トマル港の激戦
この世界で出会った同じ国の同じ自衛官達と急遽避難民の救出。
しかしながら、魔物の数は多く……。
トマル港 港湾施設 灯台
73式装甲車《APC》のエンジンが始動し、ゆっくりと進んでいく。
その後方に、トマル港で動ける探索者10人が続いている。
「のぉ、ご主人。 アレを渡してしまって良かったんかの?」
自分の右隣に並んでいたリリィがポツリと不満を漏らす。 左隣に佇むヒスイも無表情ながらこちらに視線を送っていた。
倉庫街へと曲がり、73式装甲車《APC》はこちらからは見えなくなり、12.7mm重機関銃M2の発射音がここまで響いてくる。 自分達が来た時の様にバリケードがあったのかもしれない。
倉庫の屋根の上にも、オークやゴブリンの姿が見えるが、灯台からの狙撃と、下からも攻撃にあい次々と倒されていったのがここからでも見えた。
自分達の家のある迷宮の魔物の駆除をした時は、魔力の流れで魔物の襲撃を未然に防ぐ事が出来たのだが、こういう乱戦になっていたり、大規模魔法を使用されたり距離が離れれば離れるほど、場所が広ければ広いほど今のところ自分の魔力の流れが見える目はあまり利点がないみたいだ。
戦闘音はまだ断続して続いているから、今なら鍛冶屋へ行くのも多少は楽かもしれない。 特に戦力の多い本間3尉の方がきついかもしれないが、その分、こちらが動きやすいのだ。
「よしっ、リリィとヒスイは自分についてきてください。 鍛冶屋へと向かいます。 この付近で堅牢な建物はそこだという事です」
「ご主人がそういうのなら、わっちは付いていくぞ」
「我が主のご命令ならば、たとえ地獄の業火の中でもご一緒いたします」
「なっ!? それならわっちは、わっちはっ!」
「そこまでです。 さぁ、行きましょう」
89式小銃の槓桿を引き、安全装置を解除する。 『タ』の位置に切替金を回し、いつでも撃てるようにし、さらには不測の事態も考え、銃剣を89式小銃へ着剣していた。
傍でヒスイも同じ様に準備を済ませている。 結局、本間3尉に73式装甲車《APC》にあった89式小銃、予備の弾倉や弾薬は全て返していた。
手元に残ったのは、結局はニャッハの街ゼスト氏から受け取った弾薬が残っているだけになる。 ここで補充が出来なければ、かなり不味い事になるのは目に見えていた。
弾薬がある可能性は正直言うと、かなり低いと思われる。 実際に使える銃本体はゼスト氏が保管していたわけだから、今はもう作っていない可能性もあるのだ。
「ヒスイ、弾薬の節約が必要になります。 目標の鍛冶屋に到着しても補給が出来ないかもしれません。 帰路の事も考える必要があるかと思います」
「はい」
リリィの魔法のポシェットから5.56mm弾の30発入り弾倉を3本ずつヒスイと持つ。 空になった弾倉はリリィの魔法のポシェットへと入れてもらう。
自分を先頭に、リリィが続き、ヒスイが後方を警戒をしながら進んでいく。 倉庫街へと向かい、73式装甲車《APC》の進んだ道とは違う道を進む。 灯台からの狙撃での援護もある為、岸壁沿いに進んでいく。
安全確認をしながら進んでいくと、倉庫の窓を割って飛び出てきたゴブリンと目の前に飛び出てきた為、一瞬反応が遅れた。
ゴブリンは手に持っていた手斧を振りかぶり、頭を割ろうと振り下ろす。
しかし、その斧は自分へと届く事は無かった。 すぐ後ろに控えていたリリィが刀でゴブリンを切り捨てた。
「ありがとう、助かりました」
「ご主人を助けるのは当たり前じゃ。 しかし、こやつ傷を負っておるの。 大方、向こうの方から逃げてきたんじゃな」
「そうですね、もっと気をつけなければ。 先へ進みます」
今回はたまたまだったのかもしれないが、次も無いとは限らない。 いつの間にか73式装甲車《APC》の駆動音も聞き取れなくなっており、ニャッハの街へと続く街道側の正門に辿り着いたのかもしれない。
そこに、探索者協会支部の建物があると言っていた。 まずは、そこにいるだろう生存者を救出、灯台へと後退すると言っていた。
それからしばらく進んでいくが、先ほどのようにゴブリンが突然現れて対処が遅れるという事も無かった。
灯台の方を振り返ると1kmほど離れていた。 鍛冶屋は倉庫街の中でもかなり端の方にあるようだ。
あとは、目の前の角を曲がれば鍛冶屋が見えるというところで、魔力が今までよりも濃い事に気が付いた。
リリィとヒスイに止まるように指示を出し、そっと倉庫の角から様子を伺う。
鍛冶屋と言っても、ゼスト氏の工房と住居が一体化したような作りには見えなかった。
鍛冶屋の看板らしきものがあるが、壊されて落ちている。 そこはドームをイメージする建物があった。
魔力が濃いのも理由が分かった。 ここに居たのもオークとゴブリンだったのだが、オークの数体が『ファイアボール』を使っているのである。
「オークメイジだったかな。 厄介ですね」
ゴブリンもまた、背の高いある程度知能を持った個体が木の盾や槍などで武装し、オークメイジを守っているかのように立っている。
また新たに、赤い魔力の流れがオークメイジの手元に集まりだし、数個の『ファイアボール』がドーム型の鍛冶屋の扉へと放たれる。
扉は燃えにくい為か、『ファイアボール』が当たった箇所に煤が付いているようだが、損傷は見受けられない。
魔法を使用してくれたお陰でオークメイジとその個体数が分かったのが幸いだった。 全部で5体おり、その周囲をゴブリンヘッド(勝手に命名しておく)が守っている。
ゴブリンヘッドは、オークメイジ1体に付き10体はいるから全部で50体はいる計算だ。
隠れている倉庫を見渡し、外階段を見つけた事で上手く魔物を排除出来そうだ。
「ヒスイは、倉庫の上へお願いします。 オークメイジを優先し排除、その後の判断は任せます。 出来ればゴブリンヘッドを潰しておきたいところですが」
「了解、上がります」
「ここから見える手前のオークメイジに自分が攻撃しますから、それを合図にヒスイは奥の方からお願いします」
指示を出すと、ヒスイは頷きさっさと階段を音を立てないように登っていく。
指示を待つリリィに向き直ると、待っていたとばかりに赤い瞳が輝いた。
「リリィは、魔法を使ってもらいましょうか」
「戦闘しながら、魔法を使うのはまだ無理じゃぞ?」
リリィは身体能力を強化し高める『ブレイブハート』を使用している為、またリリィも魔法を使う事は出来るが2つ以上の魔法を使いこなすのはまだ無理だという。
「それならば、傍を離れないで下さい。 自分とヒスイがオークメイジを処理しますから、その間に自分に近づいてくるゴブリンヘッドを処理お願いします」
「さっきから言うておるゴブリンヘッドはあの大きいゴブリンの事じゃな。 獣人娘もなんか勝手に読んでおったし」
「まぁ、なんと無くです」
倉庫の屋上を見上げると、ヒスイが登り終わったようだ。 口笛が1度なり合図が送られてくる。
リリィと顔を見合わせ、頷き、狙撃しやすい位置に立つ。 手前の個体までは50mほどの距離しかないから、立撃でしっかりと狙いを定める。
タンっという音と共に、1体目のオークメイジがその場で崩れ落ちると、続けて屋上のヒスイからの狙撃が始まった。
高所からの狙撃で、次々にオークメイジを処理していきあっという間に残る4体のオークメイジを狙撃し終えてしまった。
ゴブリンヘッドもまた突然守っていたオークメイジが倒れて動かなくなった事から、動揺し浮き足立っている。
リリィが前に出ると、初太刀で1体を袈裟切りにしそのまま返す刃で隣のゴブリンヘッドを切り捨てる。 止まる事無く、次の個体、次の個体と切り捨てていった。
リリィの動きに合わせて揺れるポニーテール。 ゴブリンヘッドも攻撃を受けているとやっと立ち直り、リリィに襲い掛かるのだがどの攻撃も当たらなかった。
逆に、リリィの動きに翻弄されて同士討ちまでしてしまっている。
自分もまた、リリィに群がっている個体では無く、弓矢を番えているゴブリンヘッドへ射撃を加え、撃ち倒していく。
さらに離れた場所にいる個体や、リリィと射線が被ってしまっているゴブリンヘッドに対しては、屋上にいるヒスイからの狙撃で倒れていった。
弾倉を1本使い切る頃には、その場にいた魔物の群は残っていない。 リリィの『ファイアボール』でゾンビ化しないように処理していく。
ヒスイもまた、倉庫の屋上から降り自分とリリィに合流していた。 鍛冶屋の扉の前に進むと、何かしらの魔法がかけられている事が分かる。
だからこそ、オークメイジの『ファイアボール』の効果がなかったのだろう。 扉をノックしようと手を伸ばすと掛けられた魔法の幕が解けた。
中の様子を伺うが、シンとして返答は無かった。 もう1度ノックし、鍛冶屋の前にいた魔物は倒した事を説明する。
それでも反応は無かった。 もしかすると、ここの鍛冶師はもう避難していないのかもしれない。
そう考え、1度灯台へと戻ろうかとリリィとヒスイに話していると、扉が開いた。
中から出てきたのは、また女の子である。 肩口で切り揃えた青い髪と頭には手ぬぐいで頭を覆っている。
キリッとした目元に、ホッペには油汚れがチョコンと付いている。 来ているエプロンにも同じように汚れが付いていた。
口をへの字にして、こちらを睨む様に見上げていた。 しかし、ここでもかと内心思っていた。 最近、女性との出会いが多いような気がして仕方ない。 向こうに居た時には考えられない事だ。
それでも、目の前には小さな少女がいるのだ。 放っておくことなんて出来ない。
少女と同じ目線になるように、しゃがんで挨拶する。
「こんにちは、悪い魔物はここから追い出しましたよ。 お父さんかお母さんはっ!?」
目に見えない速さで少女の拳が自分の顔面に迫っていた。 油断していなくても、今のは気が付かなかった。
ただ、勝手に手が動いたと言うか少女の腕を掴んで、当たる前に拳を止めて大事には至らない。
「危ないですよ、こんな風に人を殴ってはいけません」
「はぁ!? 止めんなよ、ボケがっ! オレは成人してんだよ。 ガキ扱いすんじゃねぇ!」
下手すると、リリィより小さい少女、女性はドワーフの少女だといった。
ドワーフと言えば鍛治!という印象はそのままであるが、もっとズングリとした体系に、髭を蓄えた筋骨隆々の印象だったから拍子抜けしてしまった。
「すみません。 初めてお会いしたので礼を欠いてしまいました」
「わかりゃあいいんだよ。 じゃ、やる事あっから」
そう言って、彼女は戻ろうとしたのだが、ふと自分の肩から提げていた89式小銃に目が留まった。
ドワーフの女性はジッと見ていると、不意に手を伸ばしてきたのだ。 慌てて立ち上がり、手の届かないようにすると怒り出した。
「おめぇ! 身長高いからって汚ねぇぞ!」
「いや、危ないですから。 突然手を伸ばさないで下さい」
「貸せよ! いや、すまねぇ。 貸してくれないか?」
「理由をお聞きしても?」
「悪かった、話は中でするからさ、入ってくれよ」
鍛冶屋に入る前に、『クリーンウォーター』で身体に付いた汚れを落として入る。 鍛冶屋の中はヒンヤリとしていて、外よりも過ごしやすく感じた。
自分、リリィ、ヒスイの順に彼女の後についていく。 鍛治屋の工房だと熱気あり暑かった。 ゼスト氏の工房はそうだった。
でも、ここは違うようだ。 部屋に通されると小さな灯りが灯っており部屋は暗い。
「自分は、ナオトといいます。 こちらはリリィとヒスイと言います。 探索者で、今回の魔物の異常発生でニャッハの街から来ました」
「おぅ、オレはホルンホルンってんだ。 まっ、ドワーフ族、鍛治は得意かな」
「色々とあって何から話せばいいか分からないですが……。 まずは避難する必要があります。 灯台に今は拠点を築いているところです」
テーブルの上に、89式小銃から取り出した弾倉を置き、さらに5.56mm弾を1つを抜き取るとホルンホルンの前に差し出す。
それを見たホルンホルンの顔色が変わる。
「やっぱり! やっぱりじゃんか! オレが作ったのがあるんだよ。 ゼストのお師さんから習ってよ」
ホルンホルン氏は、興奮が冷めないままで立ち上がると戸棚へと向かうと、中から小さな箱を取り出した。
戸棚の中には同じような箱が並んでいて、その中から1つを取り出してきたよで、自分の前に差し出す。
箱を開けるように促され、蓋を開けると5.56mm弾がぎっしりと詰まっていた。 一箱に30発が入っていた。
「これをホルンホルンさんが?」
「おぅ! ずっと作ってたんだよ。 ただ、ジュウってのが上手くいかなくてな」
ゼスト氏とその男の話を知っていると言う。 5.56mm弾をゼスト氏と一緒に作成したそうでゼスト氏よりホルンホルン氏が上達したという事で鍛治の合間に作成していたそうだ。
作ったと言う銃も机へと置いたが、マスケット銃のような物に見える。
弾薬に合わせて筒を作りそれに弾倉を入れられるように穴を開け、引金を付けていた。 槓桿も付いており、持って動作を確認すると問題は無さそうに思えた。
薬室を確認し、弾が入っていない事を確認して銃口を上に向けて覗いてみる。 腔綫と言う溝が掘られている。
それがこのマスケット銃に無い為、5.56mm弾のような形をした弾丸が上手く飛ばないのだろうと考えられた。
「銃の構造に問題があるかと思います。 ただ、今は避難を考えて下さい」
「わぁったよ。 でも、出来ている分だけは持っていきてぇ」
「わかりました」と言って、リリィに魔法のポシェットに入るかを確認すると問題無さそうだ。
ホルンホルン氏も急いで棚から出すと、それをリリィがポシェットへと仕舞っていく。
この弾薬が使用できるかどうかは今すぐには確認は出来ない。 万が一規格があっていない場合は銃の暴発もありえるからだが、ホルンホルン氏に確認しながら進めて行くべきだった。
1丁だけ完成していたマスケット銃も一緒にポシェットへと入れておく。
「終わったよ」
「分かりました、いきましょう」
弾倉を確認し、残弾を確認。 ヒスイと2人で1本と十数発ずつが手元にあるのが現状だ。
ここから、灯台までの距離を戻るギリギリだが、何とか行くしかない。
「これだけは持っていく」と言ってバックパックを背負いホルンホルン氏は一番後に付いて来てもらう。
扉を開けて、外の様子を伺う。 魔物の気配は無かった。
ヒスイにサインを送り、来た道を進んでいく。
倉庫の筋道から、ゴブリンを従えたオークが突然現れると、こちらへと襲い掛かってくる。
すかさず、ヒスイと2人集団を処理し進んでいく。 こちらへと現れる群が多くなってきた気がする。
リリィも前へ出ると、ゴブリン、オークを次々に切り伏せていく。
「リリィ、あまり1人で前へ出ないで下さい!」
ヒスイも弾を外す事は無く、1発につき1体処理していくがまだ灯台へは遠い。
灯台のバリケードには異状は起きていないようだが、73式装甲車《APC》も見当たらない。
「本間3尉はどこに……」
また新たな群が倉庫から現れると、こちらへと向かってくる。 弾倉に残った残段数より数は多い。
「走れ! 走って灯台へ!!」
リリィ、ホルンホルン氏を先に走らせて自分は89式小銃を構えて撃つ。 オークを優先的に潰していくが、それでも数は多い。
5mほど走ってヒスイが膝撃ちの姿勢を取って射撃を始める。 お互いに援護しいながら後退していく。
「ゴブリンの足が思ったより速いです」
走って、走ってバリケードに辿り着いた。 バリケードを盾にして、サーラ、セラ、スゥの獣人娘と灯台から狙撃していた自衛官の1人が見張っていた。
彼の狙撃の援護が無い事の理由が分かった。
バリケードに身を隠し、迫る魔物の群に射撃を加える。 対人狙撃ライフルの7.62mm弾に予備はあったのだが、動作不良を起こし、射撃が出来なくなっていたそうだ。
手元に残っていたのは、9mm拳銃とその弾薬を持っている分のみだと言う。
「すみません、援護が出来ませんでした」
「いえ、仕方ないですから。 でも、自分達ももう残弾が少なくて」
言ってる傍から、残っていた弾倉も撃ち尽くしてしまった。
ヒスイからも「残弾無し」と報告が入る。 リリィも傍で刀の柄に手を掛け、準備している。
自分も手元に残った89式小銃を見る。 着剣しておりこれでなんとかやれるしかない。
正面に目を向けると、続々と集まるゴブリンとオークの群。 73式装甲車《APC》は未だに戻ってこない。
サーラが、正面に迫るゴブリンに向かって魔法を放つ。 『ファイアボール』で1体、1体と倒していきリリィもまた『ウインドカッター』で数体を纏めて屠る。
ここを抜かれてしまえば、避難民のいる灯台は目の前だ。 ここを抜かせるわけにはいかなかった。
「神の雷、悪しき者を打ち砕けっ! 吹けよ嵐! 『ドンナーシュトゥルム』」
突然の魔法の詠唱と放たれた雷と突風が巻き起こり、前に迫っていた魔物の群が吹き飛ばされた。
嵐が過ぎ去った後には何も残ってはいなかった。
「なっ、なんだ、今のは……」
「あれは、伝説の英雄しか使えない雷の魔法です」
サーラが知っていたようだ。 しかも、伝説の魔法らしい。 自分には何がどうとかは分からないが凄まじい威力だったのは見て分かった。
振り返ると、巨大な帆船が港の中へと進んでいるところだった。 意識して見てみると船首に巨大な魔力が集まっているのが分かった。
「あれは、帝国軍の旗だよ」
ホルンホルン氏が船を指差して言う。 帝国軍という事は、この状況を打開しにきてくれたのだろう。
これで、避難していた民間人も安心出来るだろう。
接岸すると、上下が赤い色で統一された軍服を身に纏い横隊を組んでいる。
1人煌びやかな格好をして、怒鳴りながら指示を出している。 灯台を拠点とし、帝国軍による魔物の駆除が始まった。
この日、帝国軍東部遠征軍による救援によって魔物の氾濫によるトマル港襲撃は沈静化する。
帝国軍に現れた英雄と呼ばれる人物とその仲間達の活躍によって負傷者は出たが、幸い死傷者は出なかった。
しかしながら、ニャッハの街との街道はいまだ多数の魔物の群による分断が続いており、現状の打開についてはいまだ解決策は出ていなかった。
リリィとヒスイと3人で、探索者協会へと向かうと、そこには協会の壁に激突しめり込んでいた73式装甲車《APC》と探索者の遺体が並べられていた。
本間3尉以下2人の姿もある。 狙撃で援護してくれた1人が傍に膝をついている。 先ほどから被っていた目出し帽を脱いで黙祷を捧げており表情は伺えない。
それから振り返った隊員の顔を見て驚いた。 女性だったのだ。 「何か?」と言う顔をするが首を振って答える。
持ち主のいなくなった倉庫の1つを借り受け、まだ操縦できる73式装甲車《APC》を移動させる。 ホルンホルン氏は73式装甲車《APC》を見て目を輝かせて見上げて触らせてほしいと言うがダメですと伝えるとしょんぼりとした顔していたが、まだ諦めていはいなさそうだ。
獣人娘達も家が焼け落ちたと言って、倉庫へとやってきた。 憔悴しきった顔を見て何かあったことは伺える。
何も言わずに中へと案内しこの日やっと睡眠を取るのだった。
出会いがあれば別れもありますが、それが急にやってくるのはどの世界でも同じだと改めて実感するナオト。
やっとつける休息と明日への不安はまだ払拭できなかった。
第15話投稿しました。 ご意見、ご感想お待ち致しております。




