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「……ヴィオに迷惑じゃない?」
「迷惑なわけないわ! 私がやりたくてやっているの。寧ろね、友人であるあなたの窮地を知らないままに、このまま会えなくなる方がずっと嫌」
不安そうなオーロに私はそう言って笑いかける。
これは本心からの言葉だ。私はただ、友人であるオーロを放っておきたくないだけなのだ。
「……私、今、周りから良く思われていないの。私と一緒に居たら、ヴィオだって悪く言われてしまうわ」
「それも構わないわ。あなたが周りからどういわれていても、私はあなたがそんな扱いをされるべき人間じゃないって知っている。どうにでもするから、辛い時ぐらい私に頼って甘えてくれていいの。代わりに、私が悩んだ時は相談に乗って。それだけでいいの」
オーロはあまり人に頼ったり、甘えたり出来ないタイプなのかもしれない。
私は末っ子で、周りから散々甘やかされて育った。身内にはとことん甘えることもある。それに比べてオーロは長女で、家庭環境からあまり周りに甘えたり出来なかったとも調べはついている。
もしかしたら一人でなんとかしなければならないと全て抱えてしまっていたのかも。
周りに手を伸ばしてくれる人がいても、気づかなかったということもあり得る。
オーロは少しそういうところが、不器用なんだろうな。
「……ほん、とうに? そんなこと、許されるの?」
「許すも何も、私がそうしたいの」
私がそう言って笑いかけても、オーロは少しだけ不安そうだった。
やっぱり結婚生活でオーロは心の傷を負っているのだろう。友人から差し伸べられた手を簡単に取れないぐらいに。
オーロの事情は大雑把には知っているけれど、私が知らないこともきっと沢山経験している。人を信じられなくなるようなことでもあったのかな……。
でもそんな風に追い詰められているはずの状況でもオーロは、私のことを心配してくれるだけの思いやりの心を残している。やっぱり私はオーロのことが大切だなと思ってならなかった。
「私……ヴィオと一緒に居られたら、楽しいって思うの」
「うん」
「でも……その、ヴィオが来てくれたタイミングが私にとってあまりにも都合がよすぎて……あなたのことも、少し疑ってしまっているわ。ごめんね、折角来てくれているのに」
オーロはそう言って申し訳なさそうな表情を浮かべている。
確かに大変な状況で突然、私が現れたら警戒するのも無理はないと思う。寧ろ誰のことでも信じてしまうというのは、かなり危険な行為だ。
それも結婚生活中ではなく、その生活が終わってからしか近づいてこなかった私ってオーロにとっては疑うには十分だ。
「仕方がないと思うわ。私はあなたが苦境の中にいた結婚生活中に手を差し伸べられなかったもの。……勝手に、オーロなら上手くやっているはずだって思い込んでいたの」
オーロに対して、私は理想を描いていたのかもしれない。私の友人であるオーロなら、何があっても大丈夫だって。ただ独りよがりに期待して、理想を描いていた。
オーロなら、結婚生活が上手くいかないはずがないって。そんなの本人ではどうしようもないことだってきっとあるのに……。
三年間も連絡が来なかったことを、私はもっと疑うべきだったのに。
オーロからしたらきっと、はた迷惑な期待でしかない。私はもっときちんと、オーロ自身を見なければいけなかったのだと凄く反省している。
「だからね、オーロは私を疑っていてもいいの。私が警戒されるのは当たり前のことだから。私はオーロが私のことを信頼してくれるように頑張るわ。だから私と一緒に来てほしいの。不安かもしれないけれど、私がオーロのことを大切に思っていることは本当よ。寧ろオーロが思っているよりもずっと……私はあなたのことを特別に思っているの」
そう、オーロが思っているよりも私はずっと彼女のことを特別な友達だと思っている。それこそ、唯一無二だって言えるぐらい。
オーロにとっては……ただ文通をしていたうちの一人とか、友人の内の一人とか、その程度かもしれないけれど。
でも私にとってはそうじゃない。
「え、ええ。ありがとう、ヴィオ。……えっと、お言葉に甘えさせてもらうわ。でも……私と一緒に居ることで不利益を被りそうなら、すぐに離れて大丈夫だから」
そんなことをするはずがないのだけど、オーロは心配して仕方がないのかそう言った。
オーロは私が同じように辛い目に遭わないかと、そのことを心配しているのだ。確かに私がオーロと一緒に居ることで、色んなことを言われるとは思う。
善意に見せかけて、オーロと離れた方がいいとか、そういうこともきっと言われる。
でもだからなんだというのだ。
周りが何と言おうとも、私は彼女を友達だと思っていて、彼女の良さを知っている。
これまで一度も会わなかった分、一緒に沢山の思い出を作りたい。それでいてオーロにもし好きな人とか出来たら、全力で応援したいな。まぁ、オーロにその気がなければ無理に次の相手を作る必要なんてないとは思うけれどね。
……私もお父様やお母様たちに良い人は居ないの? と聞かれるのよね。好きな相手が出来たら教えて欲しいって。きっとそう言う相手が出来たらとことん調べ上げられるんだろうな。
「よし、じゃあ、行きましょう」
「ど、何処に?」
「王宮よ。此処に居るよりも、王宮に居た方がいいわ。それでこれからどうするか決めましょう」
私がそう言ったら、オーロは目をぱちくりさせていた。




