1.何か違う今日
「私は幼なじみってやだな」
学校へ行く途中、ゆかりが突然言った
「え?」
おれは思わず目を丸くする
「だから幼なじみがなんだかたまにいやになっちゃうときがあるの。雄太はそんなことない?」
「ん〜ねぇな」
少し考えて俺は笑顔で答えた
「そんな幼なじみとかさぁ、考えたってしょーがないっしょ。幼なじみってのは昔から遊んでるやつらのことをいってるだけ。まぁ俺はあんまり気にしねぇタイプだけどな!」
ゆかりはうつむいたまま
「そっか」
とだけ答えた。しばらくして顔を上げ
「なんか雄太に話したらスッキリした!ありがと!じゃっ!私は先行くね!」
ゆかりはそういうと走って学校の方へ行ってしまった
「ふぅ〜〜っ、幼なじみかぁ〜、そーいや考えたこと無かったけど俺とゆかりって幼なじみだもんな」
なんて一人考え事をしながら俺も学校へと急いだ
学校につくと廊下の奥の方からなにやら事件のニオイがした。こっそり覗いてみると髪を金色に染めた3人組が一人をとりかこんでいる
俺は迷った
ここから逃げ出すこともできる
でもみてしまっている以上、逃げるわけにはいかない
俺は飛び出した
「おい。やめろ」
飛び出しておきながらこれだけ冷静さを装うのに苦労したのは初めてだった
「あん?」
一人金髪が──っていっても全員金髪なんだけど──こちらを向いた
それにつられて残りの金髪も。取り囲まれていた少年は泣きそうな顔でこちらをみている
この3人組はどうやら1年生のようだ
「いじめはやめろ。あとでめんどうなことになるぞ」
これが今言える最大の言葉
「先輩〜いじめじゃないっすよこいつがわけわかんないこと言ってるから聞いてやってるだけですよ。事情聴取ってやつですよ」
「事情聴取はけーさつのやるこった。お前らさっさと教室に戻れ」
「はぁーい」
金髪たちは俺をにらんでから教室へもどっていった
「あ、ありがとうございます!」
いつの間にか目の前にさっきまで泣いてた少年がいた
「おぅ大丈夫か?ってかお前もあんな奴らに負けんなよ」
俺はそれだけいって階段を上がりかけた。すると少年が
「あの…名前を聞かせていただけませんか?」
「いいけど名前きくときゃ自分から名乗るのが筋だろ?」
「あ、すいません。僕は望月翔太です!」
「俺は中田雄太。翔太なんてかっこいい名前してんだからもぅ泣くんじゃねぇぞ」
俺は今度は本当にそれだけいって階段を上がっていった