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「こちら、運んでおきますね」
「良かったら、どうぞ」
オーロはとてもまじめに働いている。元々気遣いが出来る性格なんだろうなというのも見て取れる。
魔法関連では役に立てるか分からないから、せめて雑用だけでも行おうとそう思っているようだった。オーロは雑用なんかしなくてもいいのになぁと私はそう思ってしまう。
でもオーロが楽しそうにしているので、いいかと見守っている。
それにしても私の友人は凄く素敵だなと、一緒に過ごせば過ごすほど思ってしまう。ついつい私はオーロばかりを見てしまうのだ。
だからよく目が合う。
「ヴィオ、どうしたの?」
優しい笑顔でオーロが問いかけてくる。私がじっと見つめているから気になったらしい。
私、オーロの優しい声、好きだな。
つい最近まで手紙のやり取りしかしてこなかった。オーロが結婚していた三年間は連絡も取れなかった。
だから実質の交流期間は五年間。
オーロは手紙でやり取りしていた時に想像していたように素敵な女性だった。
オーロの澄んだ声や柔らかくて優しい口調が聞いていて心地よい。こんなオーロだからこそ、されるがままだったのかもしれない。
騙しやすい、利用しやすいとそう思われてしまったんだろう。
「頑張ってるなってつい見てしまったの。職場にオーロが居るの、凄く嬉しいわ」
これまでも魔法の研究をすることは凄く好きだった。職場で働くことも楽しくて、いつも生き生きと働いていた。
でもオーロがいるとまたより一層楽しい。
「そうなの? ヴィオが喜んでくれているなら良かったわ」
オーロは穏やかな笑みを浮かべている。
彼女が此処で働き始めてまだそんなに時間は経っていない。しかし同じ職場の研究員たちはすっかりオーロのことを気に入っているようだ。少しでも接すれば、オーロの良さが分かるもの。
この職場の人達は、そもそも私と相性がいい人が集められている。お父様達が気を遣って、そう言う風にしてくれている。
だからそもそも、すぐに彼女のことを受け入れてくれるだろうなとは思っていたので想定通りだ。
「ところでヴィオ、それは何をしているの?」
ちらっとオーロが私の手元を見てそう言った。
「魔法の改良をしていたの。ほら、私達の国は隣国と小競り合いをずっとしているでしょう?」
そう、フルケーヘン王国は大規模な戦争はしていないものの、隣国との小競り合いは続いている。近着状態というかなんというか、国境付近ではドンパチしている。
そこまで危機的状況ではないけれど、仲は良くないとかそんな感じ。死者なども全然出ていないレベルのものだけど、向こうからやられっぱなしのままではいけないと思っている。
そういうわけで私はその小競り合いでつかえる魔法の研究をすることが多い。……ちなみに向こうにも私と同じように小競り合い用の魔法の研究をしている人が居るらしく、毎回、様々な改良がされていて正直その情報を知るのは面白かったりする。もちろん、小競り合いとはいえ、国同士の争いを楽しんでいたら駄目とは分かっているけれど……。
でも私の見たことのないような改良をしていたり、思ってもいないような魔法が使われたりするから、とても興味を抱いていたりはする。小競り合いが終わったら、ぜひとも話してみたいとは思うぐらいには関心がある。
「ヴィオはそういった場で使う魔法にも携わっているの? 凄いわね」
「ふふっ、私は結構頑張っているのよ。お父様達もね、私がきちんと結果を出すなら自由にしてもらって構わないといってくれているの」
私が魔法の才能がなかったりしたら、別の形で国に貢献しようとしただろう。ただ私には魔法職として生きる道があって、そちらで国に貢献しているというのも私が自由にさせてもらっている理由の一人だったりする。
「そうなのね、偉いわ。私もヴィオの助けになれるように全力を尽くすわ」
「ありがとう。それなら、今手をかけているこれを見てくれる? あなたからみたらどういう改良をした方が良いと思うかしら?」
私はオーロと沢山、魔法の話をしたかった。オーロは今の所雑用ばかりやろうとしているけれど、ちゃんともっと魔法関連の業務に本格的に関わって欲しかった。
「まぁ、そんな重要なものに私が意見をしてもいいの?」
「もちろん。良さそうな改良案があったら、実際に試してみたいわ」
「……私、最近の魔法の知識はないわよ?」
「大丈夫。オーロが一生懸命、最新の知識を仕入れようとしているのも私は知っているわ。それにね、あなたなら面白い改良を思いつきそうだなとも思っているの。あくまで改良って失敗も前提としたものだから、深く考えなくていいわよ?」
こういう業務って、成功することよりも失敗することの方が多い。沢山失敗した中で、一つだけ成功したり、良い形に魔法を改良出来たりするものなのだ。
だから魔法の改良について、重く受け止める必要は何もない。
私がそう言ったら、オーロは頷いてくれた。




