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異なる世界の空の下で  作者: 亡霊
12/17

3人で

 楽しいひと時も終わりが来るのもです。

 さて、彼らはこれからどのような選択をしていくのでしょうか。


ニャッハの街 アメリア氏実家 ゼスト鍛冶屋


 窓から入る日差しで目が覚めた。 両手が痺れて感覚が無い。

 昨日は、夕飯を食べてから眠ったのだ。 部屋に自分とリリィ、ヒスイの3人で同室である。

 ベッドはリリィとヒスイの2人で使ってもらい、自分は床に寝ていたのだがいつの間にか2人が両隣に来ていたのだ。

 しかも、自分の腕を枕にしている。 2人を起こさないようにてを抜きたかったが無理そうだ。

 右腕を枕にしているリリィは、「クフフ」と笑っていて幸せそうに寝ている。 まだ幼い顔つきで、人形のような白い肌に白い髪を寝ているからかいつもの赤いリボンはしていない。

 目を閉じているから見れないが、赤い瞳はまるでルビーのようだ。 昨日街で買った寝巻きをきている。 淡いピンク色したワンピースタイプの寝巻きである。

 彼女に似合って、とても良いものだと思う。 ただ、スラリと伸びた足が魅力的過ぎて危険である。

 視線をそのまま左腕に向けると、そこには新たに仲間になったヒスイが静かに寝息を立てていた。

 瞳の色と髪の色が、鉱石の翡翠と同じ色をしている。 糸目でこの少女もまた幼い顔立ちだ。

 自分の事を「我がマスター」と呼んでいる。 今はまだ服を買って揃えていないから、自分の迷彩服の上衣を羽織って寝ている。

 こちらも下は履いておらず、ある意味目に毒だ。 自分だって男なのだが、と思ってみているとヒスイの表情に変化があった事に気が付いた。

 瞼と口元が微かにだが動いている。


 「ヒスイ、起きているんじゃないかな?」

 「はい、我がマスター。 おはようございます」


 ヒスイは枕代わりにしていた左腕から頭を上げ、ちょこんと正座するとペコリと御辞儀をした。

 その仕草も可愛いが、妙に上機嫌な気がするのだが、自分の気のせいだろうか。


 「朝、目が覚めましたら我がマスターが傍に居てくれました。 それが嬉しいのです」


 自分が考えていたことでもわかるような答えだった。


 「我がマスターとは心が繋がっております。 だからこそ分かるのです」

 「そっか、不思議だね」

 「いいえ、不思議ではありません。 それが当たり前です」


 いつもなら糸目のヒスイだが、今は見開いている。 やはり、緑の色をした綺麗な瞳だった。

 ヒスイの事で気が付いたことがある。 感情が昂ぶると瞳を開くのだ。 あまり回数を見たわけではないが、今までそうだった。

 ジッと見ていたからだろうか、「ポッ」と言って頬に両手を添えるのだが、その仕草も可愛いと思う。

 そうしていると、忘れていたわけではないのだが、右手をギュッと抓られてしまう。 視線を向けるとリリィがジトッと睨み付けていた。


 「朝から、仲が良いのぉ、ご主人よ」

 「おはようございます、リリィ。 さぁ、起きたのですし右手を開放してくれると助かります」

 「嫌じゃ!」


 どうもご立腹のようである。 空いた左手でリリィの綺麗な白い髪の毛を梳いてやる。 気持ちいいのか、うっとりとしていた。

 ヒスイの視線にも気が付いたのだが、リリィの機嫌を取ることがまず最優先だった。

 「クフフ」と笑うとリリィも起き上がる。


 「さて、それじゃあ出る準備をしましょうか。 リリィはいつもの格好ですか? 昨日貰ったヒスイの服を出してくださいね」

 「分かっておるよ、ご主人。 ご主人の分も出しておくかの?」

 「えぇ、今日は家に帰りましょう。 その前にヒスイの服の買出しや武器や防具も見ておきたいのですが」

 「我がマスター、私はこの服が良いのです」


 ヒスイは自分の貸している迷彩服の上衣を指差して言う。 うーんと悩むが自分も絶対に着たい、と言うわけではない。

 しかし、あれを着ないと気持ちがピリッとしないと言うか、なんと言うか、わからないから良いと考える事にする。


 「わかりました。 ヒスイが動きにくかったりしなければ良いです」

 「我がマスター! ありがとうございます」

 「なんじゃ、わっちには何も無いのか」


 しょぼんとするリリィの頭を撫でながらどうするか考えるが、思いつかない。


 「リリィ、君はその服が似合っていると思います。 魅力的ですよ」


 「ご主人! クフフ、クフフ」と笑うリリィである。 機嫌が良くなったようだ。

 ヒスイの着ている崩れていた袖を改めて折り、邪魔にならないようにする。

 2人の準備が済んでから、自分の早速着替えに取り掛かる。

 緩めていた戦闘服のベルトを締めなおし、半長靴に足を通すと紐を編み上げる。

 昔は、苦戦していたのだが、今では一瞬で編み上げることが出来る。

 ただ、靴磨きの様な物がまだ無い為、傷とかが目に付くようになった。

 リリィの汚れを落とす水属性の『クリーンウォーター』が無ければもっと汚れていただろう。

 戦闘防弾チョッキを着込む。 弾倉入れから空になった89式小銃の弾倉を取り出し、リリィに渡す。 ポシェットに入れておいて貰うためだ。

 変わりにM16アサルト・ライフルの30発弾倉を入れていく。 街中では発砲する事もないだろうから、M16アサルト・ライフルには装着しない。

 念のため槓桿を引いて、薬室を確認する。 5.56mm弾は装填されていない。 万が一の暴発も問題は無い。

 弾帯に89式小銃用ではあるが銃剣を装着し、足に紐を使って固定する。 こうしておけば走っても飛んだりしても邪魔にはならない。

 肘当てや膝当てがほしいところだが今は無いから仕方ない。 何か代用品でもあればいいのだが、ゼスト氏にでも聞いてみよう。

 3人で連れ立って部屋を出て広間へ向かうと、アメリア氏はもう出ていていなかった。

 工房も覗くが、ゼスト氏もいない。 信用されているのかもしれないが、いささか無用心ではなかろうか。


 「ご主人、アメリア嬢からの伝言があるの。 『家はそのままでも大丈夫です』じゃと」

 「そうですか、わかりました。 それじゃあ、探索者協会ギルドへ行きましょうか」


 3人で、出店を見回りながら朝御飯を食べる。 リリィは鳥の唐揚げが串に刺さった物を食べ、ヒスイはパンを食べている。

 自分はと言うと、パンと鳥の唐揚げを挟んで食べ始めていた。

 ふと気が付くと、リリィとヒスイがジッと見ている。


 「どうしました?」

 「いや、ご主人よ。 行儀がちと悪くないかの?」

 「えっ? そうですか? リリィお姉様。 私にはとても美味しそうに見えます」


 どうも、リリィとしてはパンはパン、唐揚げは唐揚げと別々に食べる物として考えている様で、ヒスイは生まれたばかりでなんでも珍しい。

 こうして誰かと一緒に食事するのも昨日が初めてなのだと言うから、どんな食べ方でも許容出来るのだろう。


 「それじゃあ、ヒスイも一口食べてみるかな?」

 「よっ、よろしいのですか? 我がマスター


 「いいよ」と言って手渡そうと差し出したのだが、ヒスイは受け取らずそのまま「ハム」っと一口頬張る。

 すると、人が見たら分からないくらいだが顔を綻ばせていた。


 「美味しいです、我がマスター! リリィお姉様もぜひ」

 「むむむ、しかしの。 大人の女としては」

 「リリィがいらないのなら仕方ないで……」


 最後まで言い切る前に「食べる!」とリリィに遮られてしまう。

 彼女にも差し出したが、やはり受け取らずに一口頬張る。


 「これは、なかなか。 うん、美味しいの! ご主人! 大発見じゃ!」

 「さすがは、我がマスターです」


 2人はとても嬉しそうだが、自分は何もしていない。

 ただ、そこの出店で買ったパンに唐揚げを挟んだだけである。 食べやすいようにしただけだ。

 そうこうしているうちに、探索者協会ギルドへと到着した。 今日は、いよいよ探索者証ギルドカードの受領である。

 正直言うと、ワクワクしている自分がいた。 他の2人はどうなのだろうか。


 「わっちは、別になんともないぞ」

 「私は我がマスターと一緒で嬉しいです」


 特にワクワクしていたりはしないようだ。 ドアを開けてはいるとニャッハの街の探索者協会ギルドはまず目の前、入ってすぐの広間の中央には『世界樹の像』がある。

 そこを通り過ぎると、協会の受付カウンターがある。 アメリア氏はいるかと見渡してみるが見えるところにはいなかった。

 その代わり、受付カウンターに見知った顔がいる事に気が付く。 協会へ登録する際に案内してくれた男性職員のガルボ氏だ。


 「おはようございます、ガルボさん。 探索者証ギルドカードの受領に来ました」

 「おぅ、昨日のあんちゃんか。 できてるぞ、お嬢さん2人もおはようさん」


 リリィもヒスイ2人も挨拶を返すと早速本題に取り掛かる。

 今日の目的は、探索者証ギルドカードの受け取りだ。 それ以外にも次に街に来る前に何か出来そうな依頼クエストがあればと思っている。

 次に来るのがいつになるかは分からないが、期間など特に決まっていないものが良いと考える。


 「えぇっと、ナオトと、リリィ、ヒスイの3人分だな。 いいか、無くすんじゃねぇぞ。 再発行にも金が掛かるし悪用されても困るだろう?」

 「悪用出来ないようになっているのでは?」

 「馬鹿だな、どんなもんにも絶対は無いんだよ。 覚えとけ」


 「わかりました」と言って探索者証ギルドカードを受け取る。 

 3人とも特に何も変わったところはない。 銅色とでも言うのか、名前の下に線が引いてありその線の色で階級を分けているようである。

 そして、名前の横には4級と読める文字が書いてあった。 まず一番下からのスタートである。


 「ようこそ、探索者へ。 何か困ったことがあるなら相談にもいつでも乗るからな」


 そう言うと、 ガルボ氏は麻袋を取り出し中から銀貨6枚を取り出した。


 「これは、まぁ、ギルドからの餞別だ。 支度金として支給している分だ。 1人につき2枚あるんだがランクは高くないが武器を買ったり道具を買ったりしろ」

 「ありがとうございます」


 そう言って受け取り、リリィに預ける。 魔法のポシェットに入れておけば大丈夫だ。

 次に、魔石が3つ受付カウンターに並べられた。 Eランクの魔石である。

 これを持って探索者は魔物を狩り、空気中に分散される魔素を吸収し集める。

 探索者のランクが上がれば、魔石のランクも上がる為、貯められる魔素が増えていく。

 そうすれなば探索者協会ギルドが魔石を買い取る際に値段も上がる。

 また、魔物の素材も売れ、探索者の収入源である。 強力な魔物、希少価値の高い魔物であれば金額も上がる。

 迷宮内にしか自生しない薬草や過去の遺産と呼ばれる物を回収できれば、物によっては一攫千金、一夜にして大金持ちになれる。

 魔石は、自分、リリィ、ヒスイの3人で1つずつ持つ。 今はポケットに入れておこう。

 「やりたい事をやれる仕事だ。 犯罪を犯さなければいい。 協会の仕事をお願いすることもあるがね」

 「わかりました。 ありがとうございます、ガルボさん」


 ガルボ氏と別れ、探索者協会ギルドを出る。

 ニャッハの街を回りながら目指すは武器と防具を取り扱っている店だ。

 通りにあったリリィが服を買った店でヒスイの服も何着か買うことにしたのだが、これがまた時間が掛かった。

 母の買い物に付き合った事があるが、女性の買い物とは時間が掛かるものらしい。


 「我がマスター、これ似合いますか?」


 そう言って選んだ服は、リリィとは色違いのゴスロリの格好である。 リリィが選んでくれたそうだ。

 「似合うよ」と言って頭を撫でるととても嬉しそうな顔をするのだ。 ほぼ無表情に近いヒスイの顔の表情は自分にしか分からないだろう。

 「これにします」と言って会計へと向かうヒスイとリリィであった。

 武器と防具を取り扱う店を探してみると、想像したような場所だった。

 頭をそりあげた店主がカウンターからこちらを一瞥する。 自分と女の子の3人を見て「らっしゃい」とだけ声を掛けると武器の手入れをし始めた。

 店内を見渡すと、剣や斧、槍や杖などもあれば盾や鎧など何種類かあるようだ。


 「いろいあるんだのぉ、ご主人」

 「我がマスターは何を買われるのでしょうか?」

 「何か使えそうなものはないかと思ってね」


 学生の頃に剣道を授業で受けたくらいで銃剣道を応用出来ないかと槍を持ってみる。

 長いし、これを持って移動することは可能だろう。 リリィの持つ魔法のポシェットもあるからだ。

 しかし、魔物と戦ったりすると考えた時の取り回しを考え断念する。

 剣術なんてものはそもそも習っていないが、片手で扱えそうな剣を物色していく。

 銀貨1枚程度で叩き売りされた樽の中にある物を1つ手に取るが、どうもしっくりこない。

 これは、自分の使う武器ではないとでも言うような不思議な感覚である。

 89式小銃やM16アサルト・ライフルを使用している時と違う感覚だ。 他にも無いかと思ってナイフなども持つがそれもダメだった。

 武器がダメなら防具は、と考え色々と試すがやはりどれも武器を選んでいる時と同じである。

 これは、自分の使うものではない、と感じるのだ。

 結局、色々と試したが剣、斧、槍や杖のどれもが違う感覚のせいで購入には至らずに店を出た。


 「リリィ、刀を初めて持った時は何か感じましたか?」

 「なんじゃ、ご主人? そうさのぉ、まさにこれはわっちの武器じゃ!と思ったのぉ」

 「そう、ですか……。 自分も店で色々と手に取ったりしたのですがそういうものが無くて」

 「ほんとうかえ? いつものはどうなんじゃ?」

 「訓練でずっと使ってきたせいか、しっくりきます。 これが1番というか」


 どうも、この世界では武器や防具には向き不向きがあるという。

 どれだけ訓練しても使いこなせないのだ。

 しかし、その人自身に合った武器を選べばかなりの使い手になれるという。

 武器然り防具に然りそれは変わらない事だと言い、なぜそうなのか、それは分かっていない。


 「しかし、それもよほどの事での。 例え自身にあった物でなくても違和感を感じる何てこともないんじゃが」


 そうでなければ、探索者なんていう生き方を選ぶには難しいのだ。

 使えるものをなんでも使うという事も多々あるのに、この武器は使えない防具は使えないでは話にならない。


 「我がマスター、発言よろしいでしょうか?」

 「何か知っているのかな、ヒスイ?」

 「この世界のことわりの外から迷い込みし者と呼ばれる方が過去に何度もいらしたそうです。 彼らは皆、なぜか普通出来ることが出来ないそうです」


 その出来ないことと言うのは、文字が読み書きできなかったり魔力が無かったり、武器や防具が装備できなかったりと色々と普通の人とは違う部分があったという。

 だからと言って、なにか特別な力を持っているという事でも無かったという。


 「我がマスターは、私の聞いた事のある迷い込みし者達とは違うような気もします」


 「お役に立てませんで」と言ってしょんぼりするヒスイを撫でる。

 思いつめた表情をしていたからだ。


 「そうすると、弾薬も限られてきますしリリィには頼らせてもらう事になりますね」

 「わっちに任せるのじゃ!」

 「ありがとうございます。 ヒスイは、何か戦う術はありますか?」

 「我がマスターの出来ることならば、一通り出来ます。 ハチキューをお借りできませんか?」



ニャッハの街 西部森内部


 あれから自分とリリィ、ヒスイの3人は街を出て森の中を歩いていた。

 先ほどの話で出たヒスイの、自分の出来る事は一通り出来るという事を実際に試してみることにしたのだ。

 自分と契約しているヒスイには自分やリリィに向かって危害を加えることが出来ない。

 そうする事で問題無いと判断したのだ。 これが良い判断だったらと考えている。

 少し開けた場所に出た。 何か、目標になるものを置くべきか考えたが結局やめた。

 絶対にこちらへ銃口を向けないように、と言い聞かせリリィに頼んで1丁89式小銃を取り出してもらう。

 それに伴い、自分もM16アサルト・ライフルから89式小銃へと装備を変えていた。

 裸のままの5.56mm弾を10発ずつ空になった弾倉へ装填する。

 ヒスイも自分の説明を受けることなく、同じ動作を繰り返していた。 

 弾倉を入れる、弾倉口へ装着し槓桿こうかんを引き、1発目を薬室へと送り込む。

 あとは安全装置を解除し、目標に向かって撃つだけだ。


 「周囲に人の気配は、しないな」


 万が一を考え、周囲へと意識を集中させると人の魔力は自分達3人を除いて感知しなかった。

 しかし、魔物の魔力を捕らえる。 どんな相手かはわからないがその魔物もこちらに気が付いているようだ。


 「おっと、魔物の感有りっ、結構速いな、目の前にくるぞ」

 

 木々の合間を縫って現れたのは、空に浮かんでいた。 スズメバチを巨大化させた魔物のようだ。

 数は3体である。 自分が89式小銃を構えると同時にヒスイも構えていた。 教えてもいないのに膝射の姿勢を取っている。

 


 「射撃許可を!」

 「安全装置切替! 単射、右1、右2は自分が。 左1をヒスイ。 撃て」


 自分と同じタイミングで安全装置の切替金を単射に切替る。 89式小銃から3発の5.56mm弾が発射される。

 弾薬の節約も考えての射撃であったが、相手の防御を上回っていたようだ。

 硬いと思われる外殻を破壊、3体の化け物蜂は地面に転がっていた。 

 

 「射撃止め。 安全装置、弾倉外せ」


 リリィが死んだ化け物蜂の処理をしている間に銃の点検を始める。

 弾倉を外し、薬室を確認する。 自動で送り込まれている5.56mm弾が1発薬室内に残っている。

 これも難なくヒスイは取り出し弾倉へと戻した。


 「私は我がマスターに生み出していただきました。 この身は我がマスターの魔力でこの世に肉体を持つ事ができたのです」


 自分の魔力によって姿を得たヒスイは、自分の持つ戦う術を手に入れていると言った。

 探索者協会ギルドの訓練場でも言っていた魔法が使えないと言うのも、どうも自分のせいらしい。

 魔力はあるのに、魔法を使うことが出来ない。 しかし、現代日本の自衛隊で習ってきた術を見につけているという。


 「あと、私は魔法は使えませんが恩恵というものがあります。 風の精霊の名に恥じないと良いのですが」


 見える範囲らしいのだが、風をある程度自由に調整できるという。

 そうすることで、距離にもよるだろうが、風に邪魔されずに狙撃することが可能である、そうヒスイは言った。

 それが本当なら、かなりすごい事である。 


 「お役に立てると嬉しいのです」

 「かなり良い事を聞いたよ。 ありがとうヒスイ」


 そう言って撫でる自分を見つめる視線に気が付いた。

 化け物蜂を『ファイアボール』で焼却処分したリリィだ。


 「お疲れ様、リリィ。 魔力の補充はどうします?」

 「するのじゃ!」


 そう言うと、リリィは空いている左の手を掴んで人差し指を咥えていた。

 魔力の補充を終えたリリィは離れなかった為、頭を撫でてやる。 なんだか小さな子供をいっぺんに2人も出来たみたいだった。

 リリィは、協会で受けた説明を覚えていたようだ。 外で魔物を倒した際に、魔物の部位を持ってきてほしいとの事である。

 リリィの足元を見ると、化け物蜂の太い針を持ってきていた。 3体分ちゃんとある。

 ご褒美を上げるほど持っていない。 気持ち長く頭を撫で撫ですることにしたのだった。


 「ヒスイが小銃を使えるという事なら、無くなる前にトマル港のゼストさんの弟子に合っておきたいところですね」

 「それなら、このまま行くとするかぇ?」


 リリィの提案に首を振って答える。 どうせならば依頼クエストを受けながらでも良い、と考えたのだ。

 

 「それじゃあ、1度ニャッハの街の探索者協会ギルドへと戻りましょう」


 2人の返事は賛成のようだ。 まだ家には帰れないが、アビーの身体を修復できる人間も探さねばなるまい。

 トマル港にはいったい何が待っているのだろう。 

 M16アサルト・ライフルを残していった人物のように、また、ヒスイの話してくれた迷い込みし者がまだいる可能性も捨てきれない。

 考える事は山積みだが、1つ1つ片付けていけばきっとうまくいくだろう、そう考えリリィとヒスイを連れてニャッハの街の門を潜る。

 

 「どいてくれ!道を開けろっ!!」


 慌てて進路を譲ると、何か攻撃でも受けたのだろうか、ボロボロになった幌馬車が横を通り過ぎてニャッハの街の協会へ従者らしき人物が駆け込んでいった。

 それが、嵐の前触れだと、自分を含めて誰にもまだ分からないのだった。


 いかがでしたか?

 ナオトがこの世界の武器を扱えない可能性とヒスイが89式小銃を使いこなせるという驚愕の事実が判明しました。

 みなさんが楽しんでいただければと思い頑張ります。

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