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8 定期テスト

 ジンに警告されてから、テスト当日までの約1週間。アリサは集中力が保つ範囲で勉強した。1日3時間程度。休みの日だからって、勉強時間を伸ばすことはなかったが、それでも時間内は真剣に取り組んでいた。定期テストの難易度は分からないが、リオンは全教科平均5割を取れると踏んでいる。結果だけ見ればそこまでいい点数でもないが、アリサにとっては十分な成績となる。

 テスト当日。教室に入ると、既に来ていたクラスメイトたちは、教科書やノートを見て最後の復習をしている。

 「アリサ、今日は頑張れよ。」

 リオンは自分の席に座りアリサに発破をかける。今日は一日学科のテスト。1限目から6限目まで、約6時間、テストと向き合わなければならない。アリサの集中力は3時間程度しかないから、ちゃんと持つかは不安ではある。ただ、テストは時間いっぱい集中する必要はないし、休憩時間もあるし何とかなるとは思っている。

 「心配いらないわ。別に高い点数を取らないとってプレッシャーもないし、気楽に頑張るわよ。」

 アリサとしても、せっかく勉強したんだから、それ相応の点数は取りたいと思っている。ただ、ジンの言うような新人戦のために、テストで好成績を残す必要があるかと言われればそうではない。リオンがいるから、校内戦には参加できるし、シード権なんてなくても勝ち上がれる。だから、プレッシャーもそこまで感じていない。

 定刻になり、問題用紙が生徒に配られる。

 「試験始め。」

 裏向きになっている問題用紙をめくり、テストを開始する。

 リオンは問題を見ながら、スラスラと解答用紙に解答を書いていく。リオンの体感ではあるが、難易度はそこまで高くない。普段の授業を聞いていて、復習とテスト勉強さえしてれば、8割は取れそうなテストだった。8割といったのは、残りの2割は先の対策ではどうにもならない問題だからだ。

 おそらく、簡単すぎるとテストの点数に差がつかないので、順位付けが意味をなさなくなる。同点数が何十人とかになる可能性もでてくることもあるからだ。そこで、難しい問題を一部出すことで、生徒に差をつけ順位を明確化するためだろう。

 (これはアリサは解けないだろうな。)

 リオンは問題を解きながら思う。テストを受けるうえで最悪なケースは、最初テストに受けたテストに手ごたえがなく、後に受けるテストに引きずることだ。

 (まあ、アリサは大丈夫だと思うけど。)

 この問題は明らかに難しい。アリサは自分では絶対に解けない問題と分かるはずだし、そもそもアリサは引きずるような性格ではないはずだし。

 テストの時間は1教科50分。一般的な生徒だと、40分程度で全問題を解き終え、残りの時間を見直しに充てれるように、という意図をもって教師たちはテストの問題を作っていた。

 その目安はあくまで一般の生徒の基準であり、リオンのように優秀な生徒だと時間よりも早く終わるし、アリサのように不出来な生徒だと時間いっぱいまでかかる。

 リオンは試験開始20分で解き終え見直しをする。

 (この難易度だったら、アリサでも6割は取れるかもな。)

 テストを見返しながら思ったことだ。アリサの出来具合だけで見ると、それだけの点数が取れてもおかしくはない。ただ、本番はどんなイレギュラーが起こるか分からない。勉強の際に覚えた単語がど忘れするってこともあるし、逆に記号問題とかをたまたま勘がさえて全問正解することだってある。

 (アリサがおおこけしないといいけど。)

 リオンはアリサが少しでもいい点数がとれるのを祈った。

 テストが一つ、また一つと終わっていく。リオンの出来は記述問題の解答次第ではあるが、分からない問題は一問もなかったので、満点の可能性が大いにある。アリサの出来は不明だ。テスト間の休憩の際に、出来について聞こうかと思ったが止めた。アリサの集中力をきらしてもいけないし、今聞いて後のテストに影響がでてもいけない。テストの結果は変わらないし、終わってからまとめて聞こうと思ったわけだ。

 テストの内容は作成した教師によって多少の差はあれど、一番最初に受けたテストと同様、簡単な問題が8割、難しい問題が2割というスタンスは変わらなかった。

 (こうなってくると、一問のミスが命取りだな。)

 難しい問題とは言っても、リオンや他の上位の生徒なら解ける問題ではある。リオンが学科試験で一番を目指すなら、満点を取る必要がある。

 リオンにはその自信があるが、本番は何が起こるか分からない。念入りに見直しをする。

 6限目の授業が終わり、全ての学科試験が終わった。

 「アリサはテストどうだった?」

 リオンがテスト中、ずっと気にしていたことを聞く。

 「ぼちぼちいけたと思うわよ。リオンが心配するような悲惨な点数にはなってないはずよ。」

 アリサはテスト勉強した分相応の手ごたえを感じていた。

 「そっか。ならよかった。」

 少なくとも、おおこけはしていなさそうだ。アリサの様子から見るに、半分は解けていそうな感じだった。

                       ♦

 翌日は実技の試験の日だ。教師たちが生徒たちをペアごとに呼び出し、生徒同士の模擬戦を見て採点していく。テスト前に採点基準について軽くジンの方から全体に説明があったが、一番点数に影響があるのは勝敗だ。当然といえば当然の話ではある。どんな形であれ、勝つことが最重要となる。これがもし実戦なら、敗北=死であるからだ。

 それ以外だと、戦術だったり、個人の技術が採点基準となる。この模擬戦はペアで行われるが、採点自体は個人個人で出される。同じペアの生徒同士だからって、実技の点数が同じになるわけではない。

 実技試験は、異なる相手と計3戦し、その合計点が試験の点数となる。

 (なるほどな。アリサでも6割は取れると言ったのは、勝敗が一番影響があるからか。)

 3戦するわけだが、自分たちが負けるわけがない。そこでごっそり点数を稼ぐことができるから、アリサの剣術が拙くても、問題ないわけだな。

 「じゃあ、試験を始めていくから。」

 教師は生徒たちに対戦表を配る。対戦表には自分たちが戦う相手、試験会場、時間が記載されていた。

 (結構時間空くんだな。)

 リオンたちの1試合目が10時から、2試合目が14時から、3試合目が16時からとなっていた。

 今日は一日実技試験に当てられている。自分たちが試験を受けている時間以外は、自由時間となっている。その間に調整をしたり、休憩をしたりして、試験の準備を整えろというのが学校側の意図なのだろう。

 (できれば、早く終わらせたかったけど。)

 連続で試験をしようが、自分たちの試験結果が変わるわけではない。早く終わらせて残り時間をゆっくり休む方が良かったわけだ。

 「各自、対戦表の指示にあるとおりに会場に来てくれ。時間通り来なかったペアは不戦敗とするので気を付けるように。」

 ジンの一言で生徒たちは各自移動していく。

                       ♦

 「私たちはどうやって戦う?」

 アリサは自分がこの模擬戦において戦力にならないことは分かっていた。だから、リオンに全て委ねることにしたのだ。

 「とりあえず、一対一で戦って、俺がすぐ相手を倒してアリサの方に加勢するよ。アリサは俺が敵を倒すまで時間を稼いでくれ。」

 模擬戦自体はリオン一人がいれば勝てる。極論を言えば、アリサが即刻リタイアしたとしても、特に勝敗に影響はない。ただ、アリサが早々にリタイアしてしまうと、アリサの個人の技術点数が0点になってしまう。そうなると、勝利点のみしか点数が入らない。それだけは避ける必要がある。

 「分かったわ。やられない程度に頑張ることにする。」

 アリサはやる気はなさそうだった。全力を出すことはできないし、本来なら勝てる相手に時間稼ぎしかできないとなると、そういう気持ちになるのは分かる。

 「そろそろ時間だな。」

 アリサと雑談をして時間を潰していたが、いよいよ試験の時間が迫ってきた。

 「仕方ないわね。」

 リオンとアリサはベンチから立ち、試験会場へと向かう。

                       ♦

 「やっと終わったわー。」

 時刻は16時30分を回っていた。3戦ある実技試験が全て終わり、アリサはテストが全て終わった解放感から、寮への帰路を走り回っていた。

 「おつかれ、アリサ。」

 (よっぽどしんどかったんだろうな。)

 アリサに労いの言葉をかけるとともに思ったことだ。アリサはこの1週間、3時間とはいえ勉強に集中していたのだ。慣れないことをするのはそれだけでしんどいことだ。それをアリサは、弱音を吐きながらも、精一杯できる範囲で頑張っていたわけだ。

 「ほんとに試験長かった。リオンが中々来ないから、私が魔法でぶっ飛ばしたくなってしょうがなかったんだからね。」

 「今度はもっと早く助けれるように頑張るよ。」

 アリサはぶつくさと文句を言っていたが、リオンには本心で言っているようには見えなかった。

 試験の結果をみれば、3戦3勝。一切の危なげもなしに勝利した。内容は当初の計画通り、一対一で戦いつつ、リオンが敵を全て蹴散らす。アリサもリオンが駆けつけるまで、リタイアすることなく戦い続けていた。

 (アリサは俺が様子見をしていたことに対して言っているのかもな。)

 リオンの対戦相手。当然だが、大した相手ではない。この前戦った団長の10分の1くらいの強さしかない。しかも、奥の手とか警戒する必要もないし、実力差があり過ぎるからただ攻撃しているだけで片が付く。3戦とも1分以内にリタイアに追い込んだ。

 リオンはすぐにアリサを助けても良かったんだが、アリサの戦いを第三者の視点から見てみたかった。だから、すぐには駆けつけず、少し離れた所からアリサの戦闘の様子を見ていたのだ。

 ただ、アリサには魔力感知があるから、リオンが様子見していたことは丸わかりだったのだろう。早く試験を終わらせたいアリサにとって、リオンの行動は逆をいっていた。

 (まあ、そのおかげで今のアリサの剣の腕が見れたわけだが。)

 今までリオンは指導としてしかアリサの剣を見ていなかった。だから、実際に誰かと戦う際の剣裁きというのを見てみたかった。

 結論から言うと、アリサの剣術の腕は一般的な学生のレベルだ。今回の試験も、リオンがわざわざ助けなくても、時間さえかければアリサが全て勝てただろう。ただ、それは剣の腕だけというよりは、自分に身体強化魔法を目一杯かけたごり押し戦法ではあるが。それでも、魔法を使わないごり押しなら、最低限の剣の技術がないとできない代物だ。

 (これからのアリサ乞うご期待って奴だな。)

 リオンはそんなことを思いつつ、走り回るアリサを追いかけた。

                       ♦

 新人戦に向けた校内戦をするために、定期テストの結果というのは存外早く返ってきた。ジンが一人一人生徒の名前を呼び、生徒に成績表を渡す。

 「リオン・キングスフォード君。」

 リオンはジンに呼ばれ成績表をもらいに行く。

 「流石だね。よく頑張ったよ。」

 ジンから誉め言葉を頂きながら、成績表を受け取った。席に戻り成績表を確認すると、一番最初に目についたのが総合成績。学科と剣術を合わせた成績のことだ。そこにはでかでかと1位の文字が書かれていた。

 (ふぅ。)

 リオンは一安心をする。テストの結果には自信があったが、やはり結果を見るまでは落ち着かない。もし、これで2位とかだったらアリサに馬鹿にされるのは目に見えるし、自分のプライドが許さない。

 後は、各教科ごとの点数・順位を確認する。全教科満点で1位だった。

 「アリサ・エヴァンズ君。」

 アリサの名前が呼ばれ、同じように成績表をもらいに行く。

 「僕は君の成長が嬉しいよ。これからも精進するんだよ。」

 「何かキモイわよ。」

 アリサはジンの発言に引きながら成績表を受け取る。

 「アリサ何番だった?」

 アリサが席に戻るなり、リオンはアリサに成績を聞く。リオンにとって自分の成績よりも知りたいことだったからだ。

 「そんなに焦んなくても結果は逃げないわよ。」

 アリサはそう言いながら、リオンに自分の成績表をリオンに渡す。

 リオンはまず、総合成績を確認する。

 (74位か。)

 アリサの成績は思いのほか良かった。Aクラス級の成績はなかったものの、160人中74位ならまずまずの出来だ。

 続いて、各教科の点数・順位を見ていく。次の定期テストに向けての弱点探しってわけだ。アリサの学科の方はまずまずと言ったところだ。全体的に50点から60点の間。唯一、数学だけが83点あり上々の出来であった。

 (まだまだ勉強は必要だな。)

 各教科の平均点は70点前後。アリサの点数ではまだまだ届かない差がある。ただ、テストの傾向的に基礎さえ押さえれば80点近い点数は取ることができるので、今後成長の見込みが十分にある。

 (後は、実技が良かったのも幸いだったな。)

 アリサの学科が平均点を下回る点数だったにもかかわらず、74位という成績を取れたのは一重に実技のおかげだろう。やはり3勝したことが大きかった。アリサの実技は76点であり、平均点が60点であることを加味すれば、十分すぎる成績だ。

 それに、定期テストは入学試験同様、配点が学科試験の4倍となる。それ故にアリサの順位は伸びたというわけだ。

 「アリサ、よく頑張ったな。」

 リオンはアリサを褒める。結果はAクラスであることを考えると、物足りないことは言うまでもない。それでも、アリサはこの1週間頑張った成果をきっちりと出すことができた。

 「何よ。私を褒めても何もないわよ。」

 アリサはリオンから目を背ける。

 「これで皆に成績表を渡し終えて、皆それぞれ結果は確認できたと思う。良かった者もいれば、思ったよりもできなかった者もいると思う。どちらにしろ、この結果を受け止めて次の定期テストに臨んで欲しい。」

 生徒はテストの結果に一喜一憂する。しかし、これはあくまで定期テストに過ぎない。少年たちにはまだまだ待ち構えている壁というのがある。こんなところで立ち止まらないようジンは言葉をかける。

 「それはそうと、テストの結果が出たわけで、新人戦に出場をかけたトーナメントの組み合わせも決定した。とりあえず、おめでとう。Aクラスは全員、トーナメント参加決定だ。今から、トーナメント表を黒板に貼るので心して待つといいよ。」

 そう言うと、黒板にトーナメント表を貼る。生徒たちは黒板の近くに集まり、自分の名前を探す。

 「リオンは行かないの?」

 アリサはもとよりトーナメントに興味はなかったから動かなかったが、リオンもトーナメントを見に行っていない。

 「後で行くよ。トーナメントには入ってるんだ。誰が相手でも負けないから興味ない。それに人が集まり過ぎだし。」

 アリサの順位が74位だったことで、トーナメントに参加できることは分かっていた。ただ、シード権はないだろうが、リオンたちには関係のない話だ。誰にも負けないのだから。

 「それもそうね。」

 トーナメント表を見終えた生徒から、自分の席に戻りその対戦相手について話し合う。自分がどれだけ勝ち進めて、本戦に参加できる可能性があるかを。

 「さて皆にトーナメント表を見てもらったところなんだけど、早速明日からどんどんトーナメント進めていくから。すぐ始めないとスケジュール的に間に合わないからね。」

 というわけで、明日から新人戦出場をかけたトーナメントで始まる。

 ちなみに、分かりきっていたことだが、リオンたちにシード権はなかった。 

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