第八話
第八話です。
俺は慌ててその喧嘩を止めに入った。
「おい、ギル、何してんだよ。どうしたんだよ」
「おい、にいちゃん、そこどきな」
それは、ギルと喧嘩をしていた相手、大男で強そうな装備もつけている、頭はつるっぱげで大きな斧を片手に持っている。とてもじゃないが、小柄なギルでは太刀打ちできないような相手だ。それは俺自身も例外ではない。戦いはできるだけ避けたい。
「い、いやーうちのつれが迷惑かけてしまい大変申し訳ありません」
俺は大男相手に萎縮してしまっていた。
「ほら、ギルも謝って」
俺は自分の子供をしつける母親のように言った。
しかし、興奮状態なのかギルは言うことを聞かない。
「ちょっと待てよ樹、これは俺の戦いだ。手出しすんじゃねえ」
そう言って俺のことを少し睨む。
「(おいおい、今はそれどころじゃないだろ?)」
俺は小声でギルに問いかけた。続けてまた、ギルにしかわからないような声量で囁く。
「(第一喧嘩の原因はなんだ?)」
「(それは……)」
「(それは……?)」
「(俺より弱そうなのにイキっているから)」
お前は子供かよ。俺は少し涙目になっていた。
ギルは言い訳するように俺に言ってきた。
「(だってあれだぜ?あいつ、能力も神から授かったわけでもないのに酒場でイキリ散らかしてほんとにムカつくぜ)」
「(お前も能力ないようなもんだろ)」
「(いや、俺はあるよ眉毛再生が)」
もうないに等しいだろそんなハズレ能力。神も神でひどいだろ。なんでこんな能力与えたんだよ。
「(ああ~もういいから謝れ。謝ったほうが多分怪我しなくて済むぞ)」
「(嫌だね)」
「(謝れ)」
「(嫌だ)」
そんなこと繰り返していると相手に聞こえないように小声で喋っていたはずだが大男には聞こえていたらしく大声でキレだした。
「全部聞こえてんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」
「はい、すいません」
俺はすかさず謝罪の気持ちを示した。
しかし、こいつほんと話聞いてないだろ。なんといきなりギルはその大男に決闘を申し込んだ。
「おい、そこの大男俺と勝負しようぜ」
「おいてめぇふざけんな何勝手なことしてんだ」
怒った感情を入れてギルに伝えてみてもやはりだめだったか。
こうなればもう痛い目を見てもらしかなさそうだな。
「アリシア、一応回復の準備」
「はい、わかりました」
「いつもごめんね〜」
本当にごめんアリシア。
「いえ、回復しかお役に立てませんので」
アリシア、本当にごめん。
そして、大男とギルの勝負が始まった。
宿の外を出て、大きく開けたところに場所を移動する。
大勢の群衆がギルと大男を囲み、見守る中ついにその決闘に火蓋が切られる。
「どっからでもかかってきやがr
ぐはッッ!」
ギルが調子に乗っていると大男は一気にギルの顔面に一発拳を入れる。
まだ本気を出してないと言わんばかりに斧の存在を今一度群衆のみんなに見せつける。
そのままギルは大きく飛んでいった。
「早いッッ!!」
(だが、俺にはあいつにはない『能力』がある。)
『能力発動、眉毛再生』
すかさずギルの能力でダメージを回復させた。
しかし、代償は足が遅いッ!
確かに、眉毛を全部カットすれば倒せる。だが、大男はそんなこと知らないし、知る意味もなかった。
足が遅くなったギルをすぐさま捕らえ、大男は何発も殴りを入れた。
決して片手の斧は使わず。
おそらく、見せつけたいのだろう。群衆達に自分の強さを知ってほしいのだろう。
見るに耐えない。完全にギルの自業自得だ。流石にダサすぎる。
俺は能力を使ってこのイベントをスキップした。
『能力発動、時間改変未来』
少し時間を飛ばした。
しかし、意外ッッ!!群衆達は唖然としている。それは……なんと……なんということか。最後に立ち上がっていたのはギルの方だったのだッッ!!!
片手を上げ、ガッツポーズをとっているッ!
そして、今、樹の脳内に飛ばしたはずの記憶が流れ込んできた。今までこんなことなかったがこれは、樹の能力の『進化』なのだ。
樹はその記憶を頼りにギルが大男に勝った一部始終を辿っていった。




