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群れを追放された俺、実は激レア種族でした ~俺だけ使える【ユニークスキル】でサクサク成長・最速進化。無双の異形に至ります~  作者: 歌岡赤
第一章

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エピローグ

「…………」


 怪物を倒したオレは、辺りに飛び散った肉片の吸収を試みる。


「(……やっぱ、無理か)」


 味がしない。〖マナ〗を取り込めていない。

 スライムの吸収能力は同族の死体を受け付けないのだ。

 ……やはり、怪物の体はスライムのものだった訳である。


「(…………)」


 それから、近くに散らばる根っこの方へ意識を向ける。

 一本拾って食べてみるが、こちらからも〖マナ〗は得られない。


 得られない、と言ってもスライムを食べた時とは違う。

 どちらかというと根そのものに〖マナ〗が含まれていないような……砂を噛むって表現がピッタリの感覚だ。


「(ぺっ、不味いな)」


 微妙に硬く溶かし辛いそれを吐き出し、辺りを見渡す。

 アレがどこかにあるはずなのだ。


「(……見つけた)」


 少しして探し出したのは一つの種子である。

 最後の一撃が直撃していたら粉々になっていたかもしれないが、今回は微妙に外れていたらしい。

 多くの根っこが乱暴に千切られているが、種子自体は無傷である。


「(これは枯れてる……のか?)」


 種子は僅かに割れていて、そこから芽が出ているのだが、それは茶色くなっていた。


「(この(しな)びた芽、どっかで見た気がすんだよなぁ……)」


 マジマジと見つめる。

 子葉の数は七枚。左右に別れていて片方に三枚、もう片方に四枚の葉が集まり、半ば重なり合うようになっているという奇怪な造形をしていた。


「(……ま、今は良いか)」


 種子を握り潰し、〖分解液〗で処分する。


 戦闘中はかなり大きな音が響いていた。

 それを聞きつけて冒険者や魔獣がやって来る可能性もあるし、面倒事になる前に早く逃げてしまおう。


「(……それに、やる事もあるしな)」


 溶け残っていた怪物の肉片を掬い取り、オレは広場を後にした。




「(ふぅ、こんなところか)」


 スライムの巣の跡地。そこから少し西にある一際大きな木の前で、オレは小さく呟いた。

 目の前には樽一つ分ほどの穴。中にはいくつものジェルが入っている。


 言うまでもなく、ジェルはスライムの死体だ。


「(ご冥福をお祈りする。まぁ、死んだスライムがどこに行くかは知らねぇけどよ)」


 両手──体の一部を手のように変形させた──を合わせて拝んだ後、穴を埋める。

 少しだけ土を盛り上げてお墓らしくした。


「(……じゃあな、皆)」


 最後にそれだけ言ってお墓の前から去る。

 向かうのは森の奥。強くなるという目標は今も変わっていない。


「(人間と出くわしても面倒だしな)」


 〖マナ〗の薄い地域はそれだけ人間が多いのである。


 ……人間と言えば、スライムの巣で死んでいた人達の死体は、一ヶ所に集めて寝かせておいた。

 さすがに勝手に埋葬しては遺族の方も困惑するだろう。

 この国の宗教様式も知らないしな。


 小太りの彼は逃がすことができたし、彼伝いで死体が回収されることに期待する。

 ゴブリンなどに奪われないよう武器は回収し、近くの木を斬って並べて柵にしといたが、それでどのくらい魔獣の侵入を防げるかは分からない。


 オレにできるのは彼らの死体が食い荒らされないよう祈るだけだ。


「(……ああそうだ、赤鬼にあったんだった)」


 ふと思い出したのは奇怪な芽のこと。

 かつて森亀と激闘を演じた赤鬼の、その額にもあの変な芽が付いていた。


 あの時はそれどころじゃなく注視していなかったが、よくよく思い出せばあれも子葉が七枚だった気がする。

 そうであるならば赤鬼も……。


「(何なんだよ、あの種は)」


 苛立ちが募る。

 未知の現象への恐怖よりも、怒りの方が強かった。


「(もしかして、他にもあんのか?)」


 既に二つの例がある。ならば三つ四つとあっても不思議じゃない。

 むしろ種子なら二つしかない方が不自然だろう。


「(じゃあ、どっかに大本があったりすんのか……?)」


 木か、花か、それとも全く別の何かか。

 取り付いた相手を異形へと変えるような、そんな種子を飛ばす存在が居るのなら放置はできない。


「(……まあでも、すぐにどうこう出来る訳じゃねぇが)」


 その存在がこの森の中に居る可能性は低い。

 そうであるならもっと種子を目にしているはずだからだ。


「(気長に探すしかねぇんだろうな)」


 そう結論付けて(はや)る気持ちを落ち着かせる。

 そもそも今の実力で勝てるかも分からないのだから、結局、目標はこれまでと変わらない。


「(強くなる、ただそれだけ。そのための動機が増えただけだ)」


 あの日見た森亀のような力を得るため。そして仲間達の仇を取るため。

 決意を新たに、オレは森の奥へ進んで行くのだった。

 ここまで読んでくださりありがとうございます。第一章はここで完結です。

 この後は閑話を二話挟み、それから第二章に移ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第一章お疲れ様です。 これからどのように強くなっていくのか楽しみです。
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