表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The sword is mightier than the magic  作者: 櫻井 瑠璃子
the first chapter
6/20

冥界の女神の使い魔

「おはようございます師匠。良かったら朝練、お願いできますか?」


朝5時、準備運動をしているとルークが扉をノックしてきた。


「………いいよ……準備して…」


ハクアはルークを招き入れてそう言った。


「はい…………転移『エターナル』」


ルークはハクアの肩に手を置くと転移魔法を発動した。



転移した瞬間、黒白の剣がハクアの顔めがけて飛んできた。


「…Lightning…」


ハクアは顔色一つ変えずに剣を受け取り、魔法を発動する。

魔法を発動した瞬間、ハクアは残像を残してハクアの愛剣、黒白の剣を投げた張本人の元へ行く。

純白の剣ーデュランの刀身に紫電を纏わせ凄まじい速さで突きを出す。


「ちょっ…お前、挨拶がこれとか……ちょっと手厚すぎだぜ…」


投げた張本人──レオは見ることすら難しい突きを前に嘆息しながら手を前に突き出す。


「Wall」


そう言った瞬間、ハクアとレオの間に土の壁が現れた。

ハクアはそれを見ても止まらない。


ズガァン!!


壁を中心に砂煙が舞い上がった。

砂埃が晴れた先には刺突を繰り出した姿勢のハクアと壁を突き抜けた剣先が喉元ギリギリにあるのに関わらず動かないレオだった。


「…少なくとも突き抜けない程度にやったはずなんだがな……本当にお前は化け物だな、ハク」

「……その『化け物』相手に余裕を見せる…あなたもね…」


二人の間に鋭い殺気が膨れ上がる。

ルークは距離が離れているのにも関わらず、無意識に後ずさりをした。


「そりゃあどーも、俺はこれから仕事あるから上に戻るわ」


レオは転移魔法を発動して消えた。

それと同時に刃物のような殺気が無くなったことにルークは心の中で安堵した。


「………いなくなったから…始める…?」

「はい。よろしくお願いします。師匠」


ハクアの質問にルークは魔法を発動させながら言った。



「………結局、師匠たちには叶いませんね…」

「………まだまだ…何十年も早い…」


学校に向かいながら二人はそんな会話をしていた。

結局あのあと全力でルークは挑んだがハクアに一撃も食らわせることができなかった。


「そう言えば…今日は魔武器製作に使い魔召喚がありましたね」

「…………え…?」


ハクアはルークの言ったことに驚いて見た。


「あれ?マスターから聞いてませんか?師匠の転校が急だったのはこの時期に合わせたかららしいですよ」

「…………知らない……」


ハクアはあとでレオをシバこうと思った。


「使い魔の方は心配してないんですけど…問題は魔武器製作ですよね…………」


ルークは困ったように言った。


ルークは『聖炎の覇者』レオの弟子。レオやハクアのように最高ランクのRランクでは無いが基本ランクの最高位であるAランクをゆうに超えている。

学園では流石にそのままにしておけば混乱を招く恐れがあるので魔力抑制器をつけているが…。


「…なんで…?」

「他のみんなは今日、初めて魔武器を手に入れるんです。ですが僕たちはギルドの関係でもう魔武器を持っているんですよ?」


魔武器とは普通16歳から持つことができる。

しかし、ルークなどのように16歳になる前に持つ者もいる。

魔法学校に行かず、ギルドに入った者だ。

ギルドに入っていながら学校に通うことは許されていない。

本来ならハクアやルークがここに通うことができないはずなのだ。


「…………私…魔武器持っていないから…問題ない…」

「え?アレって魔武器じゃないんですか?」


アレとはハクアの愛剣、ダーインとデュランのことだ。


「………魔武器じゃない…近いけど違う…」

「そうだったんですか…それじゃあ問題はないですね」


魔武器は魔石と言われる魔力を持った石に自分の魔力を流すことで作ることができる武器のことだ。

魔武器は一人一つしか持つことはできない。二つ目を作った時点で一つ目の魔武器は消えてなくなる。

これがルークが言う問題だ。


荷物を置きに教室に寄ってからグラウンドに行く。

魔武器と使い魔が楽しみだったんだろう。グラウンドには大勢の生徒がいた。


「………人…いっぱい…」

「この学園は最大の魔法学校ですからね…これでも1学年だけですよ」


あまり人が集まってない場所を探していく。


「あっ!!いたいた!ルーク!」


声のする方を見ると満面の笑みで手を振る男子とそれに嘆息する男子がいた。


「………誰…?」

「フィアとフェイです。差別とか偏見とか持っていないいい奴ですよ。魔力も高いですから将来が楽しみですよね」


説明している間に二人が合流した。


「おや…彼女は?」

「………ハクア…」

「オッス!オレ、フィア!!よろしくな!」

「私はフェイです。よろしくお願いしますねハクアさん」

「………よろしく…」


軽く自己紹介した後、先生が説明を始めた。

皆、一様に真面目に聞く。


「何の武器でっかな?楽しみだぜ」


魔石を握りしめながらフィアが言った。周りにワクワクの文字が見えそうなくらい目を輝かせて


「落ち着いてください。そんなに握り締めなくても魔武器は逃げませんから」

「フェイの言う通りだ。そんなに楽しみなら先にやれよ」

「おう!!どんな武器でっかな〜」


ルークに促されてフィアは魔石に魔力を注ぐ。

魔石が光りだし、無くなったらフィアの手には一本の剣を握っていた。


「お〜すげーな。コイツの名前は…蒼剣でいいや。なんか青っぽいし」


フィアの言う通り、剣の刀身は薄く青色になっていた。


「剣ですか…フィアらしいですね」

「……いい剣…素材…なんだろう…」


ハクアは剣をジッと見てどの素材が一番近いか考えてみた。


「確かにいい剣ですね…」


フェイは流石、魔武器だなっと思った。


「へへ、いーだろう」

「いや、全然」


フィアは得意げに自慢したがルークはハクアの武器と比べたらすごく見劣ると心の中で思い、一刀両断した。


「…切れ味はいい…でも軽い…うん、ちょっと…」


いつの間にか魔武器を持っていたハクアは軽く素振りをして辛口の評価とともにフィアに返却した。


「オレ、泣いていい?」

「一人で泣いてください。次は私が行きますね…」


泣き叫ぶフィアをほっといてフェイは魔石に魔力を注ぐ。


「やはり…杖でしたか…名前はそうですねぇ…氷麗でいいでしょう」


フェイの魔武器は見たまんま氷でできた杖だった。


「綺麗な杖だな…」

「…すごい魔力が込められている…」

「オレとの差(泣)」


自分とフェイの二人のコメントの違いにフィアは嘘泣きをする。

勿論、三人はムシした。


「次は僕が行くか…」


ルークはチラッとハクアを見て魔石に魔力を注ぐフリをする。


何故こっちを見るとハクアは疑問を感じたがムシした。


光魔法を出しながら魔武器を出した。


「二丁拳銃…双銃でいいかな」


感心したフリをして銃に名前をつけるフリをする。


やっぱり…魔力抑制をしていると銃もそれに合わせて変化するな…


そう思いながら何も言わない。


「銃だと…カッコいいなおい、」

「魔武器の銃ですか…初めて見ました」


フェイとフィアは双銃を見て感心している。


「僕も初めて見た…正直驚いている(銃身とかの長さやデザインが変わっていることに)」


ルークはどんな風に変わったか見たあと元に戻した。


「次、いこ〜ぜ。ハクアの魔武器はなんだろなっと」

「………わかった…行く…」


フウと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。


「…いきます…」


魔石に魔力を注ぐ。


「これは……」


ハクアの手にあったのは


鎖をモチーフにしたブレスレットだった。


「補助道具だな…」

「ですね」


フィアはあからさまにガッカリした。ものすごい武器が出ることを望んでいたのだろう。


「……名前は…チェイン…」


ハクアは特にガッカリしなかった。

ダーインとデュランがあったので武器以外がいいなと思っていたのでちょうど良いと考えていた。


「能力とかは分かりますか?」

「……多分…鎖が出てくる……」


ルークの質問に少し考えてから答える。


「まんまだな」


つまんなさそうに言うフィアを横目にハクアは一言付け足した。


「…雷を纏って…」

「すごい武器(凶器)だな!」


ブレスレットをつけてフィアを見るハクアに危険を感じたフィアは冷や汗を流しながら褒める。


「次は使い魔だな…」


ルークの言葉で召喚陣の方を見ると人だかりができていた。


「人が多いので後でにしますか」

「イヤイヤ、突入しようぜ」


フェイの言葉にフィアはニヤニヤしながら突入しようと言い出した。


「「一人でな」」

「酷いよ…」


フィアはルークとフェイの攻撃に落ち込んだ。


空くのを待っている間、ハクアは人だかりからかなり離れているところにポツンと一人で居る人を見つけた。


「どうしたんですかハクアさん」


ルークはハクアがジッと見つめて居る方を見てああと納得したように頷いた。


「彼女はアリス・シンセウスですね。珍しい光の使い手で孤高の花として有名ですよ」


ルークの説明にハクアはそう………と言い、視線を召喚陣の方に移した。


「あ……空いてきた…」

「ちょうどいいくらいになりましたから行きましょうか」


召喚陣の方に行こうとした時、ルークはフィアがジッとこっちを見ていることに気がついた。


「僕の顔に何かついているか?フィア」


ルークは足を止め、フィアに聞く。

ハクアもつられて足を止めた。


「いや…ルークはなーんでハクアに敬語使っているのかなーって」

「確かにそうですよね。いつもはタメ口なのに…」


ルークはいきなりの質問に少し慌てる。

フィアは今までのお返しだと言うようにつついてくる。


「………た、ただの恩人だ…」

「ヘェ〜気になるなー」

「ですね」


フィアとフェイはニヤニヤ顏で追求する。

ハクアは傍観を決め込んだ。


「し……ハクアさんは昔、近くに住んでいて…所謂いわゆる幼馴染みで…その時、困っていた僕を助けてくれて…あれだ。命の恩人なんだ」

「ちょっと説明、ぶっ飛んでない?」


ルークの話の飛躍にフィアは反射的にツッこんだ。


「本当はどうなんですか?ハクアさん?」

「え?………まあ…大体あっていると思うけど…」


いきなり振られたハクアは曖昧に返しておく。

実際、ルークはハクアとレオに命を助けられ、戦いのやり方を教えられているので合っているちゃ合っているのだ。


「おい、もうほとんど終わっているから行くぞ」

「逃げるなよ!」

「何か言ったか?」

「いや…スミマセン…」


フィアがもっと追求しようと思ったら目がすわったルークが双銃を突きつけたので速攻で謝ってからルークの後について使い魔を出しにいく。


「…ルークって…いつもあんな風なの…?」


ハクアもルーク、フィア、フェイの後に続きながらフェイに聞く。


「ええ、そうですよ」

「……そう……」

「羨ましいですか?」

「……そうだと思う…ルークは私たちにはずっと敬語だから…」

「なら、言ってみたらどうですか?『敬語じゃなくていい』と」

「……前に一回言ったことがある…でもダメだった…ルークは『そんなこと出来ません』って…」

「そうですか。良かったらとっておきの言葉を教えてあげましょうか?」

「…いいの…?」

「いいですよ…おや、ルークたちが終わりましたね。お先にどうぞ」


フェイは紳士のように先を譲る仕草をした。


「…ありがとう…」


ハクアはお礼を言って召喚陣の元にいく。

呼吸を整えて指を少し切る。


どんな使い魔が来るのかな?ロギアのような強い奴かな?モフモフフワフワな子かな?


まだ見ない使い魔の姿に期待しながらハクアは血を一滴、魔法陣に垂らす。


「…かわ…いい…?…」


現れたのは黒いモフモフフワフワ。例えるならハムスターみたいな形をしている。そしてコウモリのような小さな翼と真紅に光る目。

可愛いかはちょっと微妙なものだった。


『主のリクエストに応えてやったと言うのにその感想はなんだ』


モフモフフワフワには似合わない地響きのような声が発せられた。


「…もしかして…ロギア…?」


その声は特徴的だった。


『クロムロギアだと言っているだろう。さあ、顔を合わせたし我は戻るぞ』

「………契約は…?まだ結んでないよ…」

『ん?なんだそんなことか。それならもう終わっているぞ。5、6年前くらいにな』

「………………は?」


ロギアの言葉にハクアは固まった。


『言っただろう。気に入ったと。お前との使い魔契約はもう済んでいるのだ。主と我があった日にな』


その言葉でハクアは大凡のことを理解した。


「チェイン…雷」


ハクアの声に応えて魔武器、チェインはロギアの体に巻きついた。


『ハクアよ、どうしたのだ?我を捕まえて』

「…………いなさい……」


ロギアの言葉にハクアは肩を震わせた。と同時に鳥肌が立つほどの殺気が漏れ出た。


「…それをすぐに言いなさい。……この…寝ぼけ竜がぁっ!!」

『ギャアアアアアアァァァ!!!』


ハクアの叫びに合わせてチェインが雷を放電する音とロギアの叫ぶ声がグラウンドに響いた。



「なあ、フェイ…ハクアって怒らせちゃいけないな」

「奇遇ですね。私もそう思ってましたよ。……それにしてもあの使い魔はお知り合いなのでしょうか?」


フィアとフェイは何故か小声で話していた。


「ロギア…自業自得だ」


ルークは庇う余地なしと傍観していた。



使え魔契約をする時は召喚陣を使用して行う。

ギルドでも使え魔契約をしていない隊員がいれば召喚陣を描きやっていたのでハクアも知っていた。契約をする時は召喚陣を使わないとできないと言うことを。


ハクアとロギアの出会いと関係は少し特殊だ。

ロギアはハクアの視覚を借りて暇つぶしをする。その代わり、ロギアはハクアの移動手段になったり、たまに戦いに参加するなどの利害関係を結んでいた。


なのでハクアはロギアと使え魔契約を結んでいるとは思わなかったのだ。

ロギアも何も聞いてこないので使え魔契約を結んでいることを理解した。と勘違いしていたのだ。


このあとロギアはハクアにこってり絞られた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ