96 ありがとう!
みなさんこんにちは!帝都に帰る今日は、快晴の青空が広がっていますよ!
昨日アスラさんが言ったとおりに晴れました!なんですか?精霊様と契約すると、天候を読む事が出来るようになるのでしょうか?とっても便利です!
「ありがとうございました。これからも体に気を付けて下さい。」
「滞在中、本当にありがとうございました。」
「なの!」
アスラさんの挨拶から、私、ソールさんと続きます。ソールさんは、帝都を出発した時のようにアスラさんの前に座って手を振っています。・・・ソールさん?手綱、キチンと掴んでいますか?
「帰り道、気を付けて下さい。」
「こちらは帝都からも近いので、また遊びに来て下さいね。」
オスカーさんとマルガさんに見送られて、別荘を出発します。
今日、保養地を出発する事をアリオスさんに伝えていたからでしょうか?保養地の検問場である帝都側の入り口門にアリオスさんとフローさんがいました。
「気を付けて帰るんだぞ。」
アリオスさんはそう言って「キャロルも来たがったんだけれど、上のとの約束で興行を見に行っているんだ。」と言います。私が「帝都で会える事を楽しみにしています。」と言ったら、「伝えておく。」と言って貰えました。
「これ!」
そう言ったフローさんが、ソールさんに何か渡しています。
「あぁ、昨日作っていたんだが、『お守り』だそうだ。・・・フロー。本当にソレ、渡すのか?」
私とアスラさんは不思議そうにソールさんが渡された物を見てしまいましたが、歪な形の「ソレ」はアリオスさんの言葉に「あぁ!」と納得できました。「巾着型」のお守りは確かにそんな形ですね。
「ソールはボクの『友だち』だから!わたすの!」
フローさんはアリオスさんの言葉にムッとしたように言います。
「・・・ともだち?」
ソールさんがそう言ってアスラさんを見上げます。
「ソール、嫌か?」
アスラさんの言葉にフローさんが「えぇっ!?」と言います。
私は商業都市に友だちがいます。帝都にもリンカーラさんやアメリアさん、(心の中では)ジーナさんやマリーさんも友だちです。そうそう、帝都には学院でのお友達であるアリアちゃんもいます。
アスラさんだって、ローラントさんやキールさんとは仲が良いですし、こうやって声を掛けてくれるアリオスさんや一緒にお仕事をしている同僚の方がいます。だから、ソールさんにもリープさんとステイさん以外のお友達がいても良いと思うのです。
「そーる、ふろーと、ともだち?」
ソールさんは、フローさんに向かって首をコテンと傾けて聞きます。
「だめ・・・?」
フローさんも自信がなくなってきたのでしょう。ションボリとしています。
「ソールさん。ソールさんは、昨日、フローさんと遊んで楽しかったですか?」
私の言葉に、ソールさんは「そーる、たのしかった!」と言います。
「じゃあ、ソールさんとフローさんはお友達ですね!」
私の言葉にソールさんは「そうなの?」って言いますが、「一緒にいて楽しいのであれば、もう『お友達』ですよ。」と私が言ったら、「そうですね、それで良いと思います。」とアスラさんも続けます。
「そーる、ふろーと『ともだち』!」
そう言って、ソールさんはご自身のポシェットからネコさんのぬいぐるみを出してフローさんに渡します。
「・・・いいの?」
フローさんはそう言いますが、ソールさんと同じくらいの年齢のお友達は大歓迎です。
「そーるも、おまもり!」
そう言ったソールさんをアスラさんが慌てたように抱き上げましたが、アリオスさんとフローさんは気にした風も無くお2人を見ています。
「その子は『白ネコさん』と言って、ソールさんの所に兄弟の『黒ネコさん』がいるので、可愛がってあげて下さいね?」
私の言葉にフローさんが「うん!」と元気にお返事してくれました。
「良いのかい?何だかしっかりしている物に見えるけど・・・。」
アリオスさんの言葉に「私が作った物ですし、むしろ大丈夫でしょうか?」と言ったら驚かれました。
ソールさんがフローさんに貰った「お守り」はソールさんのポシェットに付けられました。
保養所からの出発時の審査は本当にアッサリとした物だったので、私達はアリオスさんとフローさんに見送られて保養地を出発しました。
「帝都までは6刻くらいで着きます。途中に休憩を入れましょう。」
アスラさんとの事前打ち合わせで決めていた事だったので、保養地と帝都の中間地点で一度休憩を入れる予定です。
「きゅいいぃぃぃっ!」
「みゅぅぅ!」
「ふぁ~~~っ!」
「にゃっ!にゃっ!」
・・・
「・・・アスラさん・・・。」
「・・・あぁっ!」
私の呼びかけに、アスラさんはこめかみを押さえます。
私とアスラさんの目の前で、ダグリジュの雛さんと戯れているソールさんがいます。ネコさんはソールさんを雛さんから離そうとしていますが、ソールさんが雛さんに突撃しているので残念な結果になっています。
『いえ、たまたま上を飛んでいたら、見覚えのある姿を見たので降りてきたのです。』
ダグリジュの親御さんのテレパシーに頭痛を覚えますが、そのほのぼのとした言葉の内容に驚きました。
いえいえ・・・、ダグリジュの親御さんこそ、気を付けて下さい。そんな、「ご近所さんを見つけたから。つい。」的な流れで降りてきたら、大変な事になってしまいますよ!?「ダグリジュ」と言う種族の魔獣は「討伐対象」魔獣だとアスラさんに聞きましたよ!?本当に気を付けて下さいね!?
・・・ダグリジュの親御さんの綿毛に埋もれている私が言える事では無いと思うのですが・・・。
・・・ですが、本当にけしからん綿毛です!とても良いモフモフに、私は動けなくなってしまいましたよ!
「・・・ダグリジュよ。ここは帝都も近い。見つかれば、騎士団が動く。早々に立ち去った方がいい。」
アスラさんの言葉に、ダグリジュの親御さんは『そのようですね。』と言います。
『ですが、あの山の向こうとは違って、こちらでは私達を追いかけてくる者たちが少ない。もしかしたら、これからこちら側に移ってくるモノたちが増えるかも知れませんよ。』
ダグリジュの親御さんはずっと遠くに聳えるアーバレスト山脈を見てそう言います。
『そろそろ行きましょうか』
ダグリジュの親御さんがそう言うと、アスラさんが「・・・そうですか、少し待って下さい。」と言って、誰かと通信を始めました。
『本当に、こんな風に羽を休められるのは久し振りです。』
ダグリジュの親御さんは、そう言うと「きゅるる~。」と一鳴きして、雛さんを傍に呼びます。
「お待たせしました。ダグリジュよ、ここからは離れるが、帝都からずっと西に進み、工業都市・・・、ヒトの治める土地の先、そこになだらかな丘陵地帯があります。その土地であれば、帝国は魔獣を受け入れるそうです。」
アスラさんは、持っていた地図をダグリジュの親御さんに見せながら説明しています。
・・・ダグリジュの親御さんは、地図が分かるのですか?
『ソレは・・・。』
「ただ、その土地に行く途中でも構いません。帝国領内にいて、居場所の無い魔獣をその地に導いて欲しいのです。その地に留まって貰えれば、私達は手を出しません。・・・どうでしょう?」
『ナゼですか?どうしてそこまで・・・。』
ダグリジュの親御さんは、そう言ってアスラさんを見ます。
「・・・フィーナが、貴方の事を『悪い方ではありませんでした。雛さんの事を心配する親御さんでしたよ。』と言っていたからです。前回の時も、こちらに攻撃を仕掛けてきませんでしたよね?私は魔獣とこういった風に会話したのは初めてでしたが、それだけでも貴方が穏やかなんだろうとは判断できました。」
アスラさんの言葉に、ダグリジュの親御さんは「きゅるるる。」と声を出します。
「そうよ!」
ソールさんはムイッと言います。ダグリジュの親御さんは何て言ったのでしょう?ソールさんには分かったのですか?
『ありがとう、ヒトの子。
私はあの山の上空を飛んで、貴方達が「魔獣」と呼ぶモノ達に声を掛けていきましょう。私達は、貴方達から受けた恩恵を忘れません。』
そう言ったダグリジュの親御さんは、雛さんに向けて一鳴きしたら『それでは』と私たちに言って飛び立とうとします。
「無事の到着をお祈りします!」
私は、そう言うのがやっとでした。
「お気を付けて。」
アスラさんもそう言います。
「またね~~~!」
ソールさんはそう言って一生懸命手を振っていますし、ネコさんも「なぁ~~。」と鳴いてシッポを振っています。
ダグリジュの親子さんは、私達の上を1回まわって北の山脈に向かって行きました。
「アスラさん。本当に大丈夫だったのですか?」
ネコさんと遊んでいるソールさんを見ながら、私はアスラさんに聞きます。
「えぇ、ここ最近の魔獣との遭遇報告が多い事は・・・、すみません。」
アスラさんは途中で説明を止めてしましました。私が「どうしました?」と聞いたら、「いえ、あまり面白い内容ではありませんから。」とアスラさんは言います。
「いいえ、そんな事ありませんよ?私は、聞いていてアスラさん達のお仕事も知れるので、とても楽しいです。」
私の言葉に、アスラさんは「そうですか。」とちょっぴり嬉しそうにしています。
「今年に入ってから、魔獣との遭遇報告が多くなったのです。南側の港湾都市はそうでも無いのですが、北の辺境伯領の方でも無いアーバレスト山脈に沿った場所が多いのです。
人を襲うモノも出てきているので、騎士団では討伐の為の遠征が何回か行われていましたが、それでもなかなか減らなかったのです。」
アスラさんの言葉に驚きました。帝都の外ではそんな事が起きていたのですね!
「・・・今回、ダグリジュは明確に『山の向こう』と言っていました。アーバレスト山脈の向こうは神聖王国です。移民の申請も多いと聞きます。何も起きなければ良いのですが・・・。」
アスラさんの言葉に「そうですね。」と私も言います。
こんな風にのんびりと過ごせる日々が続いたら、ダグリジュの親子さんたちのように故郷を追われる事も無いのでしょうが・・・。
「でも、ダグリジュの親御さんは『他の魔獣に声を掛けていく』と言っていました。それで、ヒトを襲わざるをえなかった魔獣も安心できるのでは無いのでしょうか?」
「えぇ、そうだと良いですね。」
私とアスラさんはお互いに頷いて「無事を祈りましょう」と言いました。
「だいじょぶよ!」
力強くソールさんが言うのですから、何だか本当に「大丈夫」のような気がしてきました。
「あっ。そうです。」
私の言葉に、アスラさんが首を傾げます。
「アスラさん、ダグリジュの親子さんたちの移住する土地を、宰相さんに掛け合ってくれてありがとうございます。本当に、嬉しかったです。」
私の言葉に、アスラさんは驚いたようにしていますが、アスラさんが宰相さんとの通信用の魔石を持っている事を、私は覚えていますよ?
宰相さんでしたら、騎士団の総団長さんや、皇帝陛下に掛け合う事も出来ますよね?こんなに早く移住の場所を提供できたのですから、その両名を動かせる宰相さんが間に入って交渉して下さったのでしょう。
「いえ、私は現状を報告しただけですし・・・。采配は宰相閣下ですから、私は何も・・・。」
「いいえ、それでも、です。だって、アスラさんが宰相さんに報告を入れたから、魔獣さんたちの現状が分かって貰えたのです。雛さんのように小さい時にヒトに追い回されたら、それこそ大きくなってからヒトを襲う『害獣』となっていたかも知れません。
あんなにモフモフで可愛らしい雛さんですよ?親御さんも穏やかな方なのにモフモフしているのです。モフモフはモフモフしているから良いのです。
他の魔獣だって、モフモフしていたらどうするのですか!?この大陸からモフモフが減ってしまうのですよ!それは、とても大きな損失だと思うのです!」
「・・・えぇ、それは大変ですね。
今回の事で・・・、ふふ・・・、遭遇の報告が・・・、減ると良いのですが・・・。ふっ・・・。」
一生懸命な私の言葉をアスラさんは笑って聞いています。
「アスラさん!・・・・もうっ!私は真面目に言っているのですよ!」
「フィーナ、ダメです。途中まではしっかりと聞いていたのですが、『もふもふ』がダメです。ふふ・・。
フィーナ、そんな可愛らしい説明は私にしか通用しません。誰にも言ってはいけませんよ?」
・・・もう!アスラさんったら、そんなに笑わなくたって良いじゃ無いですか!
私達の様子にソールさんは首を傾げていますが、傍らのネコさんの「なぁ~~。」と言う鳴き声が辺りに響いていました
アスライールがソールを抱き上げたのは、ヒトには「過分」な祝福をしようとしたから。
帝都に着いてからソールは「友だち」について、アスライールとフィーネリオンから聞いて「ふろーは、ともだち!」と納得しました。
フローにとってもソールは「初めての」友だち。フローが一生懸命形にしようとしたから、アリオスが「お守り」の中に入れるモノを一緒に考えて、キャロルが「お守り」の留め紐を結んで縫い付けていました。ソールから貰った「ネコのぬいぐるみ」は大切に机の上に飾られています。
何回か手紙のやり取りをして、また会えるのを楽しみにしています。ただ、手紙に書いてある「丸いナニカ」は分からなかった。でも嬉しい。
アリオスはアスライールの騎獣に内心ヒヤヒヤしていたけれど、大人しいネコに感心しました。でも、「カリャン型」の騎獣は稀少で、値段も高かったのでソッと諦めました。
本当は、ダグリジュの親子さんはヒッソリと立ち去る予定だったけれど、傍を飛んでいた雛が悲しそうにしていた事と、自分もフィーネリオンに会いたかったから、地上に降りた。
帝国でも何回か追い回されたけれど、「山の向こう」に比べたらアッサリと逃げる事が出来た。(追い掛けたヒト達は、自分の畑や果樹園を守る為に追い回した。退治までは目的では無かったので、畑や果樹園より外に出れば追い掛ける必要が無かった。)
それでも、いつまでも同じ所にはいる事が出来なかったので、別れの言葉を告げる予定だった。
ダグリジュの親は、フィーネリオンとアスライールの事を「とても」好ましいと思っています。
ダグリジュの親がソールに言った言葉は「良い両親ですね。」でした。
ソールはその言葉が嬉しかったので、フィーネリオンとアスライールの願いを後押ししました。
その後、帝国の中では魔獣遭遇の報告が減ります。
ただ、アーバレスト山脈沿いに魔獣が移動する光景は多くの人に目撃されます。その後を追うヒトはいなかったけれど、少しだけ世間を騒がせました。
宰相閣下の所には帝都のお家に帰ったフィーネリオンから、お礼の「焼き菓子詰め合わせ」が届けられました。それは、騎士団の総団長にも分けられています。キッチリと3人分に分けたのは皇帝陛下で、自分の分を持って帰っています。
でも、今回一番動いたのは皇帝陛下なので、皇妃様からヒッソリとフィーネリオンに手袋への刺繍をお願いしていて、刺繍を入れたモノを渡しました。フィーネリオンも今回は皇帝陛下に感謝していたので、キチンと仕上げました。
フィーネリオンたちが帝都に戻った事でカーマインが嬉しそうにしているので、ヴァレンタ家の使用人もソッと胸を撫で下ろしています。
アスライールは「モフモフ」を力説するフィーネリオンが可愛くて仕方が無かったようです。




