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The sword is mightier than the magic  作者: 櫻井 瑠璃子
the first chapter
3/20

冥界の女神は竜に乗ってやってくる

月が怪しく光る夜

自然が枯れ果てた大地に誰かが一人、立っていた。

背は低く、小柄。漆黒のコートを羽織り、フードを目深にかぶっていた。


「…………弱い……全員、弱い…」


周りは魔人や悪魔の死体で埋め尽くされており、血の海が広がっていた。


『当たり前だ。我と対等に渡り合える主にとって此奴等では退屈だろう』


地響きに似た声が答える。


「………帰る……行くよ…ロギア…」

『ロギアではないクロムロギアだ』


コートを着た者はその場で大きくジャンプした。

地面に着地することはなく、丁度滑り込むように入ってきた黒い物体に飛び乗った。

黒い物体はその者を乗せたまま翼をはためかせ空を飛んだ。

黒い物体は人一人がやっと乗れるほどの小さなドラゴンの姿をしていた。


「………だって…これはクロムロギアの分身?だから…」

『分身と言えども我は我。クロムロギアと呼べと言ったはずだ。ハクア』

「…区別がつかないからいや…」


小さなドラゴン──クロムロギアは上に乗っている人物──ハクアと話しながら空を飛んでいく。

ハクアは危なげなくバランスを取りながら下の景色をずっと眺める。


「…陽が登る前には着いてね…」

『解っておる。我もアレは御免だ』


あっという間に自然に包まれた大地を通り、陽が少し出始めたところで大きな国に入った。丁度、国の真ん中にそびえ立つ城を一周してクロムロギアはあるところで降りる。

上から数えたほうが早いと思うほど国の中で高い建物に併設されている庭に降りた。

クロムロギアはなるべく音を立てないようにそっと地面に着地しようとしたが、上に乗るハクアがクロムロギアの着地を待たずに降りたため、着地せずに宙に現れた魔法陣の中に消えた。


「……ただいま……」


ハクアは建物の中に入り、誰もいないロビーに向かって呟くとそのまま上の階に向かった。

最上階である三階に行き、階段に一番近い部屋に入る


「……レオ、終わった……」


ハクアは部屋に入ってすぐに言った。


「そうか、お疲れ様」


部屋の主──レオは顔を書類から上げずに言った。


「…………手伝う…?」

「いや、もうすぐ終わるからいい。話があるからソファにでも座ってくれ」


ハクアはレオの言う通りにソファで座って待った。

手持ち無沙汰になったのでレオにはブラックコーヒー、自分にはミルクティーを入れて待った。


「よし、やっと終わった。……国王のヤロウ…仕事押し付けすぎんだよ…(小声)待たせたな、ハク」

「……そんなに待っていないから…大丈夫……話って…?」

「明日……いや、今日だな……今日から学校に通ってもらう」

「……………………………………」


レオの突然の言葉にハクアは数秒、理解するのに時間がかかった。

だが、理解した後は速かった。

無言で剣を構え、レオの急所に向けて自己最速の速度で刺突を繰り出した。


「あぶねーだろ」

「この時間に言う奴が悪い…」


しかし、レオはその刺突を土の壁で防いでいた。

ハクアはジト目でレオを見ながら剣を収めた。

レオはそんなハクアを気にせず、土の壁を綺麗に消した。


「このギルド《エターナル》が建って二年……だいたい安定してきたし、そろそろ良い時期だろ」

「……勉強はちゃんとやっている…行く必要性が無い……」


レオの言葉にハクアは不機嫌な声を隠さずに反論する。


「確かに勉強は十分だけどよ……学校って勉強以外にさ、そこでしか学べないものがあんだよ。ハク、お前にはそれを学んできて欲しいんだよ」


レオは真剣な目でそう言った。いつものような冗談ではないようだ。


「…学んでも意味無い…」

「まあ、これは体感しないと分からないよな……んじゃ、ギルマス命令だ。行ってこい」

「……理不尽……」


ハクアの抗議にレオは笑う。


「何言ってんだ。お前と同じ年頃の奴らはちゃんと通ってんだよ」

「………魔力が多くあるやつ限定でね……」


ハクアはそう小声で言うと部屋を出ようとした。


「おい、ちょっと待て。話はまだ……」


ハクアの言った言葉はレオの耳には届かなかったようで勝手に出て行こうとするハクアを止めようとする。


「……一回…寝とか無いと…行けない……」


ハクアはレオの性格を考え、無駄だと解り、折れた。


「それならいいけどよ……あ、取り敢えず今日必要なものは部屋に置いといているから。あと学校、全寮制な。それとハクはダーインとデュランをここに置いとけよ。ロギアは出来れば(ドラゴン)以外の姿で現れてくれると嬉しいな」

「………なんで…?」

『どう言うことだ小童こわっぱ


部屋に戻ろうとしていたハクアと魔法陣から現れたクロムロギアは光の速さと言っても良いスピードでレオに攻撃した。

レオは勿論、二人の攻撃をきちんと防御したが内心ヒヤヒヤだった。


「いや、よく考えてみろよ。冥界の女神サマとその使い魔サン?お前らの外見的特徴はなんだ?」


冥界の女神とはハクアに与えられた二つ名だ。ハクアは16歳という若さでレオとともに最強の座についているのだ。


「………黒い…あとコート…」

『我のどこが珍しい?』

「二人ともハズレだ(ロギアに至っては答えてない)。いいか?『冥界の女神』は黒白の双剣を持ち、漆黒の竜を従えているんだよ。お前がその双剣を持ってロギア連れてたら一発で分かんだよ」

「………ロギアは出さない…」

「ムリだな。学校は使え魔関係もちゃんとやるから絶対に出すハメになる」

『正直言ってめんどくさいな。我は』

「………ちゃんと出ろよ。ハクア、解ったら諦めて置いてけ」


ムスッとしながらハクアは剣を納めた。クロムロギアはまた魔法陣の中に消えた。


「クエストについては放課後や休みの日に受けてもいい。でも基本的に学校優先。緊急時は状況によってこっち優先してもらうから。バレないように来いよ」

「……………わかった……何時に行けば良い…?」

「8時くらいに学校に着いといたほうがいいな」

「……わかった…おやすみ……」

「おう、おやすみ…」


ハクアは自室に戻り、時間になるまで仮眠をとった。



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