自称神様の回想録
フィクションです。
彼女がこの世界に誕生したとき、世界が震撼した。
いや、本当に。あちこちで、地震は起きるわ。火山は噴火するわ。多分小さな島はいくつか沈んでしまったんじゃないだろうか。大きすぎる存在に地球の神々はおののいた。弾みで揺れて沈んだ…。
人間のはずなのに、まるで我々と変わらないレベルだったからだ。魂も、我々の管理するものと違っていた。
戸惑いながらも、緊急集会を開いた。なんの導きか(いや、どちらかというと導く立場なんだが)知らないが、彼女は日本人だった。
『どうなっておるのだ。貴国は』
『面白い娘が出てきたわね〜』
『産まれただけでこの騒ぎ。心配しなくともすぐに消えるのでは?』
『見目も良いんだろ?もう、俺らと同じにしちゃえば?』
『ですが、少し魂が歪では?』
『あんたん所多神教だろ?一人ぐらい増えても良いんじゃね?』
取り敢えず、神様が集まってもあんまり話し合いの意味が無いことが今回初めて分かった…。
日本の神々だけでどうにかするしかないと、落ち込んでいると、声をかけられる。確か中国辺りの神か?幼いなりをしているが、先神だ。
『のう、お主。そのむすめごはどの様な容姿じゃ?』
『容姿、ですか?何せ、まだ赤子ですから最終的にどうなるかは、わかりませんね。ただ、素材が良すぎます。あのレベルの人間は、地球上では遺伝子的にもないですね。我々と同レベルなんですから。可能なのは、地球より格上の…………ぅぁああああああっっ!!!やられたっっ!』
答えていくうちに、心臓がバクバクしだして、遂には破裂するかと思った。思い当たってしまった。考えたくない可能性に。
つまり、こうゆう事だ。
地球と言う世界は少々特殊な世界なのである。
まず、宗教が多すぎる。あくまで別世界と比べれば、だが。それだけ多種多様な考えが生まれ、異世界から見ると珍しいそうだ。
魔法や精霊、神と言うものを日常からここまで切り離したのも地球ならでは、と言えるだろう。
後は、生命力の強さだ。といっても寿命ではなく、魂そのものの強さ。転生の環の強制力が半端ない。
簡単に言うと、異世界では、転生と言う言葉事態存在しない所が殆どで、あり得ても、能力在るものやその世界の神に特別扱いされてる者に限る。それだって、数えるほどで環は無くなり、魂は消滅され新しいものが産まれる。
一方、地球では転生を何度も何度も繰り返す。勿論記憶は無いが、たまに覚えている者もいるな。
幾度と使い回される…と言うと、神聞きが悪いが、それだけ強く丈夫なのだ。
中でも、日本と言う国は、特におかしい。
ポコポコと神が産まれる。最近ではそうでも無いが、これは地球上でも異常だった。
何百、何千年前だったか。何処かの世界の神に言われたんだ。
『高位の人間余ってるなら頂戴よ』と。
まぁ、あの時の俺は若かったんだ。2つ返事で了承した。
別に待遇が悪い訳じゃなかったし、送る人間も一応選んだし……。
『じゃが、そのツケが今も続いているのであろう?』
『ツケ何てとっくに払い終わってますよっ!もうここまで来たら誘拐罪で訴えれますよ!』
そう、異世界で日本人仕様は、一種のステータスになってしまったのだ。
先ず、黒髪は珍しい事も無いが少ない。あったとしっても、暑い国の民族に多いようで日に焼け傷みが酷かったり癖の酷い剛毛だったりする。その点、日本人は、古来から艶やかなストレートが常であった。最近では色々だが、ケアが半端ない。
そして黄色人種。今の所、異世界では発見されてない。更に童顔。これだけならば、日本人でなくとも良いような気もするが、性格も関係してくる。
日本人特有の愛想笑いや、相手に合わせるスキルがどうも、向こうで暮らしていきやすいようだ。
因みに、最近では美白が良しとされる傾向にあったり、営みも変わり、白い陶器のような肌に艶やかな黒髪(軽く波打っても良し)が人気だ。
何より、日本特有の文化により本人達も受け入れ準備が万端過ぎる。もしくは、順応能力が高すぎる。
と、まぁ色々話したが、諸々の原因で、異世界の神々がすぐにさらっていく。
どうして、止めないのかと言われても、今さらとしか言いようがない。
何より、渡った者は大概満足しているからだ。
決して、魂が余って飽和状態だからとかではない。
『でも実際、うちの子達は逞しいわ〜』
『そうですね、新しい魂創るのめんどくさくて、少し忘れてた間に自分達で循環してましたしね』
『そうだよなぁ。魔力どころか精霊の力も借りず、それなりに暮らしてるの見たときはびびったわ』
『逆に感謝して欲しいくらいですよ。最低限の干渉におさめたから、強くなれたのでしょう』
『うむ、一理あるな』
………とどのつまり、強く完璧な物を欲しくて、異世界の神が卵を置いていったのだ。孵化する頃に迎えに来るつもりだろう。
何てはた迷惑な!と考えてた頃は平和だった。
魂をもとに調べてみると、地球よりほんの少し格上の世界の神の仕業だった。
強制送還も出来ない。
俺たちに出来る事はいつか来る日まで、娘が地球に影響を与えないようにする事のみ!
娘が成長する度に大変だった。
父親に溺愛され過ぎて親の不仲につながり、離婚。
幼児の武器を最大限に使い、大人も子供も陥落していく。
何より本人に自覚がないのが不味かった。
小学生ではもういくつも修羅場を切り抜けた経験を持っていた。
異性をその気にさせておきながら、何もなかった様にスルー。
何せ、本人には元々そんなにつもりがないのだから。
期待させて落とす何て無意識だ。
仕草一つ、目線一つで意のまま。まるで、やめれない毒だ。
どんどん増えてく信者。
どんどん高くなる死亡確率。
実際、いろんな人間の人生や運命が変わってしまい、後処理に追われ、少し目を離した隙に刺されてた。
勘弁してくれ!
もう我慢の限界だっ!て叫んだらやっとお迎えが来た。
あぁやっとか…こんなに、長く感じた20年は初めてだ。とっとと引き取ってくれ。2度とこんなことはするな。彼女にもとっとと行ってもらった。
彼女が居なくなって一年。あの日々が嘘のように穏やかだ。
少し淋しさを感じるのは後遺症。
たまに、思い出して物思いにふけてしまうのを考えると、やはり俺も神なのだろう?我が子が巣立てば、行く末が気になって当たり前。
彼女は幸せになっただろうか?
ここまで読んでくださりありがとうございますm(__)m
あれっ?これジャンルコメディだよね?