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「ここをこうしたら――」
「いえ、私はこちらを弄った方が……」
二人で魔法の改良のために話し合いを重ねていく。オーロ自身はしばらくの間、魔法から離れていたからなんて言っていたけれどそんなことは全くないなと改めて実感した。
だってこんなにも私の話について来られているのだもの。それってオーロが結婚生活中も魔法のことを忘れずにいてくれたからだと思う。それに嫁ぐまでの間、魔法というものに必死に向き合っていたからだろう。
こうして魔法の話をしていると、オーロと手紙のやりとりをしていた日々のことを思い出した。
オーロからの手紙は、全て大事に取ってある。
オーロは常に王都に居るわけではないから、五年間での量としてはそこまで量が多くない。だけれどもその内容はとても濃い。なんというか、特に手紙のやりとりをはじめた当初は、どのくらいの文量を書くのが一般的なのかなどを分かっていなかった。だから長文で魔法のことを書いたりもしてしまっていた。
今、考えてみると……相手がオーロじゃなければ呆れられたのかも。
本当に凄い偶然よね。私がたまたま秘密の友達が欲しいと紛れ込ませたものを、オーロが見つけてくれた。そしてオーロは私と同じぐらい魔法が好きな子だった。それに私の長文の手紙を楽しんでくれる人だった。
何か一つでも掛け違えば、私はオーロと友達になれなかったんだなと思うと、見つけてくれたのが彼女で良かったなと思った。
「これで、一通り完成ね!」
「ええ。そうね。仕事でこんなことを言うのも駄目かもしれないけれど、楽しかった……というのが正直な感想だわ」
長時間、私とオーロは魔法の改良に勤めた。それこそ、周りから止められるまでずっと作業をしていた。
なんだろう、熱中しすぎると休憩もはさまず進めてしまうわよね。
私は魔法のことだと喋りすぎてしまうから、引かれてしまったらどうしようって少し不安だった。
だけどオーロは私の話に飽きた様子も見せずに、同じ熱量で語ってくれた。うん、私オーロと魔法の話をするの、やっぱり好きだなぁ。
「私も楽しかった。これからしばらく、オーロと一緒に魔法の話が出来ると思うと嬉しい」
これから先の未来、オーロがどんな道を選ぶかは未定だ。私としてみたら、オーロが私と同じ職場にずっといてくれたら嬉しいけれど、友人だからといって同じ場所で過ごせるわけじゃない。
今は悪い噂が流されたり、オーロは大変だけど、落ち着いたらオーロがどういう道を歩みたいかちゃんと聞かないとなぁ。
「私も嬉しい。……あまり周りに魔法の話を出来る人が居なかったから、私はあなたとの手紙のやりとりをいつも楽しみにしていたの。お父様に隠れて魔法を学んで、あなたと手紙で魔法について語り合った頃が懐かしいわ。……お父様は文通相手が王族だって知って、もしかしたら卒倒でもしているかもしれない」
どこか楽しそうに笑いながら、オーロはそう言った。
オーロにとって魔法というのは、表立って学べるものではなかったのだろうな。父親が、令嬢に不要だと判断していたから。でもひっそりオーロは魔法について学んでいて、そして私と繋がった。
オーロの父親である男爵は令嬢たるもの夫を支えるような存在であればいいと思っていたのかも。淑女教育だけを行えばいいって。
貴族家によって方針は違う。家に産まれた子供は、大抵が当主である父親の意向に従った未来を歩む。
オーロの父親は、何処にでもいる男爵家なのだろう。娘のことを全力で守ろうとか、そう言う考えはおそらくない……。寧ろ嫁ぎ先だった伯爵家の不興を買うことの方が嫌だと思っているのだ。だからこそ、オーロは修道院に行こうとしていた。
「ふふっ、その様子を想像するだけで面白いわ。オーロは……家族とはどのくらい仲が良いの?」
情報だけを集めていると、実際にどのくらい仲が良いのかあまり分からない。
実際に何を思っているかは、本人に聞かないと分からない。私はオーロにとってはこうした方がいいのではないかとか考えることはあるけれど、それでもそれがオーロの望むものかって分からないから。
「仲は……悪くはないと思っていたわ。ただ流石に私が伯爵家に嫁いだのに離縁されてしまったから、扱いにくい娘とは思われていると思う。お母様は泣いていたし、お父様は困った様子で、他の兄妹たちだって私に何と言ったらいいか分からない様子だった。……私の状況が変わっていけば、家族との仲も改善できるとは思うの」
「そう、なら、状況を早急に解決しなきゃいけないわね」
伯爵はオーロの人生を滅茶苦茶にしようとしただけじゃなくて、その家族のことも傷つけているんだなと改めて思った。
オーロは家族のことを大切に思っている。そのことが伝わってきたから、男爵家の方への支援もきちんとしよう。
伯爵家が愚かな真似をしないようには見ておきたい。……なんだか、オーロの元夫、かなり独善的な性格はしてそうだから、オーロが表舞台で堂々と立ったら排除しようと動きそうな気はする。
背後に私が居るから、そんなことはもちろんさせないけれど。




