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The sword is mightier than the magic  作者: 櫻井 瑠璃子
the first chapter
4/20

冥界の女神は学校に行く Ⅰ

一回寝たハクアは7時丁度に起きた。


「………時間…」


ハクアはベットから起きて眠い目を擦りながらシャワーを浴びに行く。

行く途中、クローゼットの前にかけてある制服に目がいく。

白のブラウスに黒チェックワンピース型のスカート、白を基調としたブレザー、黒のネクタイ。

服にあまりこだわらず、無頓着なハクアにも可愛いと感じさせる制服。


「……はぁ……気が重い……」


珍しくため息を着いてから準備に取り掛かった。


ギルド《エターナル》はギルドの中では珍しい三階建て(地下付き)だ。

地下は訓練所で一階は依頼の受付・処理、一般隊員の休憩場所兼食堂。二階は医務室があり、残りは《エターナル》幹部の自室又は書斎、幹部専用の食堂がある。

そして三階は最強と言われているギルドマスターの『聖炎の覇者』とこれまた最強と言われギルドでは補佐の位置にいる『冥界の女神』の自室と書斎がある。

勿論、一般隊員と部外者は一階までしか入れない。


「おはようございます。ハクアさん」

「………おはようございます…ネーヴェさん…」


二階に降りると食事の準備をしていた和服姿の女性ーネーヴェが笑顔で挨拶した。


「流石、人気No.1の制服…無愛想なハクでも似合っているな…」

「…………」


ハクアはブラックコーヒーを飲んでいたレオの言葉を無視して席についた。


「そう言えばハクアさんは今日から学校に通うんですよね?制服、とっても似合っていますよ」

「そう……かな…?」

「俺との反応の差」


ネーヴェ、レオ、ハクア3人で朝ごはんを食べていると話題は当然の成り行きで学校のことになった。


「そうですよ。あ、ハクアさんにプレゼントがあるんですよ入学祝いの」

「いっ…いいよ……」

「まあまあ、受け取れ、受け取れ。減るもんじゃ無いし」


ネーヴェは断り続けるハクアに赤い包みを無理やり渡した。

ハクアは渋々受け取り、包みを開けて見る


「…パーカーと…カチューシャ…?」

「ハクアさんっていつも外に出る時、ローブかコート着てますよね?学校ではちょっと無理がありそうなんで代わりにパーカーはどうかなって…カチューシャはハクアさんに似合いそうだったから…」

「…ありがとう……大切に…する…」


ほんの少し嬉しそうに微笑むとハクアは早速、パーカーとカチューシャをつけた。


……そう言えばコイツ外出る時、コートとか着てたな……ネーヴェ、ナイス判断。


レオはネーヴェの言葉でそのことを思い出し、行く前にコートのことで一悶着の可能性が大だと考えて心の中でネーヴェに親指を立てた。


「んじゃ、次俺な」

「…………何…コレ…?」


レオがハクアに渡したのは巾着袋だった。

巾着袋の中には眼薬と幾何学模様が入った水晶玉が沢山入っていた。


「聞いて驚けよ。ソレ、お前専用に作った魔法みたいなものだから」

「………コレが…?」

「それにちょっと魔力流すと魔法が発動すんだ。因みにそれ全部、転移魔法だから」


レオの説明にハクアは驚いた。水晶をよく見ると幾何学模様だと思っていたものは魔法陣だった。そしてその魔法陣には一回転移するには十分な魔力があった。


「凄いですねマスター……どうやって作ったんですか?」

「まあ…ほら、そこはこう無理やりに………そのおかげでどんなに距離が短くても一回使ったら砕けるがな」


ネーヴェの質問にレオは言葉を濁した。


「あとこの眼薬はアレだ…………瞳の色を染めるやつだ。あまり使わないと思うけど一応持っとけ………」


レオはそう言ってハクアの左目を見る。

ハクアの左目は深紅、右目は黒色といった珍しいオッドアイだ。

しかも魔族に良くあり、人間にあまりない紅色といった厄介なオマケ付きだ。


ハクアはもともとオッドアイじゃなかったがクロムロギアと契約した時に何故か左目だけ深紅に染まったのだ。


紅の瞳は魔族を思い浮かばせるし、魔族に繋がるものとして忌み嫌われている。

普段ずっと顔を隠していたのと顔を見せる者は事情を理解していたのと気にしない人だったのでハクアはレオにそれとなく言われるまで忘れていた。


「………貰っとく…」


レオなりの気遣いにハクアはありがたく貰っといた。


二人の入学祝いの贈り物を見終わったところで三人は食事を再開する。


「あ、そうだ。寮に送るからトランクとかはネーヴェに渡しとけよ」

「…………分かった…」



時間になり、ハクアは二階に通じている裏口からギルドを出た。


「存分に楽しんでくださいね」

「正体がバレないように気をつけるんだぞ」


レオとネーヴェは裏口まで見送った。


「…はぁ……嫌だな……でも…命令だし……」


ハクアはギルドから離れた場所まで行ってからため息をついた。


レオがハクアを学校に行かせようとした理由。それはハクアでも分かっていた。

自分を思ってのことをしてくれて嬉しかった。でも同時に少し嫌な思いになっていた。


ダメダメ……弱気になっちゃ……ネーヴェやレオのような人だっているんだから…


「………次の曲がり角は右…」


制服と一緒に置いてあった学園までの地図を見ながらハクアは少し重い足を進める。

大きな通りに出て黙々と学校へ向かう。


「………………」


さっきからなんだろう……この視線……


さっきから珍しいものを見る視線、好奇な視線がずっとハクアに向けられていた。


…学園に通うものがこんなところにいるから…?


…バレてない……でも落ち着かない……


ハクアはフードをさらに目深に被り目が見えないようにした。

慣れない視線に落ち着かなくて早く無くなって欲しくて足は自然と早くなった。



「……ここが…セントラル魔法学園……」


数十分後、ハクアはこれから通う学園の校門前にいた。

学園は《エターナル》のギルドより広くて豪華で凄かった。

流石、魔法学園なだけあって敷地内は頑丈な結界で覆われていて安全対策やセキュリティは万全だった。


「そこにいたら危ないですよ、しsy…ハクアさん」

「っ!!」


いきなりポンっと肩に手を乗せられことに驚いて振り向くと見慣れた顔があった。


「………ルーク…学校、通ってたの…?」

「はい、ギルドに入っていることは内緒でね」


後ろには《エターナル》の幹部であり、『聖炎の覇者』レオの弟子であるルーク・シトラスがいた。


「これからよろしくお願いしますね。サポートするので何かあったらいつでも相談してくださいね」


ルークはニッコリと笑顔でいった。

ハクアはその笑顔に何人の女子が釘付けになってるのだろうと客観的に思った。


「……分かった…それじゃあ、早速…職員室の場所を…」

「案内します。後で他の場所も案内しますよ」

「………お願い…」


ハクアはルークの後について校舎の中に入った。



「ハクアさんもようやく通えるようになったんですね」

「…………え…?」


職員室に向かっていると突然ルークがそんなことを言った。


「あれ?知らなかったんですか?本当は去年、ハクアさんも僕と一緒に入学する予定だったんですよ」


ルークの言葉にハクアは驚いた。


「…………知ら……ない……」

「そうですか。まあ当時は忙しかったからですね〜。特に何もなかった僕は予定通り入学、ハクアさんはギルドが落ち着くまで…でしたから知らないのは当然のことかもしれませんね」

「…………うん……」


去年の忙しさのことを思い出していたら職員室についた。


「僕はここで…同じクラスだといいですね…」


ルークはそう言って教室へ行った。


ルークがいなくなるのを待ってから職員室の扉をひかえめにノックして入る。


「…し、失礼します……あ、あの…」

「もしかして転校生さんかしら?」

「…は、はい……」


近くにいた教師が対応してくれた。


「担任の先生は………あそこで寝ている人よ」


指されたところを見ると言っていた通り、寝ている人がいた。


この人が教師で大丈夫……?


そう思ったが言わないのが優しさだと考え直してその先生の元に行った。


「………先生………起きてください……」


声をかけてみるが起きない。

肩を揺らしてみる。


「…………あと15時間……」


イラッ


これには流石のハクアもイラついた。


「………先生…5秒以内に起きないと……そのまま……永眠しますよ…?」


耳元で殺気を少し込めて囁くと先生はすぐに起きた。


「おはよう、いい朝だな!お前が今日から俺の生徒になるコーメトなんちゃらか」

「…ハクア・コーメントです…」

「よし、ハクアか…お前、しっかり者に見えるな…俺の代わりにホームルームを……いえ、なんでも無いです。」


先生が何か変なことを言ってきたので殺気で黙らせる。


「はあ〜めんどーだn…よし、俺に連いて来い。クラスの奴らに紹介してやる」


意外とちゃんとした先生だな……とハクアは思いながら後に続いた。


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