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異なる世界の空の下で  作者: 亡霊
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探索者協会《ギルド》4 まさかの出会い

 魔法の訓練をしたナオトでしたが、習得にはいたりませんでした。

 しかし、新たな仲間と出会う事になります。

 風の精霊である少女、彼女は『ヒスイ』と名づけられます。

 そんなナオトはいったいどうしていくのでしょうか。

ニャッハの街 探索者協会ギルド


 ニャッハの街の探索者協会ギルド所属の1等武官であるアデリーナ氏。

 スラリと伸びた身長に猫のような顔立ちは豹やチーターのような容姿である。

 スッと鼻筋も通って、獣人の中でも綺麗な顔立ちだ。


 3等武官のアメリア氏はこの街では珍しい自分と同じ黒髪である。

 赤いフレームの眼鏡を掛けていて、身長は160cmくらいだろう。

 スタイルも悪くは無く、美人な顔つきであった。

 

 その後に続いている自分は、どこにでもいるような顔である。 出身が南の方で良く顔が濃いとかホリが深いとか言われてはいたが平凡な方である。

 珍しいのはこのニャッハの街だけではあるが、街中ですれ違った人や獣人は髪の色が黒い人は見たことが無かった。

 唯一、探索者協会職員ギルドオフィサーであるアメリア氏くらいである。

 身長は185cm、体重が最後に計った時が、87kgだったのを覚えている。

 身体は鍛えているから引き締っていると思うが、周囲を見渡せば自分よりも身長は高く、筋骨隆々の探索者はいくらでもいた。

 この世界でも、どこにでもいる普通の男の1人だ。 


 そして、その自分に付き従う2人の美少女である。 1人は、この世界にきて初めて出会った少女だった。 名前をリリィと言う。 自分が名づける事になってしまった。

 百合の花を意味し、花言葉も、威厳、純潔、無垢と言った言葉でリリィはそれをえらく気に入ってくれた。

 出会いは、いきなり噛み付かれ、自分の魔力を吸って気に入ったらしい。

 身長は150cm前後、体重は不明。 赤い瞳に透き通るような白い肌、白い髪。 長い髪を大きな赤いリボンで纏めポニーテールにしている。

 体系はペタンコで凹凸は無いかもしれないが、幼い顔つきをしていてもどことなく妖しい雰囲気を漂わせていた。

 今日もまたピンクと白色を基調としたゴスロリと呼ばれていた服装を身に纏い、同じような色を基調とした日傘を持っている。

 その柄には、刀が仕込まれており白兵戦を得意とする少女だった。

 魔法も幾つか使いこなし火属性の『ファイアボール』、無属性の身体能力を向上させる『ブレイブハート』、水属性の汚れを落とす『クリーンウォーター』、そして今日覚えた風の属性である『ウインドカッター』、『ウインドハンマー』、『ウインドウォール』を使いこなす。

 迷宮にアビーと言うゴーレムの少女と住んでおり彼女はアビーと言う。 今はこの場にはいない。

 本当なら しもべとして契約しようとしたらしいが、何の因果か魔力量を誤り、主従関係が逆になってしまった。

 あまり気にはしていないらしいが、時間が取れたときに契約魔法について詳しい人に解く方法を調べてもらう必要がある。

 

 そして、もう1人の少女。 彼女の名前はヒスイという。

 瞳の色と髪の毛か緑よりも鉱石の翡翠のような色合いだったことと、魔石から生まれたと言う短絡的かもしれないがこの名前を選んだ。

 本人も、気に入ってくれたようである。 生まれたばかりで服を着ていなかった為、探索者協会職員ギルドオフィサーの制服の小さなサイズの物を借りることにした。

 ブラウスの様な上着と緑色のスカートである。 ただ、なぜか自分が掛けてやった迷彩服の上衣を返してくれない。 「もう少し」といわれてそのまま着させている。

 1度、袖を折って上げていたのだがそれでも長いらしく、ヒスイに合わせてもう一度袖を折ってあげる。

 その間、リリィはジッと見ていたのだが、何も言わない。 機嫌を悪くしてしまったかもしれないと頭を撫でると「クフフ」と笑ってくれた。

 身長はリリィよりも頭1つ分ほど低く、顔立ちもやはり幼い。 耳は長く尖っておりエルフをイメージすると良いかもしれない。

 時折、その長い耳がピコピコと動く事があり、触ってみたい衝動に駆られるのだが理性が働きそこまでには至っていない。

 糸目というのか、彼女は瞳が見えるほどは開いていないようであるがちゃんと見えているらしい。 障害物があってもちゃんと避けて歩けている。

 リリィがジッと見ていたりするのだが、ヒスイはリリィより身長は低いがリリィの持っていないモノを持っていた。

 胸である。 リリィよりも大きかったのだ。 リリィも意識しているのかしていないのかチラチラと見ている事から何か思うところがあるのかもしれない。

 しかし、自分がどうこうという事ではないと思い何も言わない事にしていた。

 

 そんな美女、美少女に囲まれている自分は、探索者協会ギルド内で非常に目立っていた。

 至るところから突き刺さるような視線を感じているのだ。 訓練場を出てからすぐにこの視線にさらされていた。

 今までは、自分はいま自分に色々と思うところがあるのだろうか、見ている探索者証の男達。 向こう側の人間だったのだから、堪ったものではない。

 なんという居心地の悪さであろうか、アデリーナ氏とアメリア氏に何か言われているがその視線が気になって上の空のなっていた。

 そんな自分だったからだろうか、急にアデリーナ氏が自分の方に向きを変えたのだ。 それに気付くのが一瞬遅れ、彼女の胸元に顔からぶつかってしまう。


 「へぇあっ!?」


 ずっと凛々しい言葉しか聞いてこなかったアデリーナ氏の可愛いと思う悲鳴に一瞬、ドキッとする。

 慌てて、離れるとアデリーナ氏の顔色までは分からなかったが、耳が世話しなくピコピコと動いていた。


 「話を聞いておらんからだぞ、ナオトさんっ!」

 「はいっ! すみません、お怪我はありませんでしたか?」

 「無いっ!」


 即答だった。 しかし、柔らかかった、と一瞬でも思ってしまったのが運の尽きだったようだ。

 後ろの2人と周囲の視線が殺気が篭りだしたのだ。

 前門の虎、後門の狼、この場合は周囲の虎に後門の狼か? とりあえずまずいことになったようだ。

 アデリーナ氏の後方に控えて立っているアメリア氏の顔も笑顔だが、何かすごい威圧プレッシャーを放っている。

 そんな周囲のことなど気付かないように、アデリーナ氏は「探索者たるもの……」と言うが、早くなんとかしなければいけない。


 「あのっ、アデリーナさんも忙しいでしょうし、すみませんが、約束がありまして。 探索者の登録も早く済ませましょう」

 「むっ? そうか、それでは急がなければならんな。 アメリア3等武官に書類の書き方を習ってくれ。 用意が出来たら係りの者に提出するんだ」


 そういって受付の方へと歩き出すアデリーナ氏である。 一刻も早くこの場から離れなければいけない。

 後ろの2人も謎の威圧プレッシャーを放っており、それを宥めたくてもこの場では出来ない。

 こういう場に慣れた人ならなんとかなったかもしれないが、自分には無理だった。

 射るような視線に晒されながら、探索者協会ギルドの受付に着くと、アデリーナ氏はここでお別れとなった。

 どうも、執務中に抜け出してきたらしく職員が連れ戻しにきていたらしい。

 アメリア氏曰く、「いつもああなんです」だそうだ。 顔に張り付いたかのように笑顔を崩さずにそう言った。

 あれは事故である。 そのはずなのに後ろに控えているリリィとヒスイ、そしてアメリア氏まで威圧プレッシャーを放つのをいい加減やめてほしい。


 「よぅ、あんちゃん! 探索者登録かいっ?」


 先ほど来た時と変わらず男性職員が担当していた。 確か、アデリーナ氏はガルボと言っていた。

 アメリア氏の威圧プレッシャーが消えた。 やっと落ち着いてくれたのかもしれない。


 「ガルボ3等武官っ! ダメですよ、執務中のアデリーナ1等武官がいらてましたよ!」

 「いや、ちゃんと報告しただけだろっ。 なんだ、あんちゃんとの逢引を邪魔されて怒ってっ」


 「怒ってませんっ!」とガルボ氏が言い終わらない内に被せて否定するアメリア氏である。

 しかし、そんな風に否定すると、肯定しているというようなものだ。

 「ひゅうっ」という風に口笛で茶化しすガルボ氏に向かって何かやったのだろうか、こちらからは見えないアメリア氏の表情を見たのだろう。

 冷汗をかき始めて、終いには「悪かった」と謝っている。 ガルボ氏もきっと悪い人ではないのだろう。

 ガルボ氏は、獣人である。顔つきは、虎のようだ。アデリーナ氏とは違う意味で身体も大きく、2mほどだろうか、彼もまた筋骨隆々としている。

 緑の制服がピチピチときつそうだ。 腰には他の職員と同じく杖を下げていた。

 それが、協会の受付に座って事務作業をこなしている。


 「それで、あんちゃんと嬢ちゃん達の3人が探索者として協会に登録でいいんかな?」

 「はい、お願いします」

 「わぁった。 それじゃ、この用紙に必要事項を記入して持ってきな。 アメリア3等武官に詳しくは聞いてくれ。 あんちゃんと一緒で嬉しっ」


 言い終わる前に「何でもない」と訂正した。 あの一瞬を自分は見逃さなかった。 ガルボ氏を見るアメリア氏の笑顔は目だけが笑っていなかったのだ。

 用紙を3人分受け取り、早速記入し始める。 この世界の文字ははっきり言ってなんと書いてあるのかはまったく分からない。

 英語でもあるような、日本語でもあるような一定の法則はあるようだ。 しかし、その意味が分かるし読み書きが出来るのだ。

 不思議な力が働いているようであるが、これにはかなり助かっている。

 アメリア氏も横で何かあればと待っていてくれる。 しかし、どう見ても名前と年齢、出身地を書くところしかない。


 「あの、これって名前と年齢、出身地しか書くところがないようですが?」

 「はい、そうです。 それだけ分かればこの紙は十分なんです。 えっと、失礼ですが字は書けますか?」

 「えっと、大丈夫です」


 字さえも、自分の知っている日本語で書いている。 しかし、書いた後はこの世界の住人でも分かるように変換されるようだ。

 特に困ったことはない。 どうも、アメリア氏の言葉だと識字率があまり高くないのかもしれない。

 リリィ、ヒスイも書き終わったようだ。 紙を一纏めにすると気が付いたことがあった。

 書いてある字はそのままで見える。 リリィは、こちらの世界の文字。 ヒスイは自分と同じ日本語になっている。

 視線をヒスイへと向け、指で文字を指す。 首を傾げておりこちらの意図が伝わっていないようだ。

 後で確認することにしよう。


 「皆さん、記入を終えたようですし早速提出しましょう」


 アメリア氏についてガルボ氏の元へ向かう。 用紙を受け取ると、ちゃんと掛けているか確認してくれている。


 「ナオトにリリィ、ヒスイね。 3人の出身地は……。 ニホンってのはどこのこった?」

 「えっと、ここからだいぶ遠いと思います。 多分知らないかと」

 「ふぅん、まぁ、いいか。 それじゃよ、早速だが1人ずつ手を出してくんねぇか」


 3枚の用紙を並べ、その上に来るように手を出すようにとガルボ氏は言う。

 小瓶を取り出すと、3人の人差し指を拭いていく。 リリィとヒスイはなんだろうと言うような目で見ているが、自分は気が付いた。

 これは、消毒液の匂いだった。 


 「それじゃ、ちょっとチクッとすっが」


 反応するよりも早く、ガルボ氏の手が動いていた。 3人とも指先にチクリとしたと思うとプックリと玉のような血が浮いてきたのだ。

 ガルボ氏はいつの間にか、探索者協会ギルドの紋章の入った錐の様な道具を持っている。 あれで刺したんだと思うが心の準備もしていなかったからあっという間の出来事だ。


 「良し、それじゃあ、それを書いてもらった用紙にある探索者協会ギルドの紋章の上に血判を」


 リリィもヒスイも納得できないと言う顔だったが、自分がやったのを見て渋々と真似して指を紙に押し付ける。

 魔力が紙に流れ込むのが分かった。 身体から少量だが抜けたのがわかる。 リリィもヒスイも同じように感じたようだ。


 「よぉし、これで登録は完了だ。 探索者証ギルドカードはこれから発行でな。 明日の朝には出来てっから、また受け取りに来い」

 「わかりました。 何か拭くものありますか?」


 先ほどから、血の出た指をリリィだけなら分かる。 多分、魔力が漏れているから勿体無いと思っているのだろう。 あわよく貰いたいとも思っているかもしれない。

 しかし、ヒスイまでもが指先をジッと見ているのはなぜなのだろうか。 ヒスイはまだ分からない事が多すぎる。

 それを言えば、リリィもそうなのだが、もう主従関係だからかあまり気にしていない部分もある。

 また、一緒に迷宮の掃除もしたから信頼が生まれていると思う。 しかし、ヒスイはまだ出会ったばかりだ。

 色々話してお互いに知っていかなければならない。


 「それじゃあ、今日は1度アメリアさんのお家に帰りましょうか。 待たせてしまっているかもしれません」

 「わかりました。 それじゃあ、戻りましょう」


 探索者協会ギルドを4人で出ると、もう陽も暮れ始めていた。

 誰のお腹かは分からないが、「ぐぅ」っという音が響く。 プルプルと震えているのでリリィなんだと思う。

 顔を真っ赤にして俯いているから間違いない。


 「うーん、お腹も空きましたね。 どうしましょうか」

 「それなら、今日も家に泊まっていきませんか? 私が魔法の練習をと誘ったんですし。 今からだと宿も取れないと思いますよ」

 「アメリアの夕餉かぇ? うん、そうしようではないか! のぅ、ご主人」


 さっきとはうって変わったかのようなリリィの笑顔である。 「クフフ」と笑うリリィを表情の分かりづらいヒスイが眺めていた。

 初めて会った時は口角が上がっていて微笑んでいたようだが、今はどちらかと言うと無表情にも思える。 でも、無愛想には思えないから不思議だ。

 何となく、表情が分かるというのか自分でも自身は無いが、そう思えるのだ。

 

 「ヒスイもお腹、空かないか?」

 「はい、我がマスター。 なんでしょう、お腹が空くとはまだ良く分かりませんが、お腹がグゥッとします」

 「あはは、それが空いたって事だと思う。 うーん、自分も上手く言えないけれど」

 「それじゃあ、私の家で是非。 腕によりを掛けて作っちゃいますから」


 「楽しみにしています」とお願いする。 鍛冶師であるアメリア氏の祖父であるゼスト氏ともついでに話せるから助かった。



ニャッハの街 アメリア実家 ゼスト鍛冶屋


 アメリアの家に着くと、ゼスト氏が待っていた。 玄関先でである。

 待たせてしまっていたようだ。


 「ゼストさん、お待たせしてすみません」

 「待ってない。 入れ」


 そう言うと、家の方の玄関ではなく工房へと入る入り口へと向かっていた。


 「それじゃあ、私はご飯作ってます。 もしよければリリィさんとヒスイさんも一緒にいかがですか?」

 「なんじゃと! わっちは料理はダメなんじゃ」

 「料理、作ったことありません」


 リリィとヒスイに近づき、何か話すアメリア氏である。 何を聞いたかは分からないがリリィとヒスイの顔色がパァッと華やいだ気がした。

 「クフフ」とリリィは笑い、ヒスイはグッと両手を胸の前でグッと握り、何か頑張ろうという意思表示をしている。

 アメリア氏に2人を任せ、自分はゼスト氏の後を追って工房へと進む。

 工房の中に入って目を引いたのはやはり様々な武器防具だ。 ゲームや物語などで得た知識くらいしかないが大剣や短剣、杖や槍と言った武器や胸当てや篭手、具足などもある。

 飾りの付いた兜や重そうな盾もある。 物珍しそうに見ていたからかだろう。 ゼスト氏が笑っていた。


 「なんだ、初めて見たかのような顔じゃの」

 「あっ、えーっとそうですね。 自分は銃剣ナイフを使ってきましたから」


 ゼスト氏は、アメリア氏の祖父との事だが見た限りは40代くらいにしか見えない。 自分よりは身長も一回りほど低いのだが引き締まった身体であるし背筋もピンとしている。

 そんな、ゼスト氏が「フン」と鼻で笑った。


 「お若いの、いかんなぁ。 嘘じゃろ」

 「えっ?」


 咄嗟に誤魔化せなかった。 

 

 「今日は腰のソレ以外はもっておらんようだが、わしの目は誤魔化せんの。 肩に掛けておったあの黒い棒みたいなのが武器なんじゃろ」

 「もしあれが武器だとしたらどうします?」

 「少し、昔話に付き合ってもらうだけじゃ」


 ゼスト氏が若かった頃、今から30数年前と言うがニャッハの街に独立しで鍛冶屋をと小さな工房を構えた事の話。

 ある1人の青年が鍛冶屋に寄ったという。 「これと同じ弾を探している」と言っていたそうだ。

 その時にその青年からそれが「銃」と言う武器だという事だと聞いた。

 火薬の使って弾を飛ばし、敵を倒すと言う今思い出そうとしてもそれくらいしか思い出せないそうだ。

 ただ、そういう武器なんだと説明されたと言う。 そして、ゼスト氏に「弾を作ってほしい」と依頼したそうだ。

 しかし、そう簡単にはいかない。 銃と言う武器自体が始めてである。

 弓矢やクロスボウなど投げナイフと言った離れた敵に対する攻撃手段はありそれらを修理したり、オーダーメイドで作ったりもしたことがあったそうだ。

 しかし、遠距離への攻撃は魔法で片がつく。 よほどではない限りは聞いた「銃」の性能も信じがたい。

 だから、断ったのだと言う。 しかし、魔法を使わず弓やクロスボウより遠くの敵を倒せる武器と言う物を何とか作れないかと挑戦したこともあったそうだ。

 しかし、筒状の物を作り、それを火薬を仕込んで弾を飛ばすという事は出来たが聞いたとおりの仕様にはならない。

 そんな折、あの青年が死んだという事を風の噂で聞いた。 探索者になったとも聞いたのだが、「銃」の噂は聞かなかった。

 そんなゼスト氏の下に探索者協会ギルドから職員が来る。 

 「何かあった時に世話になったゼストにこの包みを渡してほしい」という遺言があったそうだ。


 「その包みがこれじゃよ」


 そういって、工房にあった道具箱の様な物を開けると中から布で包まれたある物が出てきた。

 1mほどの長さの物と、小さな鞄が出てきた。


 「この箱は、保存の魔法が掛かっておっての。 腐敗や浸食なんかもこれに入れておけば起きない」


 そういって、作業台にそれをソッと置く。 こっちに来い、とゼスト氏に促され作業台の傍に立つ。


 「これらは、ワシの研究にでも役立ててくれと遺言があったそうじゃ」

 「こっ、これは……」


 包んでいた布を開くと、中から出たのはM16アサルト・ライフルだった。 米国で採用されたアサルト・ライフルで合同演習の際、何度か触らせてもらっていた。

 型式までは分かりかねるが、手で掴んで運ぶ部分、提げ手の部品が取り外せるようになっている事からM16A4だと思われる。

 もう1つの鞄の中からは弾倉が30発弾倉が4つ出てきた。 4つ全ては5.56mm弾が全て装填されており120発分がある。

 それに、弾倉に入っていない5.56mm弾が5発ずつ麻紐で纏められており、60組の計300発が収納されている。


 「ワシの見立てたとおりじゃの。 まぁ、その男と色は違うが似たような格好で来たお主をみてピンと来たのじゃ」

 「しかし、これを自分に見せてどうしろと言うのですか?」

 「その男は遺言でこうも言っておったのじゃ。『必要な者に渡してくれと』な。 ただそれだけじゃよ」


 さすがに試射したこともない小銃である。 手にとってみると多生89式小銃よりは全長が長い。 使えなくは無さそうだ。

 弾倉を1つ作業台から取り上げ、弾倉口へと挿入する。 特に何の抵抗も無く装着することが出来た。

 槓桿こうかんを引き弾倉から初弾を5.56mm弾を装填する。 ここまでやって問題はないようだ。


 「あとは、実際に試射してみないと使えるか分からないですが、問題無さそうにも思えますが、どこかで試してみます」

 「それなら持っていくといい。 こんな物騒なもんをいつまでも持ってられんしの」


 リリィの持つ魔法のポシェットはリリィしか物の出し入れが出来ない。

 しかし、ゼスト氏の所有する収納箱は誰でも干渉することが出来るそうだ。 

 ナオトと言うこの武器の使い方を知っている者が現れたのだから、いつまでも置いてはいけないと言う。


 「弾はまだ、ありますか?」

 「ワシよりも、弟子がいたんだがの、あやつが弾の方を作成できたのじゃ。 あやつならなんとかなるかもしれん」


 ニャッハの街にはもういないらしいが、修行を終え独立すると出て行った、街を出てトマル港で鍛冶屋をしているらしい。

 今あるだけで、420発も手に入ったのは幸いだったが、必要に絶対になるのだから補給する事が出来るようにしたい。

 今はこれだけ手に入っただけでも十分ではある。 節約しながら、トマル港へと向かえれば弾薬は何とかなるかもしれない。


 「おぬしなら、これを上手く使いこなせるんじゃろ? あとは任せるからの」

 「間違った使い方にならないようにしたいと思います」


 弾倉を取り出し、薬室に残った5.56mm弾も排出するとまた弾倉へと戻す。 ゼスト氏がM16アサルト・ライフルの入る袋へと入れる。

 鞄にもまた同じように中へと入れると、両方を自分へと差し出す。 それを受け取ると工房の扉をノックする音がする。


 「お爺ちゃん、ナオトさんっ、ご飯が出来ましたよ~」


 アメリア氏が、エプロン姿で現れる。 ご飯が出来たという事だ。

 貸し出してくれた部屋に寄って、M16アサルト・ライフルと5.56mm弾の弾倉4本と300発分の弾丸を置いてから部屋を出る。

 みんなの待つ部屋へと向かうと、テーブルに色々な食材を使った料理が並べられていた。

 「クフフ」とリリィは笑っており、ヒスイはなんだかソワソワとして落ち着かない様子だ。


 「さぁ、それじゃあみんなで食べましょうか」


 アメリア氏の一声で、みなが思い思いに食べたい料理に手を伸ばす。

 と思ったのだが、リリィとヒスイが自分の方をジッと見ている。 そういえば、彼女達が作った料理がどれか分からない。


 「2人がどれを作ったのかな?」

 「秘密じゃよ、ご主人」

 「我がマスター、私はこの芋を蒸かして潰した物を作りました」


 ヒスイは「ポッ」と言いながら両手を頬に添えて照れている。 顔は無表情のままではあるが、自分にはなぜかそれが分かる。

 リリィも釣られて「わっちは、このサラダじゃ!」と言って、2人が自分の前に料理を差し出してきた。

 まずは、リリィのサラダから一口食べる。 レタスのような野菜にトマト、水菜だろうか。 日本でも見た様なサラダである。

 ドレッシングも美味しい。 どこと無く和風ドレッシングの様な味である。

 次はヒスイの作った料理だ。 マッシュポテトに近い味だ。 どれも美味しく出来ていた。


 「リリィのサラダも、ヒスイのポテトも美味しいですよ」


 「クフフ」「ポッ」とリリィとヒスイ2人は照れていて、2人の頭を撫でる。

 2人が席に戻ると、鶏肉を煮込んだ料理を持ってアメリア氏が自分の皿へと取り分けてくれた。

 アメリア氏は自分の耳元へと口を近づけると小声で言った。


 「2人も頑張ってくれたんですけれど、ちょっと失敗しちゃって。 私が話したことは内緒ですよ」

 「わかりました」


 こうして、楽しい団欒は過ぎていくのだった。



 

 いかがでしたか?

 魔力はあるのに魔法を使うことは出来ないというナオトですが、過去に同じ世界から来た人物が残していったM16アサルト・ライフルと5.56mm弾が手に入りました。

 新たな情報も手に入れた事から、次の目的地も決まったようです。

 まだまだ書き手が経験不足ですからご意見、ご感想お待ち致しております。

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