もうすぐ鐘が鳴る
掲載日:2026/01/14
小学生の時は体が弱くて、学校に3分の1ぐらい休んだ。
学校が嫌いなわけじゃなかったのに、そうなった。
中高一貫の私学に入学した新田学園
医科大学の付属校ということもあり、体調不良時のケアが万全だった。
そんな環境だったから、僕は1日も休まず通学し、皆勤賞は目前だった。
歩行者信号が点滅を始めた。僕は走るのを止めた。
そびえ立つ白い建物、見えているのに届かない。
抱き抱えていた猫が、無邪気に鳴く。
「もうすぐ鐘が鳴る」
ーーー
離婚は私からの提案だった。仕事柄ほとんど家に帰れない。
夫である資格、父である資格が無いと思った。
私は元家族の為、養育費という名目で仕送りを続けていた。
元妻と息子を事故で亡くなった。
喪服に身を包み教会へと足を向けている。
結婚式で会った以来だから親族の顔すらわからないだろう。
私は立ち止まる。私は何をしようとしているのか。
「もうすぐ鐘が鳴る」
あいつの必死の顔、繰り出す拳、汗の一滴、血潮まで見えていた。
逆境から這い上がり、俺に肉薄する高みまで上り詰めたあいつ。
不意に、あいつの全てを受け止めてみたくなった。
ファイブ、シックス、ナイン…
あいつの勝利を期待する観客の声
「もうすぐ鐘が鳴る」




