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文通友達が大変そうなので、私、動きます!  作者: 池中織奈


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プロローグ

『ヴィオへ

 

 しばらくの間、手紙をはさんでいたかったからもう見ていないかもしれないけれどこの手紙を書かせてただくわ。

 前回、あなたへ手紙を書いたのは私が嫁ぐ前のことだったわね。それから三年の間、此処にやってくることが一度も出来なかった。結婚の報告をした手紙で、王都に来た際は手紙を書くと書いていたのに一度も連絡が出来ずにごめんなさい。


 詳しい事情は此処で書くことは憚れるけれど、私は一度も王都に来れなかったの。おかしな話だとは思われだろうけれど、本当のことよ。もしかしたら勘違いをされているかもしれないけれどもあなたに連絡をしたくなかったなんてことはないの。それだけは分かって欲しい。


 どうして私が今回、三年ぶりにあなたへの手紙を書くことになったかと言えば離縁したから。たった三年で結婚生活が終わるなんて、三年前は思ってもいなかった。

 最後の我儘で、私は王都に一度訪れることを強行してしまった。家族や家にも散々迷惑をかけてしまった。私が王都に来ることを皆嫌がっていた。

 でも私はあなたに手紙を書きたかったの。そんな理由で反対を押し切って王都にやってきた私にあなたは呆れるかしら。


 五年間も手紙のやりとりをしていたのに、私はあなたの名前も、身分も知らない。私もあなたに一度もそれを伝えなかった。だけれども私にとってはヴィオは大切な友達なの。

 私と違ってヴィオには沢山のお友達が居るかもしれない。直接顔を合わせたことはなくても、あなたがどれだけ素敵な女性なのか私は知っているもの。

 だから大切な親友に、最後に手紙を書きたかった。あなたにきちんとお別れが出来るなら、私はこの先の未来に何が待っていたとしても受け入れられるの。


 こんな手紙を書いてごめんなさい。ただ久しぶりに、私のたった一人の親友にもう手紙を送れないことを伝えておきたかった。

 自己満足でごめんなさい。


                                 オーロより』









 私、ヴィオミーリナは久しぶりに見つけた手紙に嬉しくなって、すぐに封を切った。

 それなのに、そこに書かれていたのは別れの言葉だった。






 ここは、王都の国立図書館。その中でも奥まった場所に魔法に関する専門的な分厚い蔵書の立ち並ぶ。その分野の本をわざわざ此処で読む人なんて少ない。






 この手紙の送り主――友人であるオーロとのやり取りが始まったのは今から八年前のことだった。




 気まぐれに、本の間に手紙をはさんだ。

 その当時読んだ小説の中で、秘密のお友達が出てきた。私も身分や立場を隠した上で友達が欲しいと思ってしまった。





 ……私の立場で、それが難しいことは百も承知していた。それでももし、友達が出来たらって。

 期待なんてしていなかったのに、返事が来たの。





 それがオーロだった。初めて手紙が来た時、ワクワクした。この手紙を書いた人は、私のことなんて一欠けらも知らなくて、ただ手紙に書いた内容だけを見て、私に返事をくれたんだって。そう思うと嬉しかった。

 それから五年間、私はオーロと手紙のやり取りをした。他の人が私の手紙を読まないように、オーロの手紙が他の人に渡らないようには、家の使用人が全て手配してくれた。





 おそらく使用人は相手が問題ない人物かは調べていたとは思う。それで私が手紙のやりとりをしても問題ないと判断してくれたから、手紙のやりとりをすることが出来た。

 そして、三年前――貴族の娘だったらしいオーロは家の都合で結婚すると報告があった。





 お祝いの手紙を書いた。その手紙は残念ながらオーロに届くことはなかった。王都を訪れた際にオーロから手紙がくるかなと楽しみに待っていた。

 だけど三年間、手紙が届くことがなかった。結婚して忙しいのだろうか、子供でも出来たのだろうか……。私に手紙を書く余裕もないぐらいに充実した日々を送っているのだろうなと思っていた。

 ――だって私にとって、オーロは本名や立場などを一切知らなくても、顔を合わせたことはなくても、とても素敵な女の子だったから。私の大切な友人。この秘密のお友達の関係性が私は好きだった。





 いつか何かのタイミングで、「あなたが?」と偶然出会うことが出来たら、それもそれで楽しいだろうってそう思っていた。

 それなのに、今日届いた手紙はオーロらしくもない。




 手紙の中の彼女はもっと明るかった。悩みなどももしかしたらあったかもしれないけれど、手紙にはいつも楽しい出来事が書かれていた。




 結婚に対しても、前向きだったことを知っている。

 素晴らしい方と結婚を出来ることになったとそう書いていたはずなのに。離縁になるというのはともかくとして、ここまで後ろ向きな気持ちになるだけの何かが三年間で起こったのだろうか?

 オーロの手紙では、お別れだと、最後の手紙だと書いてある。





 ……私はそれは嫌だ。

 一瞬躊躇してしまうのは、私のことを知ったら……オーロは態度を変えるだろうか。友達じゃいられなくなるだろうか。そう不安に思ってしまっているからだった。

 だから、一度も直接会おうともしなかった。





 でも、こんな切羽詰まった状況の友人を放っておけない。私は友人が不幸になるのをそのまま放置したくない。だってオーロが、こんなにも弱音を吐くのは初めてだったから。





「ねぇ、今すぐオーロの現状を調べてくれる? 私、会いに行くわ。お父様達にも伝えてもらえる? 私は友人に会いに行くから、そのことでちょっと騒ぎになるかもしれないって」



 私は侍女にそう告げた。


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