あら、全く白々しいですね? ルニカ君?
いつも思ったまま自由にお話を書いています
後のことなんて考えずにね!
なので私もこのお話の行く末が心配です
「何をしているのですか?」
その言葉を耳にしたとき、私はドラゴンに睨まれた小動物のように固まっていたことだろう
今、恐ろしく冷たい冷気を纏って後ろに立っているのは私の同僚、メイド長のニナ・ワード
元近衛魔術師団の副団長だ
ほんの20年前までは近衛魔術師団に所属していたが、何らかの理由で今はメイドをしている
元近衛魔術師って単語だけでも恐怖なのに彼女はエルフ族なのだ
基本的に長命種が多い魔族の中でもトップクラスに寿命が長いのがエルフ族と魔神族だ
その寿命の長さを分かりやすく言うなればエルフ族は人間の 約30倍 で1000年の時を生きる種族なのだ
その持て余した時間を魔術の修練に費やした彼女の魔術は……考えただけでも尿が出そうだ……
これでわかってくれただろうか?私が如何に恐怖しているかを……
「き、奇遇ですね~メイド長」
私はあくまで何も知らないふりをする
堂々と剣を持っているけどね!!!
「あら、全く白々しいですね? ルニカ君?」
彼女は部屋の窓を押さえつけながらそういう
「なぁメイド長、その焼き菓子くれるのか?」
エリス様はこいつがどれだけ恐ろしいかわかっていないのだ……だからこんな状況でもお菓子に夢中なんだ!羨ましい!
「いいえ、エリス様、これは良い子のためのお菓子です、陛下とのお約束を守れない悪い子にはあげませんよ」
そう言い彼女はもう片方の手に持っていた焼き菓子の袋をエリス様の届かない高さまで持ち上げた
まぁ私なら届きますけどね?
「父上との約束?何かあったっけ?」
全く覚えていない、という顔でメイド長に尋ねるエリス様
今のうちにここから私だけでも逃げ出そうか、とか思ったが、そんなことをしたら解雇されるかも?と思い辞めた
「ありましたよ?3年ほど前に魔術をお部屋で使ったときに怒られたじゃないですか、覚えていますか?」
「覚えているよ?でもその時にした約束は『危ないことはしない』だったでしょう?だから今日も魔術は使ってないよ?」
そうだそうだ!もっと言ってやれ!と、心の中でエリス様を応援する
「では先ほどまではどちらで何をなさっていたのですか?」
まずい!エリス様は素直だからありのままに話してしまう!止めなければ!
「先ほどまでh……」
そう言いかけた時、メイド長の鋭い視線が私へと向き、次の刹那には頬を氷の塊がかすめた
「今はあなたには聞いていないです」
恐い、本当に恐い
「さっきまでは運動場で剣を教えてもらってたぞ!」
あぁ……終わった……私……終わった