第四話 護りたい物を探す旅
1/30 少し読みやすくしてみました
2/8 段落の開け方変更
2/19 王様の修司を呼ぶのをオオヅカ殿に変更
「「「「ぬ、抜けた!!!」」」」
後ろに並んでいた人達が一斉に声をあげているな。
なんか俺をこの部屋に連れてきた男は何故か驚いておらず、ニコニコしているぞ。
あいつ、いやナヒィーって言うギルド職員はこうなる事が分かっていたのか?
だとしたら実は援助は貰えなくてこの為に此処に連れて来させたのかもな。仕方ない、取り敢えず剣を元の場所に戻しておこう。
「気の所為だ。ほら次の奴試してみろ」
「ちょと、なんで戻すのよ!」
剣の方から声がする。そっちをふりむいてみるとそこには
「酷くない?!この私が折角持ち主に選んであげたのに戻すなんて!」
クラルが立っていた。なんでいるんだよ!?
「お前なんで此処にいるんだよ!?」
「武器の精霊は、持ち主を選べば外に出られるようになるの」
「やはりナヒィーさんは正しかった。よくぞ剣を抜いてくれました」
あの男、面倒なので頭の中で神父とよぶことにするがその神父がそんな事を言っている。
やはりあのギルド職員、こうなる事が分かっていたのか?もしそうだとしたら、あんなに神父は俺を剣の間に行かせようとしてたのか!
「俺は勇者なんて面倒そうなやつになるつもりないぞ」
「ひどい、前の持ち主に、「次に持ち主を決める時は貴方が本当に気に入った人を探しなさい」って言われてやっと気に入った人をみつけたのに!」
まじかよ。これが今まで持ち主を選ばなかった理由かよ!
「その気に入った人を見つけるのにどんだけかかってんだよ!」
「だって私の部屋に人が来てくれないんだもの。気長に待っていたらやっと貴方が来てくれたの」
「まあまあ、シュウジ殿、取り敢えず、こっちに来てくれますかな?」
神父め、おまえに付いて行くとロクなことがない気がするな。
あまり付いて行きたく無いが、周りの目線が痛い。
まさかこんな目線を異世界でも浴びせられるとはおもわなかったな。
「分かった分かった。付いて行けばいいんだろ」
仕方なく俺は神父に付いて行くことにしたのだが、
「なんで付いて来るんだ?」
「だって貴方を持ち主に選んだから、持ち主に付いて行くのが武器の役目でしょ」
く、実に面倒だ。なんかあのクラルの部屋に行ってしまうとフラグになるっぽいな。
「俺は勇者なんてなるつもりは無いぞ。面倒くさそうだし」
「それらしきことはさっき聞いたけど、勇者になった方が利点が多いよ」
「その代わり今回は魔王をどうにかしなくちゃいけないんだろ?」
そんなの面倒くさすぎる。それに今回の場合、予言が正しければ、魔王7体をどうにかしなければならないっぽいし。
「そうだけど……最悪勇者として行動しなくても、さっき言ってた護りたいと思う物を護るだけでいいから。この世界にそれが無いなら一緒にさがせばいいでしょ」
確かにさっき言ったことは本音と言えば本音ではあるが、あれは厨二病の古傷が疼いただけなんだ!
「それに、シュウジが死ぬか、特殊な力を使わない限り、次の勇者は選べないから、連れてってくれないと死んでもらうしかないの」
く、こいつ脅しまで使うのか。こいつを連れて行かないと、ほぼ確実に殺されると言う訳か。
「後、さっき言いそびれたけどシュウジから勇者の力の一部を感じたからよ」
「何だって!?どうしてそんな事に?」
「今日の朝に私の力の一部、スキルに関しての力の技能と魔物討伐に関しての力が何処かに引っ張られて行ってしまったの。多分だけど、貴方との適合率が良すぎたせいでしょうね」
確かに俺は今日召喚された。しかもラヒィーは俺に特殊な力を持っているお陰でスキルを身に付けているって言ってたから、つじは合うな。しかし適合率って気にしたら負けなのだろうな。
「シュウジ殿、早くしてくだされ」
神父から威圧感を感じる。これはもう、引き返せない様だ。こいつを連れて行かなくてはいけなさそうだ。
勇者になりたくない奴を勇者に選ぶなんて変な奴だ。
「仕方ない。勇者として動くつもりはないからな」
「連れてってくれればいいよ。宜しくね、シュウジ」
ま、この国で暫く旅をしようとしてたから、旅の仲間が増えた認識でいいんたよな。だったら
「ああ、宜しくな、クラル」
▽
そんな訳で、取り敢えずクラルを連れて行く事にして、神父にまた付いていった訳だが、その神父に連れられてきた部屋には、筋肉質な身体の男がいた。
見た感じだと60代ぐらいで、クリスマスでお馴染みのお爺さんの様な髭を生やしている。また、服装や所持品は、パッと見ただけで高いと思える様な物ばかりだ。
こんなファンタジーな世界だし、貴族かなんかだろうか?
「おお、君がオオヅカ殿か。話は聞いていたけが、本当に勇者の剣を抜いてしまうとは、びっくりしたぞ」
な、もう情報が流れているのか!とゆうより本当に誰なのだろうか?
「ああ、紹介が遅れたの。儂はこの国の48代目の国王である、アスカロン=シュベーアスと申す」
こ、国王だ!?何でこんな所にいるんだ?国王って事は仕事も沢山あるだろうし。
「その国王がどうして此処に?」
「ラヒィーから剣を抜くであろう少年が現れて、神殿に向かっていると聞いてな。それで来てみると本当に剣が抜かれていたからびっくりしてしもうたよ。若い頃を思い出しだしましたぞ」
「ラヒィーって一体何者なんですか?」
国王を連れて来るほどの力の持ち主ってことか?ギルド職員なのに?
「ラヒィーはこの国にいる唯一のハイエルフである」
「ハイエルフつてエルフの上位互換なのか?」
ギルドで聞いた話では、この世界には人間以外にも幾つかの種族がおり、大きく分けると、小柄だが力が強いドワーフ、寿命が長く、魔力が高いエルフ、魔物(元の世界で言う動物)の特徴を持つ亜人、宝石や金属、魔力などで身体が構成されているマテリアなどの種族がいる。
で、国毎に、その種族が多かったり、少なかったりするらしいが、この国にはエルフとドワーフは、あまりいないらしい。大方ハイエルフってのはエルフよりも性能が高いんだろうな。
「まあだいたい合っている。ハイエルフというのは……」
▽
ふぅ。国王からハイエルフについて説明して貰えたが取り敢えずまとめてみるか。ハイエルフってのはエルフの突然変異的な物で、普通のエルフの男女から生まれる事もあるらしい。
特徴としては通常どの種族も髪と瞳の色は同じらしいが、ハイエルフは髪の色が何色でも瞳が赤いらしく、全体的なステータスが、普通のエルフと比べてかなり高いらしい。エルフは魔力がかなり高いが、それを遥かに超える魔力をもち、エルフの苦手とする接近戦でもとても高い戦力を持つらしい。
また、ハイエルフは生まれた時から特殊な力を持っているが、瞳が綺麗な赤色であればある程その力は強くなると言う。
そして、仮に親がハイエルフ同士であってもエルフが生まれる可能性の方が圧倒的に高く(エルフ同士よりは高くはあるが)とても希少な存在で、只でさえエルフの少ないこの国ではハイエルフは今までいなかったんだが、約8ヶ月前に、この国に移住したハイエルフががおり、それがラヒィーらしい。こんな所だろうか。
「で、そのラヒィーが持っている力が、相手の持っている力を知ることが出来るという訳か?」
「そうじゃ。だが、力といっても、今ステータスとして分かっている物だけだけではなくて、伸び代や潜在能力、そしてその力の本質を知る事も出来てしまうのじゃ。その力で勇者の力の一部を感じ、シュウジ殿が剣を抜くことが予測されて儂にも連絡を入れてくれたというわけじや」
なるほど、だから特別な力が付いているとか、分かった訳か。しかしやっぱり分かっていて此処に行くように言ったのか。
「そこにいる娘は剣の精霊か?」
「そうだよ。クラルって言うの」
「シュウジ殿を頼んだぞ」
「任せて。私がいる限りシュウジはそうそう負けないと思うから」
「それは頼もしいの。流石勇者の剣の精霊じゃ」
俺が何も言えない内に話が進んでいるな。勝手に進めるな。
「それで此処に来た元々の理由の異世界人への援助をやって欲しいんだが」
「おお、忘れてました。申し訳ありませんなシュウジ殿」
この神父忘れてたのかよ。しかし、援助って何だろうか。金だと助かるんだがな。お、神父が奥から袋を持ってくる。
「シュウジ殿、一様身分証となるものを提示してくださるかな」
「分かった。ギルドカードで良いんだよな」
俺はディメンションバッグに入れていたギルドカードを、取り出し、神父に見せた。
「はい、確認が取れたので援助について説明をしたいと思います。宜しいですか?」
「ああ、頼む」
「異世界人への援助は大きく分けて二つ有ります。一つ目は金銭で、銀貨20枚をお渡しします」
良し、金が貰えるのか。銀貨20枚って結構な額だぞ!有難いな。
「後、簡易ではありますが住居を提供しますぞ」
住居か。暫く旅をするつもりだし、それは今は大丈夫だな。
「分かった。だが、暫く旅をするつもりだから住居の方は保留って事にできないか?」
「大丈夫ですぞ。では銀貨20枚をお受け取りください」
「後、オオヅカ殿。勇者に選ばれたと言う事で追加で金貨10を持って行ってくだされ」
金貨10枚!これだけあれば暫くは金に困らなそうだ!
「でも、こんな貰って大丈夫なのか?」
「心配は要りませんぞオオヅカ殿。国王の権限で出せる範囲ですし、世界を救って貰わなくてはいけなのですからね。その代わり装備は自分で調達してもらう事になるでしょうが」
「分かった、そろそろ出発したいんだが」
やっぱり勇者だからなのか。ま、勇者として動くつもりは今の所無いんだけどな。今は言わない方が良さそうだ。それで銀貨合計1020枚相当を受け取って、取り敢えず勇者の剣を腰に付けるために、ショートブレードと一緒にディメンションバッグにしまった。
「それではオオヅカ殿。他の勇者とも連携しながら魔王討伐の準備を進めていってくだされ」
「まあぼちぼちやっていくつもりだ」
生き残る為に勇者として動かないとしても準備はしないとヤバそうだしな。
「じゃあ行くかクラル」
「行こうシュウジ」
こうして大金を貰った俺たちは神殿を後にしたのだった。
此処から物語の本格始動です