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異なる世界の空の下で  作者: 亡霊
14/17

トマル港初戦

辿り着いたトマル港では魔物が暴れているらしいようです。

直人は新たに手に入れた73式装甲車《APC》を活用し、トマル港へと突撃します。

トマル港


 ニャッハの街へ海路を使用し物資を運ぶこの地域で2番目に大きな街である。

 港で働く民間人の住まいがあるほか、港湾施設、探索者協会ギルド支部や出入りする探索者や船乗り達向けの歓楽街がある。

 ニャッハの街のある東側に向かって大きな門があり、荷馬車などが通る為にかなり広い造りになっているのがわかる。

 西側が港になっており、北側は住宅街、南には倉庫が幾つもある。

 港も大きく作られているようで、ここから見える限りには何も停泊はしていないようだが大型船も接岸できそうだ。

 森の中の街道からは出ずに脇の轍に入って様子を確認する。 まだ他のニャッハの街から出た探索者はここまで到着していないようだ。

 ただ、現在、街中には火の手も上がっているようで、門は破壊されており外からの外敵に対して何の効果も出来ていない。

 現に、ゴブリンが集団で街の中へと進入している。 何かを壊す音や時に悲鳴も聞こえてくる事から街の中もひどいことになっているのだろう。

 

 「ナオトさんっ! 遠いけれど……同じ武器の音がするよ!」


 73式装甲車《APC》の車長席からじっと街を見ていたセラが声を上げる。

 慌てて、どこかと確認するがすぐに視認出来ない。 セラから方向を聞き、そこに双眼鏡を向ける。

 港から北へ向かって海へと出ている岬に灯台があり、そこに通じる道が1本道である。

 その中腹ほどに馬車や小船だろうか、とにかくある物でバリケードが作られているようで、そこへと迫るかのように魔物の群が押し寄せようとしている。

 また、音がすると言うセラの耳の良さで、魔物の群を見ると数体の魔物が倒れて、それが邪魔ですぐに押し寄せる事ができないでいるようだ。

 その群の中にも先ほどゴブリンの群の中にいた背の高い個体と、ゴブリンとは違う魔物が紛れ込んでいる。

 豚の顔と大きな体格を持つ魔物がいた。 セラがオークと呼ばれる魔物だという。 ゴブリンのように人を襲い、略奪や女性を攫うと言う。

 また、知能もゴブリンよりは高く、数体一緒に行動したり武器や防具も人間が使っている物と同じ物を扱うことが出来る。

 個体によっては、魔法を使うオークメイジと呼ばれる個体もいるそうだ。

 

 「あんなにオークがいっぱいだなんて……。 みんなは無事なんかな」


 ポツリとそう漏らすセラにはかける言葉がない。 しかし、あの灯台に向かう道にあるバリケードから考えるに先にある灯台に人がいる可能性は十分にある。

 全ての住人を収容するには難しそうだが、それでも希望はある。

 他にも、倉庫外や堅牢な建物もあるようだから、そこに隠れて避難している可能性も捨てきれない。

 ただ、現時点で判明しているのは灯台には自分と同じ世界の人間がいる可能性と避難している住人を考慮するに、そこに向かうのが一番かも知れない。

 73式装甲車《APC》にあったヘルメットについていた無線機を通して、ヒスイに呼びかける。

 2つしか無かったので自分とヒスイで今回は使用していた。


 「ヒスイ、街中でコレを操縦して突破出来そうか?」

 「はい、我がマスター。 お任せください」


 操縦は問題ない。 あとは、前方銃にも1人人員を付けたいところだが、リリィに頼むが「外が良いのじゃが」と1度断られてしまった。

 全員で一気に行きたいというと了承してくれたのが幸いだった。

 リリィには74式車載7.62mm機関銃の説明をする。


 7.62mm弾で、小銃とは違って自分に向かって手前にくるレバーがあり、それを前に押し込むことで射撃が始まる。

 撃ちたいと思う方向へ左右、上下に向けて撃てる事を説明し、万が一弾詰まりで撃てなくなった場合は無理せずそのままでいいと説明する。他に注意点としては稼動区域は限られているので、それだけは注意が必要だといっておいた。


 「ご主人、これはどんな時に撃てばいいかの?」

 「魔物が前に来たら撃ってください。 但し、撃ち続けると銃身が加熱してしまってダメになってしまいますから、適度に休憩をいれる必要があります」

 「なんぞ、難しいのぉ。 まぁ、わっちの刀もずーっと斬り続けると使い物にならんくなるしの。 それと一緒かぇ?」

 「そうです、考え方は一緒です。 煤の汚れも本来は気にしますが、リリィの『クリーンウォーター』で整備が不要になるので。 魔法とは便利なものです」

 「もっと褒めてくれんかの、最近はあまり頭を撫でてくれる回数が減っておる」


 ちょっと拗ねているリリィの姿が可愛いと素直に思えたので、そっと頭を撫でる。 

 「クフフ」と笑って機嫌が良くなったようだ。 上部にある扉を閉めて、ロックし、セラ氏にもこれから危険なので車長席の上部に当たる扉を閉めますねと言って同じ手順でロックする。

 ヒスイがいるので、万が一脱出する必要が出たら任せるぞと言って、前方車載銃の席から自分が担当する12.7mm重機関銃M2へと移る。

 後部隊員には、サーラ氏とスゥ氏が不安そうな顔をしてこちらを見ていた。 後ろにいると説明がないと何も分からないのだった。


 「サーラさん、スゥさん。 これからトマル港へ突入します。 状況としては、トマル港内部に魔物の群が侵入しています」


 港町の多方に魔物が入り込んでおり、住人の様子は不明な事、火の手も上がっている事もあり迅速な消火活動も必要である事を伝える。


 「それと、岬にある灯台ですが、そこに通じる道にバリケード、障害物があって魔物が来るのを押し留めようとしている動きが見られます」


 灯台に避難している人物がいると伝えると、安堵した表情をするサーラとスゥだった。

 しかし、どれだけの人数かも分からない事をしっかりと伝える。

 こればかりはどうしようもなかった。


 「それでも、まだ生きている人がいるなら私達が助けなければいけないと思います。 危険かどうかは関係ありません」

 「スゥもスゥも! そう思う!」


 「ありがとうございます」と言って、12.7mm重機関銃M2の位置へと付く。 オークに対して89式小銃に使用されている5.56mm弾がどれだけ通用するか不明だ。

 しかし、ゴブリンには過剰過ぎる火力なので89式小銃も持って上がる。 ヘルメットを被り、ヒスイに「前へ」と支持をだす。

 73式装甲車《APC》のエンジンが始動し、ゆっくりと街道へと戻る。

 音に気が付いたゴブリンが気付き森の中から現れるが、すぐさま89式小銃で頭部を撃ち抜く。 相当揺れるはずなのだが、外す気がしなかった。


 「ヒスイ! 窓は小さいが大丈夫か?」

 「問題ありません。 よく見えています」


 レバー操作で、車体をコントロールし、大きく窪んだ箇所を避け、倒れている荷馬車を迂回し、それでもまっすぐにトマル港の門へと向かう。

 ゴブリンの群が新たに門を塞ごうと現れるが、自分が89式小銃で撃つよりも早く、74式車載7.62mm機関銃が火を噴いた。

 リリィには、まっすぐ狙うのが難しいので、目標の若干下を狙って、反動で上に向いていく。 弾着する箇所が地面が抉れて土が舞い上がるのでそれで修正するといいと伝えていたのだが、あまり関係なかったようだ。

 右から左へとゴブリンを薙ぎ払っていた。

 ただし、頭部を破壊したわけではないからゾンビ化を防ぐ為に、のちほど処理する必要はあるだろう。


 「ヒスイ! 正面に2ブロックほど進んだら半壊した建物があります! そこを右に曲がって下さい!」


 短く「了解」と返答がある。 操縦に集中しているのだろう。

 73式装甲車《APC》なら、その距離もあっという間だった。

 すぐに曲がるべき場所へと曲がったのだが、想定外だった。 急ぎすぎたのだ。 

 オークの一団がそこに障害物を置いていたのだ。 壊れた馬車だったり荷物の入っていたであろう木の箱のような物を置いてその向こう側からこちらに弓矢で狙いすましていたのだ。

 かなりの危機的状況だったが通常の鏃の付いた弓矢の攻撃ならが、73式装甲車《APC》には傷1つ付かないだろう。 しかし、邪魔であり待ち伏せするほどの知能があるのならば、後々邪魔になる事は目に見えていた。

 すぐさま、89式小銃の切替金を『ア』の安全装置にして、12.7mm重機関銃M2の槓桿を引き、初弾を装填する。

 狙いなんて付けない。 まずは目の前の脅威を排除する必要があるのだ。

 ダンッダンッダンという89式小銃や74式車載7.62mm機関銃よりも重たい銃声が建物に反響している。

 所詮は、壊れかけた馬車や木の箱で急ごしらえのバリケードである。

 現代でも、12.7mm弾の威力は凄まじいのだ。 100m離れた距離でも厚さ25mの鉄板を撃ち抜く威力がある。

 ベルト給弾方式で12.7mm弾が薬室へと送り込まれ、発射される。 後方に控えていたオークごとバリケードは木っ端微塵になっていた。


 「ヒスイ、前へ」


 自分の号令でゆっくりと73式装甲車《APC》が前進する。 オークだった物やバリケードだったものが散乱してしまったが仕方ない。

 次の角を左、次を右にと説明しながら、トマル港内を進む。 建物を登っているオークから弓矢を撃たれるが、こちらには当たらない。

 移動速度が違う事もあるのだろうが、ヒスイが風の精霊という事も関係しているようだ。 こちらの攻撃には風が不利になる事は無く、自分達に攻撃してくる敵対者に対しては影響が出るといった具合にだ。

 また1匹、オークを仕留める。 ただ、重武装をしている個体はいないようだ。 篭手だけを付けた個体もいるのである。

 守られていない箇所なら89式小銃の使用している5.56mm弾で十二分に対処している。 現時点では灯台へと向かう際に邪魔になった魔物を排除していた。

 リリィも74式車載7.62mm機関銃を使用し、小規模から中規模程度の魔物の群に対処していた。 ヒスイに確認させたのだが弾薬もまだ十二分にあるらしい。

 5.56mm弾、30発を撃ち終わり弾倉を交換する。 槓桿を引いて初弾を薬室へと送り込み現れたオークとゴブリンへと狙撃を続ける。


 「ヒスイ、あとはこのまま直進してください。 魔物の群はちょうど岬への道に入り込んでいてすぐ後ろを取れますが」

 「わかりました。 あえて進んで少し先で停車します」


 ヒスイはこちらの意図している事に気が付いているようだ。 魔物の群の後方へと73式装甲車《APC》を配置し射撃する事も悪くは無い。

 しかし、魔物の群の向こう側にはトマル港から避難し魔物を食い止めようとしている者たちのバリケードがある。

 そしてバリケードの向こう側から、射撃している人物もいる事から対角線上の位置から射撃をしようものなら、バリケード側にも被害が出る事は確実だった。

 73式装甲車《APC》は、岬の入り口を過ぎて停車し、超信地旋回で魔物の群に正対する。 履帯を持つ車両ならではのその場から移動する事無く車体の向きを変えた。

 この位置からなら、12.7mm重機関銃M2も74式車載7.62mm機関銃も使用しても抜けた弾丸は海の方へと向かう。

 先に火蓋を切ったのは、リリィの74式車載7.62mm機関銃だった。 軽快な音と共に74式車載7.62mm機関銃が火を噴いた。

 こちらの攻撃に気付いたオークが数体群の中から出てきた。 その個体は、弾丸への対策だろうか金属製の板を持っている。

 怪力に身を任せて持っているのか、7.62mm弾では効果が薄いようだ。 兆弾によって周りの魔物に被害が出ているから無駄ではないのだが、あれでずっと防がれ、対処されては困る。

 自分もまた手元の12.7mm重機関銃M2での射撃を開始する。 鉄板を持っていようが関係なかった。 盾としていたオークの個体毎打ち抜き、それでお終いだった。 魔物の群はあっという間になくなってしまったのだ。

 手元の12.7mm重機関銃M2の弾薬を見ると、あまり多くなさそうだ。


 「ヒスイ、リリィの74式車載7.62mm機関銃は弾薬はどうですか?」

 「すみません、弾詰まりです。 すぐに直せますが、あと200発ほどです」

 「わかりました。 ヒスイは、73式装甲車《APC》でバリケードの方へお願いします。 後退バックでいけますか?」


 「了解」とヒスイは短く返答を返す。 自分も89式小銃を持って73式装甲車《APC》から降りるとヒスイも操縦席から顔を出す。

 腕を大きく使って、右に左にと誘導しながら後退バックでバリケードの方へと進んでいく。

 一旦、停車し、リリィに魔物の火葬を頼むと快く引き受けてくれた。

 生き残っている個体もいたが、すでに虫の息でありリリィの手を煩わせる事は無く、作業でもしているかのように処理していく。

 岬への入り口とバリケードの中腹あたりに73式装甲車《APC》を停車させ、運転席のハッチを開け、上からヒスイを覗き込む。

 ヒスイが自分を見上げる形で糸目ではあるが、しっかりと自分を見ていた。 


 「お疲れ様、まだトマル港内部には魔物がいると思います。 どういう出方をするか分からないけれど、ヒスイには73式装甲車《APC》を任せますので状況によっては74式車載7.62mm機関銃で襲撃をしてくるゴブリンやオークを撃退してほしいです」

 「お任せ下さい、我がマスター

 「ありがとう」


 そう言って、ヘルメットの上からだがヒスイの頭を撫でる。 横から視線を感じたので見てみると、両手で耳を押さえたセラ氏が涙目になっていた。

 車長席のすぐ横で74式車載7.62mm機関銃が絶え間なく射撃を続けていたのだから、こうなるのも仕方ない。


 「ナオトっ! こんな事になるなら、早く言ってほしいっ!」

 「ご、ごめんね。 セラは耳も良いのに悪い事してしまった。 今から後ろに移ってくれるかい? サーラとスゥの様子を見てほしいんだ」


 怒りながらも言われた通りに後部隊員室へと狭い中向かってくれた。 セラ達の体格なら、この狭さもあまり苦ではないかもしれない。

 ヒスイにももう一度「頼みます」と声をかけて、リリィを呼ぶ。

 ちょうど、最後の屍骸を燃やしたところだったようだ。 恒例の指から魔力を補充し一息つくリリィの頭をそっと優しく撫でる。


 「まだ全部が終わったわけではないですが、お疲れ様でした」


 咥えていた指を離し、「クフフ」と擽ったそうに笑うリリィ。 そんなリリィにも新たに指示を出す。 


 「リリィには万が一、73式装甲車《APC》へと取り付く魔物がいたら処理してほしいのですが任せても良いでしょうか?」

 「うむっ! ご主人に魔力も貰ったし元気いっぱいじゃぞ! 灯台へ行くんじゃな? 後ろの3人と一緒かえ?」

 「えぇ、そうです。 もしかすると、自分の知っている人がいるかもしれないのです」

 「一応言っておくが、気をつけていくんじゃぞ」


 「ありがとう」とお礼を言って、73式装甲車《APC》の後方へと回り込む。 後部ハッチのロックを解除し開放すると後ろにいたサーラとスゥは比較的大丈夫そうだった。

 すぐ隣で74式車載7.62mm機関銃の射撃音がしていたセラ氏よりはマシだったという事だろう。


 「3人は自分と一緒に灯台へ行きましょう。 トマル港出身との事ですから、顔見知りが現れたら安心すると思います」

 「はい! わかりました!」


 3人の中でも、サーラが元気に答えてくれた。 

 まだ安全が確保されたわけではない事はしっかりと説明すると3人とも頷いた。

 自分も、念の為にだが89式小銃で武装している。 自分を先頭にして4人で灯台へと近付いていく。


 「誰か!」


 バリケードの向こう側から、隠れてはいるがこちらを誰何してきた。

 どこの軍隊でもしているだろうし、この世界の軍隊でも同じ事をしているかもしれない。

 しかし、自分には今の誰何は『日本語』に聞こえた。 この世界の言葉についてだが、まるで吹き替えか?と思う時があった。

 現地の言葉を話しているにも関わらず自分の良く知っている言語になって伝わるのだ。 そうでなければ、意思疎通も難しくここまで生きてられなかった。

 つい違う事に意識がいってしまったが、もう一度誰何され自分の認識番号と氏名を『日本語』で答える。 しばらく間があったが、バリケードを盾にしていた人物が現れた。

 都市型迷彩服に身を包んでいるが、間違いなく自衛官その人だった。 手には着剣された89式小銃を持ち、1度振り返り灯台の方に向かって腕を大きく振ると、またこちらに向き直った。


 「認識番号が、古いが間違いないようだ。 北部方面隊第7師団普通科連隊第3大隊第2中隊、本間達也ほんまたつや3等陸尉だ」

 「失礼しました! 北部方面隊第7師団第72戦車連隊本部管理中隊偵察小隊所属伊藤直人いとうなおと3等陸曹です」


 この世界に来て、初めて自分以外の生きた自衛官と出会えた。

 一緒に来ていた同じ班の者は殉職し、自分だけが運良く生き残れた事。

 73式装甲車《APC》のところにいる少女に助けられ、今まで生き延びてきていた事。

 探索者として探索者協会ギルドに登録した事で請け負った緊急任務クエストでトマル港へと来た事。

 途中、街道から逸れた場所に停車していた73式装甲車《APC》と乗車していた隊員が死亡しゾンビ化していた為、処置し73式装甲車《APC》を借用していた事。

 そして、今に至る事を説明すると、本間3尉は額に手を当ててため息をつく。


 「それでだったのか。 あの73式装甲車《APC》はうちのものだよ。 実弾演習中に気が付けば怪物の真っ只中。 確か魔物と言ったか。 それで1名が殉職しなんとか近くに人がいないかと私の狙撃班の3人とこの港街に先行していたんだが」


 同じく、魔物の群が街中へと侵入し暴虐の限りを尽くしていた。 73式装甲車《APC》へ戻ろうにも、目の前で蹂躙される民間人を黙って見過ごすわけには行かず、救えるだけ救って灯台へ。

 元々、先に逃げ込んでいた住人の手によってバリケードは作られていたが、本間3尉達4人係りで人の通るスペースを開け全員が中に入ったところで閉じたのだという。

 灯台から狙撃し続けて魔物の群を寄せ付けないようにし、それでも前進を続ける魔物に対しては、本間3尉と弓矢を扱える住人がバリケードを盾にして戦闘を継続していたのだ。

 本田3曹は、自身の持つ89式小銃から弾倉を抜き、確認する。 残弾は少ないようだ。


 「弾も持てるだけ持ってきていたんだが、助かる。 73式装甲車《APC》にあった分を貰えるかな?」

 「はい、問題ありません。 しかし、5.56mm弾はありましたが狙撃用の7.62mm弾はありませんでした」

 「それは、うちの班が持ってきているからだ。 89式小銃用の5.56mm弾がもう無くなるから補給したい」


 ダァンと言う発砲音の後に、73式装甲車《APC》の方からも74式車載7.62mm機関銃の発射音が響く。

 振り返ると、十数体ほどのゴブリンがヒスイからの射撃を受けて倒れていく。

 それを見た本間3尉の顔が曇る。 


 「遅れましたが、73式装甲車《APC》はありがとうございました。 お返しします」

 「そうか? すまんな、助かる」


 それを最後に、魔物の攻勢が止まった。 

 好機チャンスと見たのか、本間3尉からとある提案がなされた。

 それを聞いて、今の現状を考えると十中八九、危険だと思う。

 しかし、本間3尉はトマル港に建てられた堅牢な建物に避難している住人がいると言い、分散している今より灯台で救援が来るのを待つべきだと言う。

 トマル港でそれに該当する建物は、ニャッハの街へ向けて伸びた街道への東門の近くにある探索者協会ギルド支部、その付近にある街を警備する為の衛士の詰め所がある。

 倉庫街の南区には鍛冶屋があるらしい。 ニャッハの街でゼスト氏の言う鍛冶屋とはその場所にようだ。


 「うちの凄腕なんだが、灯台の上から狙撃を続けている。 残りの狙撃班2人と私が73式装甲車《APC》を使用し一番距離のある探索者協会ギルドお衛士の詰め所を確認する」

 「了解、自分達は徒歩なので比較的近い鍛冶屋へ行こうかと思います」


 本間3尉は、安堵した表情になる。


 「サーラさん、セラさん、スゥさんは灯台に残ってくれませんか? 怪我人もいますから助けてほしいんです」

 「「はい」」


 不意に話しかけられて驚いてはいたが、聞き分けが良くてよかった。

 その間、73式装甲車《APC》へと向かい、リリィから20本の弾倉を受け取り、また駆け足で本間3尉の待つ場所へと戻る。

 本間3尉に車両全ての分と言って弾倉を渡す。


 「ありがとう、伊藤3曹」


 すでに準備していたようで、2人の自衛官が増えていた。 探索者も一緒に向かうとの事で10人ほどの人数になっている。

 ただ狙撃での援護を続けるとの事で、自分達を支援してくれる隊員が灯台から射撃を続けていた。

 ヒスイとリリィが73式装甲車《APC》を元々持っていたに自衛官に明け渡していた。


 「リリィ、ヒスイ、これからの作戦を伝える」


 こうして、住人救出作戦が始まるのだった。

以上、第14話でした。

また新たな出会いがありました。

その出会いが吉と出るか凶か。

ご意見、ご感想宜しくお願いします。

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