天然悪女が企むは甘味事
コメディって難しい(。•ﻌ•。)
でも、私にとって良い息抜きになってくれます。
なので、かきつづけまっす(๑• ̀д•́ )✧+°
静まり返った、広すぎるこの空間に一石を投じてくれた勇者は女王様でした。
「オーホッホッホッ!!」
…え?まさかの高笑い?
「まさか【乙女の方】がこの様に、相応しい方で嬉しく思いますわ」
話ながら、甲冑の人達をモーゼの奇跡の様に従えていく様は、上から見下ろしている私にも圧巻で…思わず聞き逃すところだった。
「【乙女の方】?」
「そうですわ。初めまして正真正銘【乙女の方】。私、王の第一婚約者で、スィトリンヌと申します。今後、宜しくお願い致します」
目の前で軽く腰と膝を折り、下げた頭の額にすくい取った私の手の甲を付け、もう片手で自身のドレスを、ちょこんと摘まみ腰の辺りまで持ち上げる。
軽く下げただけなのに、流れ落ちる黄金色の髪は腰まで流してあり、サイドをゆるく結わえ後に纏められているので顔にはかからず、小顔の顎ラインが出ている。うっすら微笑むだけで魅力的な形の唇は厚すぎず薄すぎない。西洋的な高い鼻に切れ長の瞳。色は地球では有り得ない明るい黄色で宝石の様に輝いていた。
正直ここまで綺麗な人は初めて見た。人を、自然や物のように綺麗だと思ったのは初めてだ。自分の美的感覚がおかしいのかと思っていたので、尚更嬉しい。
しかも、女の子ーー!!!きたーーーー!!!
苦節20年。どこまでも同姓との相性が悪くて友人は異性ばかり。私だって、女の子とキャッキャウフフしたい!女の子ならでわな、会話を楽しみたい!!
「…ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
感極まって、泣けてきた。何とか笑みを浮かべてお礼を言った。まだ油断は出来ないけど、ここまで歩み寄ろうとする人は久しぶりだ。何とか仲良くして、あわよくば男避けにもなって欲しいな〜美人さんだし。
キュッと手を握り返し、何とか仲良くしてもらおうと想いを込めて見つめる。
見つめる。
見つめれば…
見つめるとき……
ん?返事がない。何か粗相でもした?!手を握ったのがダメだった?
ソロっと、手を放すとビクッ!ってなったスィトリンヌさんに、こっちもビクゥッ!!ってなる。
「これ…で、男に…ぅみ…なぃなん……。ぁ欺ょ。それに……私は女……。この私が、ひ……ぃかれ…るじょせぃ何て……いるわけ………ブツブツ」
すでに圧巻された時の様な威厳はなく、俯いたままスィトリンヌさんは、フラフラとこの空間から出ていってしまう。
仲良くすべき相手なのか、考慮の必要ありと結論付け見送ったあと、恐る恐る聞いてみる。
「あの【乙女の方】とゆうのが、私に与えられた役目でしょうか?」
すると、爽やかなイケメン風で20代後半位の男性がニコニコと教えてくれた。
曰く、存在するだけで良いそうだ。
立ち話もなんだからと、取り敢えずおちつける場所にと言うことで、移動する事になった。
「いつまでも、注目され続けるのは、気持ちの良いものではないでしょう?」と促してくれた爽やかイケメンに、ホッとして笑顔でお礼を言った。
正直、慣れたつもりでいたが、知らない世界で非日常な空間と人達に囲まれてると昔を思い出すから、変な汗が出てくる。
話し合いの席に着いたのは、5人。その中に、さっきのオウジサマっぽい人もいて、顔は青ざめたままだ。大丈夫かなこの人。思わず観察するように見てしまった。本当はスィトリンヌさんも参加する予定だったけど、『気分が優れない』らしい………もしかして私のせいかな。あの時まで普通だった気がするし………。
でも、私もそろそろチャージしないと気分がスグレマセン。
そんなことを考えてると、お茶を用意してくれた女性が部屋を出て行った。
「まず、貴方はどの様に理解してますか?」
「は?(まず自己紹介とかじゃないの?)」
どうしてこんなに緊張感漂ってるんだ?とキョトンとしながらも、限界に近かったので端的に答えた。
「この世界の為に連れて来られた??」
宙をぼうっと見ながら、何とか考えをめぐらす。
「違和感は無いの?」
初めて発言した人物に視線を向けると、まだ10代半ばほどの白髪の美少年がビクッてした…。なんなんだろう?ここまできたら、私だっておかしな事に気付く。皆、私と目が合うと怯えてない?ムッとしながらも答えた。
「異世界に来てる訳だから、違和感と言えば全て違和感ですよ」
シィィーーン。
本当にそんな音が聞こえて来そうなほどの痛い沈黙の中、オウジサマが意を決した様な顔をガバッっと上げて発言した。
「そっ…そんにゃににっ…嫌か?!」
……………………………………。
更なる、無言に包まれたと言うのに皆さんの顔は思わしくない。
何で?!今の笑って良いところでしょ?!!いい大人の美青年が“そんにゃににっ”とか言っちゃったんだよ?噛んだよ!
誰もが悲痛な顔をしてるので、何とか笑いを噛み殺すけど限界に近くて、言うことのきかない口を両手で被い顔を逸らした。
「すみません…貴方を悲しませるつもりは無かったんですが、まさか貴方のような【乙女の方】がいらっしゃるとは、思いもしなかったものですから…」
爽やかイケメンに、何だか凄くフォローされてる…。何で?
「本来【乙女の方】とは、この世界の守り神のような人の事で、存在してくださるだけで良いんですが、最終的には家族を持ってこの世界に残るのがセオリーなんです」
「《残る》って事は《帰る》っていう選択もあるんですか?」
今度は全員が、一斉に顔をあげたので、私の方がビックリして肩が跳ねる。視線を散らす様に、お茶に口を付けた。
「そう…ですね。実は今回では、貴方は3人目なんです。前の2人は文化的に合わなかった様で、帰りたいと……」
「やはり、貴方も帰りたいですか?」__そんな台詞はもう私の耳には入らない。
な、に…このお茶っ。凄い!
「あの!これって普通なんですか?!」
「は?…はぁ、まぁ普通のお茶ですね」
そう言って、皆確かめる様にお茶を一口含む。
「これが、普通の世界……」
真剣に考え込む私に、私の周りで皆がオドオドしてるけど総無視だ。
「本来でしたら王族に連なる者との結婚が望ましいのですが…今回の【乙女の方】には辛いかと…なんせ、今はすっかり男系でして……ですから留まって頂けるだけでも充分です!お願いします!!」
爽やかイケメンが頭を下げ、他の人達も次々と下げ、最後にゆっくりとオウジサマも下げた。
その様子を見て、自分の口元がつり上がるのを感じた。
どうやら、無理に結婚する必要はないらしい。
どうやら、なんとしてでも存在して欲しいらしい。
と、ゆうことは簡単に殺される事はなさそう。
いろんな事が、天秤に掛けられていく。
どっちにしろ、私帰れないし。
特に帰りたい事もないし。
何よりも、このお茶!これなら、他も絶対期待出来る!!
「分かりました…少し淋しくなりますが、代わりに私を必要としてくださる方が沢山いて嬉しいです。どうぞよろしくお願いしますね」
これからの、食文化を考えると惚けてしまいそうになる頬を何とか叱咤して皆にくれぐれも、私を餓死させないよう、宜しくお願いした。
最後の一口は冷えていても美味しく、幸せな甘味が口に広がった。
ここまで読んでくださりありがとうございますm(__)m
近いうちに、またお会い出来ますよーにっ(*º︶º*)♡