのは初めてですわ!ずっとこのままで居られませんの?気合いで。」

エイミールさんもお菓子に手を伸ばしながらこう言います。




リンカーラさんのご兄妹の会話には、やけに「気合い」という言葉が出てきます。






「・・・?リンカーラさん。レイドさん、お元気そうですが?いつもはそんなに酷いのですか?」

私は、思わずリンカーラさんに聞いてしまいました。



「あぁ、1年の内、元気なお姿は数日くらいなんだ。」


「えぇ!?そうなのですか!?」

「それは大変です!」

アメリアさんと私は、思わず大きな声を出してしまいました。


「不思議な事に、熱はない様なのだが、くしゃみや涙が止まらない症状が続くんだ。日の光に当たると皮膚が赤くなったりもするから、滅多に外に出られなくなってしまったし・・・。そもそも、屋敷から外に出ると症状が一気に悪くなるんだ。」

リンカーラさんはレイドさんを見ながらそう言います。アルバートさんも「本当に大変そうなんだ。」と頷きます。




・・・・?



あれ?




その症状って・・・?




私は隣のソファーに座っているアスラさんを見ます。



「えぇ、騎士団でも辺境伯領駐留中に似た様な症状の病になった騎士が居ます。」

「・・・あぁ、そう言えば、冒険者の中にもそう言った症状の病になって冒険者を辞めたヤツも居たなぁ・・・。」

アスラさんの言葉を聞いて、ローラントさんも言葉を続けます。




「あの、お聞きしたいのですが、もしかして辺境伯領では『ハンノキ』とか、『スギノキ』がたくさん生えていませんか?」

私の言葉に、キールさんが「『ハンノキ』は分かりませんが、スギノキはたくさん生えていますよ。」と答えてくれました。




・・・




私は隣りに座っているアメリアさんを見ます。



「・・・。もしかして、ですが・・・、「花粉症」でしょうか?」



アメリアさんの言葉に、このお部屋にいるみなさんの視線が集まります。この状態に、アメリアさんは少しだけ居心地が悪そうにします。



「やっぱり!そうですよね!?アメリアさんもそう思いましたよね!?」

私の言葉にアメリアさんはホッとした様にします。私の様子にアメリアさんが「えぇ、そうかな?と思ったの。」と言って続けます。


「私の住んでいた地域でもそう言った症状のヒトがいて、中には鼻詰まりの症状を持っているヒトもいると聞きます。」

アメリアさんの言葉にみなさんが驚いています。




驚いた事に、この世界にも「花粉症」と呼ばれる病気があるのです。

花粉症の辛さは、前世だけでお腹がいっぱいなので、今世では「花粉症になりませんように!」と花粉の時期にお祈りしています。




「・・・アメリア嬢、フィーネリオン嬢、・・・もしかして、兄上の病は『治る』のかい?」

リンカーラさんは驚いた様に聞いてきます。



「えぇっと・・・。『治った』と言った方は・・・、いたかしら・・・?」

アメリアさんは困った感じで私を見ます。


「『完全治療』は無理かも知れませんが、商業都市の西区でお薬を扱っていた様な・・・。」

私も記憶を思い起こして答えます。



「薬!?薬があるのかい!?」


私の言葉にお部屋の中が騒然とします。飲み物を準備していたメイドさんまでもが立ち止まってしまいましたよ!どうしたのですか!?



・・・あぁ、でも、前世の私も花粉症には悩まされていました。




「ちょっと待って下さい!」

今世の私は(超)健康優良児なので治療院とは無縁でしたが、同じように(ティアちゃん関係以外では)お薬を扱っている西区とも無縁でしたよ。






・・・




『それなら、ビグンが良いわよ。・・・でも、今の時期ビグンはあったかしら?

ビグンは実を食べても良いのだけれど・・・。ある程度の即効性を出すのなら、種を乾燥させて粉末状にした物を飲み続けた方が良いわ。・・・とても苦いけれど、効果はあるわよ!』



困った時は、実家のお母さんです!



私とお母さんの会話を、このお部屋にいるみなさんが固唾を呑んで聞いています。『もし、ビグンを見つけられなかったら言ってちょうだい?西区で見つけられるかも知れないわ。』と言ったお母さんとの通信は、私の「ありがとう。」の言葉で終わりました。




「医師!そうか、医師であれば薬の調合が出来る!」

「医師か!医師は盲点だったね。」

リンカーラさんの周囲のみなさんは、口々に「医師って凄かったんだな!」とか「医師は有能だな。」と言っています。



私とアメリアさんは、回りのみなさんの様子にポカーンとしてしまいます。



「・・・アメリア、フィーネリオン嬢。貴族は治療師の治療を受けるのが『普通』だ。医師は、余程の事が無い限りは貴族の治療をしないんだ。」

私達の様子が面白かったのか、ローラントさんが笑いを堪えた様に言って来ます。


・・・確かに、ヴァレンタ家にも治療師さんがいます。ですが、ご領地では治療師さんもお医者さんもいらっしゃいました。もしかして、ご領地にいらした治療師さんとお医者さんは、帝国から派遣された方だったのですか?



「・・・そうですね。騎士も程度の浅い傷に治療魔法は使いません。そういった傷に対しては、自己治癒に任せます。個人的に傷薬を持っている者もいますが、少数派です。なので、騎士団には医師はいません。」

アスラさんの言葉に軽く驚きます。傷が化膿したり、熱が出た時はどうするのですか?



・・・えっ!?騎士団でも、まさかの「気合い」ですか!?





「フィーナさんのお母さんは物知りですね!」

アメリアさんがお母さんを褒めてくれました!


「そうなんです。お母さんは、昔、治療院に勤めていたみたいで、お薬とかの調合も出来るんですよ。」

アメリアさんは「凄いですね!」と言っています。



お母さん、本当は「水」の魔法が使えるので、お薬の調合を憶える必要は無かったみたいなのですが、「何かあった時に役に立つでしょう?」と言って憶えたみたいです。今、とても役に立っていますよ!お母さん!







「な・・・、治るのか!?レイド兄さんは治るのか!?」

アルバートさんは「ビグン!今すぐビグンの手配を!」と言いながらお部屋から出て行きます。


「私、お母様に報告してきますわ!」

エイミールさんもそう言ってお部屋から出て行きます。






その後、アルバートさんからお話を聞いた宰相さんとお義父さんが、エイミールさんの報告に驚いたリンカーラさんのご両親が私達のいるサロンにやって来てちょっとした騒ぎになりました。




でもそんな中、ソールさんの「ぴにゃ~~っ!」と言う声が響いたのです。



何事ですか!?私を含めたお部屋にいたみんながソールさんたちのいる所を見たら、ソールさんは不思議な体勢で「や~~!」と言っています。ソールさんの不思議な体勢の原因はリープさんなのです。ナゼか、リープさんはソールさんの片足を持ち上げています。


その後ろで、ジーナさんとリープさんとステイさんのお世話メイドさんがオロオロとしています。



「おかあしゃま!りーぷもこれがいいでしゅわ~~!」

リープさんはソールさんの足を掴んだまま、ズリズリとソールさんを引きずってこちらに向かってきます。ソールさんも「い~~にゃ~~~っ!」と言ってラグを掴んでの必死の抵抗をしているのですが、リープさんの力強い意思の前には(ほとんど)無意味な抵抗でした。ラグごと引きずられていますよ・・・。



「リープ!何をしている!離しなさい!」

リンカーラさんはそう言って、リープさんからソールさんの片足を解放しました。


「おかあしゃま!そーるのがかわいいのでしゅ!りーぷもそれがいいでしゅわ!」

リンカーラさんに「確保」されたリープさんは、一生懸命ソールさんの足を指差しながらこう言います。



リープさん、リープさんの小さな足も可愛いので、ソールさんの足を狙わないで下さいね?



リープさんから解放されたソールさんは、「ぴぇ~~ん!」と言いながらまっすぐ一直線にアスラさんの所に来ました。ステイさんも、のんびりとローラントさんの所に移動してきました。・・・確かに、その場所が1番の「安全圏」ですよね。



「・・・リープ、流石に足は・・・。」

リンカーラさんは、じゃっかん引き気味に言います。


「ちがいましゅ!あれでしゅの!」

リープさんは一生懸命ソールさんの足を指差してきます。


今日のソールさんはおめかし衣装なのです。今は上着を脱いでいますが、ステイさんと色違いの衣装なんですよ。お2人が並んだ時は、あまりの可愛らしさにアメリアさんとはしゃいでしまいました。きっとお義母さんとトライデント候爵夫人が衣装を合わせたのでしょう。とてもよく似合っています。



「・・・あの。」

そう声を掛けてきたのは、ジーナさんと一緒にソールさんたち「精霊様組」のお世話をしていたメイドさんです。



「もしかしたらなのですが、リープ様の仰っている物はソール様のお履きになっている『靴下』では無いのでしょうか?」

メイドさんは「リープ様は、とても熱心に見ていらっしゃいました。」と言います。



ソールさんの靴下には、ソールさんのリクエストでお魚のワンポイントの刺繍を入れました。ソールさんの衣装が「空色」だったので、統一感もあります。でも、どうしてお魚だったのでしょう?




ソールさんは自身の履いている靴下に視線が集まった事に気付いてか、「おかしゃんに『おねがい』したのよ!」と言って、キリリッと姿勢を正してアスラさんのお膝に座っています。



「おかあしゃま~~~っ!」

リープさん渾身の「おねがい」に、リンカーラさんが視線をさまよわせます。



「・・・リープ、とても残念な事なんだけれど、リンカーラの刺繍は「キール!!」・・・先に言っておいた方が良いだろう?」

キールさんとリンカーラさんの会話に、「ナニか」を悟ったリープさんが「しょ、しょんな・・・。」と言っています。



「あらあら、リンカーラったら、刺繍は貴婦人としての『嗜み』ですのよ?キールさんと結婚したのですから、いつまでも苦手ではダメよ?帰ったら刺繍の練習をしましょうね?・・・エイミールと一緒に、ね?」

ジンニーナさんが「困った娘たちねぇ」と言いながら、にこやかに言っています。




・・・リンカーラさん、エイミールさん。これから頑張れば大丈夫ですよ!刺繍は「気合い」で何とかなります!大丈夫です!















フィーネリオンたちは前日に泊まった部屋に、そのままもう一泊します。

アメリアたちの部屋はその隣りに用意されて、着替え類はトライデント候爵家の帝都邸宅に準備してあった物をそのまま運び込まれました。


ジンニーナは武闘派。この2人は社交界でも有名で、カイエールとジンニーナの結婚は貴族の中に衝撃を与えました。

ジンニーナ似のアルバートとエイミールは、お外(国境沿い)を駆け回る方が好き。アルバートの妻(子供が小さいので領地でお留守番中)もお外を駆け回るのが好きなので、最近は「辺境伯爵夫人教育」に息が詰まりそうになっていました。遠乗りに出ると生き生きする事は、とても有名。(傍仕え談)


アスライールの辺境伯領駐留の時、アルバートも騎士団と一緒になって動いていたので、お互いに顔見知り。

レイドが医師の治療を受けなかった理由は他にもあるのですが、レイドと同じ「花粉症」の症状は辺境伯領では「良くある」症状です。ただ「他のヒトより重病」と言う事だったので、治療師からの治療だけを受けていました。

アスライールが領地にいた時に治療師と医師の診察を受けたのは、アスライール自身が「水」の治療が出来るので「もしかしたら・・・。」と思っての判断でした。ヴァレンタ家の領地はそこまで広くないので、治療師と医師の滞在場所は領主館の中にあります。(ただ、治療を受けに来た一般のヒトが迷い込まないように、仕切られてはいます。)


レイドは結婚していないので、治療が順調に進むとコルネリウスと同じように令嬢の輪の中に放り出されるようになります。おっとりしているレイドは、その事に気付いていません。


エイミールはユーレインと同い年なので、ユーレインの「婚約者候補」でした。少し「お転婆」だったので、3番目くらいに候補から外れました。


お仕事一筋だったリンカーラと、お外を駆け回る事が大好きなエイミールの刺繍の腕は、ケイトより「は」上です。でも、貴族の子女としては下の方なので、ジンニーナの教育が2ヶ月間行われる予定です。


ローラントもアメリアに刺繍して貰った手巾を見て驚きました。アメリアも刺繍が「生活の足し」になるくらいには上手です。



最後のジンニーナの言葉は、リンカーラとエイミールには「地獄への招待状」のように聞こえています。



フィーネリオンはアメリアに「ご実家でビグンを育てたら、一攫千金を狙えるかも知れませんよ?」と冗談で言ってみましたが、アメリアは結構本気で考えて実家に手紙を出します。



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