第三話 勇者の剣
1/30 少し読みやすくしてみました
2/8 段落の開け方変更
「え、それってさっき言っていた勇者の武器が封印されている場所のことか?」
「ええ、正確には剣の間が、中にある神殿ね。そこに行けば国から異世界人は援助を受けられるのよ。はぐれタイプの異世界人は申請をしないとだけどね。」
なんだと!今の俺は一文無しだ。援助が受けられるのは有難い。まあ援助が金だとは限らないが。
「申請ってどうすればいいんだ?」
「申請自体はこっちでやっておくわよ」
「そう言えば、特殊タイプはなんで申請が必要なんだ?その言い方だと普通の異世界人は申請が要らないような言い方だか」
「それは、異世界人は基本的に儀式の間に召喚されるのは話したわよね」
「ああ、聞いたな。俺みたいにそうでない場所に召喚されることも稀にあるって事もな」
「普通の異世界人は召喚された時に情報が国にはいるのよ。でも特殊タイプの異世界人は情報が入らないから、援助を受ける前に身分証を作ってから、申請してもらう事になってるの」
「そうなのか」
大方、犯罪歴などの確認や、本当に異世界人か調べるためとか、そんなところか。援助を受ける為に身分を偽ったりする奴がいるのかも知れないな。
「そう言えば、ギルドカードってもう出来ているのか?」
「さっき出来たわよ。もう行くの?」
「ああ、取り敢えずその援助ってのを受けてくる。もしかしたら勇者の武器を手に出来るかもしれないしな」
ま、手に入るなんて思ってないし、選ばれたとしても勇者なんて面倒なやつになるつもりは無い。
「じゃあさっきのカウンターで渡すから先に行ってて」
そう言われ、カウンターの所に戻り、少し待っているとさっきの女性が戻って来た。
「はい、これがギルドカードよ。くれぐれも無くさないもうにね」
このギルドカードには、俺の名前やレベルなどがかいてあり、いつの間に取られていたのか、俺の顔写真も付いていた。
「ああ、分かっている。それよりこの王都のマップってあるか?」
「そう言うと思って持って来たわよ。はい、王都のマップと一様この国の地図よ」
そう言って二枚のマップを渡してきた。国のマップは王都を出た時に使わせてもらおう。
「因みに、ギルドは色々な町にあって、魔物の素材の買い取りや、ランクにあった依頼を受けたりする事が出来るわよ。今日は来ていないけど、冒険者の人がよく利用する施設なのよ」
そう言えばランクってのがギルドカードに書いてあったな。Eランクと書いてあったが、Eランクが一番下なのだろう。
「じゃあ、今素材を買い取ってもらえるか?」
「物によるわよ」
俺は使う事が無さそうなタータマの殻とプックヘッジホッグの 針をディメンションバックから出した。
「これは買い取ってくれるか?」
「まあ、この素材だったらそれぞれ、小銅貨2枚小銅貨7枚でどうかしら?」
因みに、この国の貨幣は、小銅貨が一番安く、100枚毎に次の単位になり、下から小銅貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、紅貨となっている(金貨以上は殆ど見ることはないらしいが)。
「それで大丈夫だ。直ぐに買い取ってくれるのか?」
「大丈夫よ。はい、合計小銅貨9枚」
その小銅貨をディメンションバックに入れて、外に出ようとしたのだが、先ほどの受付の女性に声をかけられた。
「あ、もし剣術を習いたくなったら私の所に来て頂戴。これでもこの国では私の剣術は有名なんだから」
確かにスキルやレベルに頼って戦うのには限界があるかも知れないし、その時は頼らせてもらおう。
「じゃあその時はよろしく頼む。それじゃ」
そうして俺のは剣の間に行くためにギルドをあとにしたのだった
▽
あの少年、シュウジがギルドを出てから少し私は彼の事を考えていた。
「どうしたんですかナヒィーさん?考えごとですか?」
彼女は私の仕事の仲間の1人であるリミカさん。私はこの仕事に就て8ケ月だが、それより前からの知り合いなの。因みにナヒィーというのは私の名前よ。
「いや、あのシュウジと言う名の少年の事を少し考えてたのよ」
「へー、さっきの異世界人の子でしょ。あの子に何か力を感じたの?」
「ええ、そうね。もしかしたらあの少年がこの世界の切り札になるほどのね」
私には、生まれつきの力でパッと相手を見るだけで、その人の持っている力や潜在能力、そして相手の力の本質を知ることが出来る能力を持っていの(この力についてリミカには教えている)。
そしてあのシュウジと言う少年から、とても強い力を感じる。
異世界人として見ても異常な程の力を。まだほんの一部しか力を解放出来てないけど、彼は何故か勇者の力の一部を持っていた。
如何してかは分からないが、彼なら勇者の力を引き出す事ができる気がするよね。
さて、そろそろ援助申請を出しておきましょうか。まだ、あの少年の力は芽を出したばかり。でも私も長い間生きてきたけど、今までに見た事の無いような潜在能力をもっている。
「それにしてもナヒィーが人間一人にそこまで興味を示すなんて珍しいよね」
「そうね。彼のおかげでこれからが色々楽しみになって来たのよ」
ふふ、そこまでの力を持ってるのですから、シュウジさん、久々に楽しませて下さいね。
▽
俺はギルドを出てから、地図を頼りに剣の間のある神殿に辿り着いた。店で回復薬なる物を小銅貨3枚で買ったが、ここでは割愛する。
なんと言うかこの神殿、ゲームでよく有る様な外見をしている。
勇者の武器に選ばれるかチャレンジする人達が割といるのか、人が集まっている。みんな成りたいのか?勇者に。
「おや、貴方がシュウジ殿ですか?」
なにやら中から人が出てきて俺に話しかけてきた。少し小太りの目測30歳後半の男性だ。服装は神父の服装に和服を少し足した様な格好だ。中に同じ格好の人が数人いるのでここの制服なのだろうか?
「ああ、そうだがなぜ分かった?」
「ナヒィーさんから援助の申請とシュウジ殿の特徴を教えて貰いましたからな。因みに私はここで働いている物です」
ナヒィー?誰だろう。大方あのギルドの職員の名前なのだろうが。
「ナヒィーってもしかしてギルド職員の?」
「そうですぞ。彼女は少し前まで凄腕の冒険者をやっており、そしてこの国に住む唯一の……」
「そんな事より早く援助を受けたいんだが」
やはり、あのギルド職員だったか。でもそれ以上の情報は今は要らないし、話が長くなりそうなので本題に話題を変えた。
「そうでしたな。取り敢えずなかに入って下さい」
そう言って神殿の中に俺にはいるように勧められたので、お言葉に甘えて中に入った。中は豪華な装飾がされており、幾つか部屋がある。
「援助の話の前に剣が封印されている部屋に行ってみませんか?」
「いや、大丈夫だ。勇者になる気もないしな」
まぁ少しでも勇者が現れる様にしたいんだろうな。魔王が7体ってのは相当やばいだろうしな。
「まあまあそう言わずにやってみると良いですよ。物は試しですぞ。やってくださると助かるのです。」
何なんだ?なんでそこまで俺を剣の前に行かせようとする?取り敢えず行ってみるしかないか。行かないと援助の話をしてくれないだろうしな。
「分かった。行ってみよう」
「では、此方に」
その男性に付いて行くと、ただ一つ、地面に突き刺さった剣があるだけの部屋についた。まさにこの剣は伝説の剣みたいだな。
その剣を基準に人がズラリと並んでいる。この地面をくり抜いたりして剣をとれないのか?多分ダメなんだろうけど。
「これだとどれぐらいかかるんだ?」
「このぐらいでしたら割と直ぐに順番になると思いますぞ」
暇だし、並びながら前で剣に向かっている人たちを見てみるか。
なんと言うかがたいが良い男や、魔法使いっぽい格好の女など色々な人達が並んでいるな。
1人ずつ剣の柄を持って持ち上げようとするが、ビクともしない。伊達に長い間主を選ばない剣では無いって訳か。一人また一人と柄を持っては部屋から出て行き、そして俺の番になった。
「シュウジ殿、観てて分かるでしょうが、柄を握って引っ張るのですぞ」
なんか、お決まりな事が起きるかも知れないと言う嫌な予感はするが、覚悟を決めて、俺は勇者の剣の柄を握った。
▽
「貴方は誰なの?」
声が聞こえる。周りを見渡すと、さっきの部屋ではなく、ただ白い空間が広がっている。どっかの漫画にあった1日が1年に感じる部屋みたいだな。
ま、ここは重力や温度は普通だけどな。ん、なんか目の前に一人の女の子が立っている。背丈は12歳ぐらいで、髪は茶色っぽいく、日本人に近い外見だが、瞳が銀色だ。誰なんだこの子?
「ねぇ、貴方は誰なの?」
さっきの声は、この子のものだったらしい。
「俺は修司、大塚 修司だ。ここは何処なんだ?さっきまで剣の間にいたんだが?」
「ここは私の部屋よ」
此処が部屋って家具も何もないぞ!?どんな生活しているんだよ。
「何故俺は此処にいるんだ?」
「貴方から此処に来たんじゃない。まあ、此処に人が来るなんてとっても珍しくて、貴方が二人目なの。珍しい事もあるものね」
俺から此処に来ただって?!来た覚えもない。どうやって此処から出るんだ?そもそも此処に来たのが二人目なのか。どんだけきてないんだよ。
「ねぇシュウジ、もし貴方が勇者の力を手に入れたらどう使う?」
な、何なんだ。急にヒーロー番組みたいな質問をしてきたぞ。勇者の力をねー。
「少なくとも護りたい物のために使うんじゃないか?」
「護りたい物のため?」
「ああ。世界を救うとか、そんな大それた事をしようなんて思わないけどさ。もし自己犠牲にならない程の力なら護りたいと思う物を護る為に俺は使うな。ま、勇者なんて面倒だろうし、なる気はないがな」
うわ、なんかすっごい厨二病臭いセリフを言ってしまった。咄嗟にいったセリフがコレなんて、すごく恥ずかしい。もう厨二病は治ったと思っていたのにな。これからは注意していかないとな。
「そう、なんだ。なんか貴方前の持ち主にどこかだけど、似ている様な気がするな」
いや、さっきの質問でまさかとは思ったが、こいつ
「もしかしてお前、剣の精霊か?」
「うん、そうだよ。クラルって名前を前の持ち主に付けて貰ったんだよ」
俺の世界の言葉なら、フランス語で光を意味するクラルテから取ったんだろうか。そいつも異世界人なんだろうか?
「そうなのか。で、此処から出るにはどうすればいい?」
「ん?元の場所に戻りたいの?そのうちもどれるよ。それでさ、貴方に付いて行くの面白そうだから連れてってよ。せっかく此処に来てくれた事だしさ」
「え、今なんて?」
なんか凄く嫌な予感がする。ん、なんかまた意識が遠くなっているような気がするな…………
▽
ん、なんか今変な夢を見た気がする。いや夢であってほしい。しかしそんな考えをよそに俺の手には
「こんな忠実にお決まりを守んないでくれよ、頼むから」
ごく普通の様に抜けた勇者の剣が握られていた。