おばちゃん、ありがとう♡
更新いたしました。
各学年ごとの年次魔法研究報告会が開催される時間になると、学生達はみな大講義室に席をつき始める。
メリーナは最初の研究報告が始まった後に、そっと入室し周りを見渡していると、エスターテがメリーナに気が付き手招きをする。
「広いから見つけきれないと思ってたよ」
エスターテの横にメリーナが座ると小声で話しかける。
「ギリギリまで入り口の傍で待ってたんだからね」
「ごめ~ん♡仕事が終わらなくて、アウラ先輩も・・ほら、今入って来た」
遅れて一礼しながら生徒会執行部席につくアウラの姿がそこにあった。
「体育委員の仕事も大変よね」
エスターテはそう小声で言うと研究報告の演台へと意識を集中させていった。
午前の部の魔法研究報告会が終了し、学生食堂でいっせいに生徒たちが昼食をとり始める中、メリーナは忙しそうに台車の荷物をアウラと共に運搬していた。
「すまないな、昼食時間まで作業をさせて」
荷物を大講義室に運び入れると、アウラがメリーナにわびる。
「仕方ないですよ、直前に持ち込めたのは午前中分の荷物だけだったんですから」
「本来は対外秘の資料ばかりだからな。さあ、もう一度だ。講師室まで荷物を取りに行こう」
そう言うと再び二人は校舎へ戻っていった。
「もうすぐ、昼食時間が終わっちゃいますね」
「やはり、昼食ぬきになったな」
アウラとメリーナが空の台車をトボトボと校舎まで押していると、この前の学生食堂の女性が包みを持って二人の前に現れた。
「この前のライスコロッケだよ」
そして、そう言うと二人に紙袋を手渡した。
「おばちゃん、ありがとう♡」
嬉しさのあまりメリーナは女性に抱きついていた。
「カイラ先輩。今年も有り難うございます」
アウラは大きな声で頭を下げ礼を言う。
「急いで食べなよ。私は仕事があるから戻るよ」
そう言い残すと足早に学生食堂へと戻っていった。
「先輩、あの方をご存じなのですか?」
メリーナは、ベンチに腰かけライスコロッケを頬張りながらアウラに問いかける。
「昨年もライスコロッケを頂いてたんだよ。彼女の名はカイラ・イズメイ、歴代生徒会長の内の一人だよ」
「え、生徒会長をなさっていたんですか?」
「そうだよ。この学園で働く者は、この学園出身で緊急時の守りの要でもあるんだ」
そう言いながらアウラも嬉しそうに隣でライスコロッケを頬張っていた。
午後の部の魔法研究報告会、四年次生から六年次生までの研究報告は各自治体の首長や各ギルド長が最も注目しているところでもあり、優秀な魔法使いの人材獲得を見極める舞台でもあった。
そして、最後の六年次生の研究報告が終わり、学長による本年度の総括が行われようとしていた時、貴賓席から、突然声がかかる。
「つまらん。この程度の研究報告しかないのか?もっと、これまでの概念を覆すような発表を期待していたのだが」
「これはマドラスの首長。非礼な上、言葉も過ぎると思いますが」
学長のポーラは厳しい目で貴賓席を睨みつける。
「見渡したところ、貴方と同様の潜在能力を持っていそうな学生など皆無だと思いますが」
隣に座っていたマドラスの女性ギルド長が口を開き、さらに発言を続ける。
「わざわざ貴方同様の化物を見たいが為に、ここまで遠出してきたのですが」
そう言うと、その女性は冷たい笑いを静まりかえった大講義室全体に響かせていた。
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