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短編集

私の決意

作者: 緋乃円

 ―――放課後。

 図書室で委員の仕事が終わって廊下へ出たとき、ふと窓の外へと眼をやってすぐに後悔する。


 窓の外、校門へ続く道を歩く君と君の恋人を見つけてしまった。



 幼い頃からずっと近くにいたキミは、私にはとても遠い存在だった。


 物心ついた時には私はもうキミの傍にいて、それからもその距離は変わらなかった。


 だから、キミが誰に恋をして、けれど叶わないと諦めていたのを知ってる。


 だって私が一番近くでキミの恋を見てきたんだから。そして、私という存在がキミの恋を邪魔していることにも気づいた。


 何度、キミの隣に立ちたいと願った少女たちに同じ言葉を投げかけられ、同じ言葉を返しただろう。


 ―――”ただの幼馴染だよ”なんてもう言い飽きてる。


 幼馴染という理由だけでキミの傍にいることを罵られて、恨まれたことは幾度とあった。


 キミはそのたびに私のことを庇ってくれたけど、全部君に関係してたんだよ?君がいたから、私はこんな惨めな思いをしてたんだよ?


 そんな風に君に文句を言っても、今さら嫌いになれるわけなかった。



 ―――誰よりも、キミが好きだったから。



 誰よりも長く、キミの傍にいることが許された私。キミを一番理解しているつもりだったけど、それは違ってたんだね。



 ―――だから私じゃなくて、彼女が君の隣に立っているのでしょう?



 キミは鈍感だから、私の気持ちなんてこれっぽっちも知らない。だからようやく叶った初恋を嬉しそうに私に教えてくれたんでしょ。


 だからこそ、キミのことを意識してるって気づかれたら終わりなんだ。


 いつだったか、キミと遊んでいた時に私が怪我をして、そのことにキミは私以上に泣きじゃくって、『もし怪我の痕が残ったら僕のお嫁さんにしてあげる』なんて言ってたの、キミは覚えてないだろうなぁ。


 まあそんな約束、忘れてくれてたほうがいいけどね。


 キミに大切な人ができたから、私はキミから逃げたかった。でも、逃げられなくて、離れられなくて、それでもこの想いは叶わない。


 そこから逃げ出す勇気も、一歩踏み出す勇気も私にはない。


 だから、いつだってキミの傍にいたのに、キミを守るのも傷つけるのも私じゃない他の誰かで、私はそんな喜劇の傍観者だった。


 ”好きだよ”なんて小さい頃から言い馴れた言葉は、キミとっては冗談でしかなくて、その言葉に込めた想いにキミは気付かない。


 もう傍にいられない私がキミにしてあげられることはあと一つだけ。



 ―――キミが望む限り、ずっと、キミが大切にしてくれた幼馴染でいること。



 忘れないで。私はずっと、キミの傍にいるから。



 END.


 お題サイト:『確かに恋だった』様より

       報われない幼馴染10題

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