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The sword is mightier than the magic  作者: 櫻井 瑠璃子
the first chapter
13/20

冥界の女神は気にしないⅡ

ハクアとグループの諍いはガドがめんどくさがりながらもしっかりと処理された。


この件は瞬く間に学年に広がり、特に女子は今まで我慢していた分、溜めていたものを晴らすようにハクアに突っかかるようになった。

ルークやフェイたちのいないところで。


これに対してハクアは呼び出しとかがメンドイのでガン無視を決め込みんだ。

歩いてる時に足を引っ掛けようとする奴は足を踏むまたは逆に引っ掛けた。

バケツの中身をぶちまけようとする奴には止めずにしっかりと躱し、時たま中身が零れないようにバケツをキャッチしたりした。

トイレでハクアの悪口を言い合っているところに遭遇しても堂々と出て行ったりと全然堪えてないようだった。


たまたま決定的瞬間を見てしまったフェイもこれには苦笑いしか出来なかった。


陰で色々やられながらも日々を過ごして行く。



「はーいみんな久しぶりー♪あ、初めましてな子もいたね♪今年も魔法の実技はチャコせんせーだからね〜ヨロシク〜」


テンションが高い教師だが白髪のボブ、エメラルドグリーンの瞳、出るとこは出てて出ないとところは出ないな体型のせいか男子には人気なようでイェーイ!ヨロシク〜などのっていく男子が多くいた。


フィアもそのうちの一人でハクアとルーク、フェイは冷めた目でそんなフィアを見ていた。


「今日は去年のお浚いからだね〜初級魔法いってみよ〜!詠唱アリで!」


チャコの号令に合わせ一人ずつ前に出て初級魔法をやって行く。


「…………いつもこんなカンジ…?……」

「そうですね…テンションが低かったことは一度もありませんでしたね」

「真面目な時は真面目なんですがね」


ハクアの質問に二人は答える。


「ファイヤーボール!!」


いつにもましてテンションが高いフィアはいつもより二倍近くの大きさでファイヤーボールを出した。


それを見たフェイはやれやれとため息を尽きながら手を出した。


「落ちろ、アイスボール」


フェイが出したアイスボールは寸分の狂いもなくフィアの頭に落ちた。


「イテッ!!」

「はーい、フェイくん合格〜。フィアくん詠唱アリって言ったよね〜?後でもう一度ね」


チャコはニコニコと笑いながら手元のボードに書きこんでいく。


フィアはそんなーと少し落ち込みながら三人のところに戻って来た。


「自業自得ですね」

「だな」

「…………右に同じ…………」

「ヒドイッ!!」


三人の反応は冷ややかだった。


バカが何名かいたが特に問題なく行き、最後はハクアとなった。


「…………」


ハクアの番が来た途端、みな静まり返り、ハクアをジッと見始めた。


「…………弾けろ…………サンダーボール…………」


ぱちっ


拍子抜けするような小さな音とともに人差し指の上に小さな紫電の塊が生まれる。


それを見た生徒はクスクスと笑う。

本来のものよりだいぶ小さく弱々しいものだったからだ。


「は〜い、みんな静かに〜ハクアちゃん、合格ね〜」


チャコはパンパンと手を叩き、告げた。

ハクアは魔法を消してルークたちの方へ戻る。


「チャコせんせー、合格基準に満ちてないと思いまーす」

「いくらFだからと言ってそれはないと思うぜ」


チャコの評価に不満があったのか口々と騒いでいく。


「………確かにハクアちゃんの魔法は見た目弱々しけどね………質と威力は申し分ないから合格ってわけ!」


チャコの言葉にまだ不満があるらしく顔をしかめたりしている。


「う〜ん…………ハクアちゃんには悪いけどもう一回やってもらえるかな?」


チャコの苦笑いにハクアは頷き、前に出る。


「あとフィアくんも出よっか」

「え?オレも?」


慌てた様子でフィアもハクアに続き前に出る。


「…………弾けろ………サンダーボール…………」


ぱちっ


さっきと同じように拍子抜けするような小さな音とともに小さな紫電の塊が生まれる。


「フィアくん、ファイヤーボールぶつけちゃって〜」

「え?はいっ、爆ぜろ、ファイヤーボール!」


フィアが出したファイヤーボールは一直線にハクアのサンダーボールに向かって行った。

ファイヤーボールがサンダーボールを飲み込もうとした時、サンダーボールがバチッと一際強く輝いてファイヤーボールとともに消滅した。


「ウソだろ?」


フィアはファイヤーボールを消されるとは思わなかったらしく無意識に呟いていた。


「このように見た目弱々しくても質が高ければ相殺も出来ちゃうからね〜」


チャコの説明にみな唖然とする。

ハクアはルークたちのところに戻る。

ルークとフェイはハクアを労った。


「みんな終わったから次行くよ〜!意外と時間取ったから今日はこの説明だけで終わりね〜」


チャコが実演しながら説明するのを眺めながらハクアはルークに話しかけた。


「………もっと深くやると思ったけど………意外と浅いわね……」

「そうですね……深くやるといったら…この学園では最高学年、つまり三年の選択で魔法陣学といった専門的なものぐらいですかね」

「………普通…そっちからやるんじゃないの……?」


ハクアは分からないと首を傾げた。

そんなハクアを見てルークは苦笑する。


「魔法陣学はとても難しいそうですよ?でも基礎中の基礎な魔法陣については一年の段階で大まかに学んでいますね」

「……どのくらい……?」

「テストがあるから覚えるってぐらいですね。多分ほとんどの人の頭から消されているんじゃないでしょうか?」

「意味ない」


ハクアは不機嫌そうに口を尖らせる。


「まあ…………後で気づいてもう一度覚え直す羽目になるので自業自得ですよ」


特にうちのギルドではね、とルークは囁いて笑う。

ハクアもこくんと頷いてクスクスと忍び笑いを漏らす。



「え?何?あの二人、何か笑っているんですケド」


フィアはルークとハクア、二人が笑いあっているのを見て何があったと若干引いていた。


「何か面白いことがあったんでしょうか?」


後で二人に聞いてもなんでもないと言われ、フィアとフェイは首を捻った。



廊下ですれ違うたびにクスクス、顔を潜めてヒソヒソのオンパレードにハクアはいい加減飽きてきたと思いながらも教師に頼まれたものを運んでいた。


「持ちます。半分ください」


声がした方に目線を向けるとアリスが腕組んで居た。

ハクアは無言で荷物の半分をアリスに渡して歩き始めた。


「……何も思わないんですか?」


暫く無言だったがそれに耐えられなかったアリスが尋ねた。


「………何が…?」

「それは……足を引っ掛けてきたり…陰口言われたりとか……」

「……別に……何も……」


アリスはそうですか………と伏し目がちに言った。


「……ただ…」

「ただ?」

「……最近、めんどくさくなってきたなぁって………」


ハクアの紛れもない本音にアリスはガクッときた。


「先生に言ったりしないんですか?」

「………ああいうのはめんどそうだから………それにあんな小さいことしか出来ないなら……特に気にする必要ない……」


虚勢でもない言葉にアリスはただただはぁ…としか言えなかった。


「………いちいち気にしてたら逆に疲れるし………何より反応したら盛り上がってさらに過熱する………」


醒めた反応にアリスはよくそうでいられるなと思った。


外側は気にしてないと言っても大抵は内側と傷ついてるはずなのに……


アリスはハクアが大抵の人には当てはまらないと改めて感じた。


「ん…………ここでいい……」

「あ、はい………」


目的の場所に着いたようでアリスはハクアに荷物を返す。


「あの………」

「………なに…?」

「こ、この間は私のせいでこんなことになってしまって…すみませんでしたっ!!」


アリスは顔を赤らめて言うとダッシュでその場を去って行った。


「変なの…………」


一人残されたハクアはアリスの背中を見送り、荷物を置きに行った。



「──────と、いうことがあった…………」


荷物を置いた後、食堂に行きルークが確保していた席に座ってフィアたちにさっきのことを話した。

勿論、ルークが怒りそうでめんどいところは曖昧に流しておいて。


「いいんちょー的には結構気にしてたんじゃないの?」


フィアはカツを飲み込むようにして言った。


「………いいんちょー…?」

「アリスさんのことですよ。他クラスでは孤高の花とか言われていますが僕らのクラスでは委員長と呼ばれているんです。

彼女、正義感が強く世話を焼いたりと…クラスをまとめるのに一役買ってますから」


知らない情報を聞いてハクアたちはへぇーと頷きながら聞いた。


「止めるためにやったら大きくなって返ってきてしまったので罪悪感があったんでしょうね」

「……特に気にしてないのに……」


話に若干ついていけないルークの隣でハクアは今日のランチであるハンバーガーにかぶりつく。


「ハクアが無頓着過ぎなんだよ」


フィアはカレーがついたスプーンをハクアを指す。


「……そう…?」

「気にしますよ」

「……あんなのいちいち気にしてたら……やってらんない………」

「…………え?」


やってらんないとはどういうことだろうとフィアの手が止まった。


「……ハクアさんは色々規格外ですから…」


話にはついていけなかったがルークは呆れながらも言い切った。


「……まあ、少し特殊なのかもとは自覚している………」

「自覚アリかよ…………それよりなんでそうなったのかが知りたいよ!」

「確かに気になります」

「えーと………世界中は巡った………」


少し考えながらハクアは言っても問題ナシと判断した事実を告げる。


「転移はあまり使わないで、ですよね」


ルークは苦笑いで付け足す。


「…………あぁ………なんか二人の強さの理由が分かった気がする…………」

「確かに…………納得出来ますね………」


フェイとフィアの二人は何か悟ったような顔をした。


「……話は戻りますが…アリスさんがまだ気にしているようなら何か一つお願い事をしてみたらどうでしょう?それだったら多少は罪悪感が紛れるかもしれないですし……」


ハクアはなるほど……と頷いてアリスに頼みたいことを思い浮かべる。


「…………闘いたい…………」


真っ先に思い浮かんだことを呟いてみるとフィアはえっ?とまた手を止めた。

この中でハクアのことを一番知っているルークはやはりですかと苦笑した。


「今度の時間に誘ったらどうですか?」

「…………うん……絶対に誘う……」


フィアとフェイはハクアの意外な一面を見て驚くことしか出来なかった。






次の体術の時間、ハクアは言った通りにアリスを誘った。

戸惑いながらアリスは誘いを受け、完敗した。





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