第三十四話
第三十四話です。
非日常から一変し日常へ。
城ヶ崎は無事退院することができた。
今日から再び登校。
入院中に色々と春夏冬君から聞いた。
鈴木真由美は別の学校に転校したらしい。
ここで言う転校したらしいというのは城ヶ崎に辻褄を合わせるために吐いた嘘で、実際は違う。クラスのみんなにも急な転校ということになっている。
そして、城ヶ崎が転校してきたのは五月で、はや一ヶ月が経とうとしていた。
六月、何も祝日のない学生にとっては憂鬱な一ヶ月である。
しかし、城ヶ崎はそうではなかった。度重なる非日常な世界に区切りをつけ、体育祭という日常へ心を落ち着かせていた。
いつも通り、春夏冬君と登校をしている。
今までは会う人すべての人に敬語を使っていたが、春夏冬君に敬語を否定されたので、これから目上の人と初対面以外の人にはため語を使用することにした。だから、お嬢様言葉はもう、卒業した。男子でいうとこの中二病を卒業したに近いかもしれない。元々私は金持ちでも何でもないただの一般人なのだから。
「そろそろ体育祭だねっ!」
「そっすね。」
最近わかってきたが春夏冬君は感情を表に出すのが苦手らしく言葉こそ冷たく感じてしまうが別に私のことを嫌いではないということ。
「春夏冬君は体育祭何出るのー?」
「俺は騎馬戦。」
「だけ?」
「そう。」
「そうだよねー。うちの学校って人数多いから出れる種目が少ないよね。私もクラスみんなでやる大縄跳びと100m走しかでないんだよね。(100m走は私が休んでいる間に勝手に決められていた。走るの苦手なのに)
中学の時はもっと色んな競技に出てたから少し寂しい。
春夏冬君は中学の時どうだった?」
などと体育祭に関する他愛もない話しをしていると学校に到着した。
今日から、体育祭練習が始まる。よしっ頑張るぞ!
一時間目は初手から体育のようだ。
体育祭というイベントが近いので、体育の時間は全て体育祭練習に費やされる。
今日の練習は大縄跳びだ。大縄跳びは全員で跳ぶのではなく一人ずつ跳んでいく形式だ。いわゆる『八の字跳び』だ。一人が跳んだら連続して次の人が跳んでいき、クラス対抗で跳んだ回数を競う。一回でも誰かが引っかかってしまったらカウントはゼロになり、再び1からカウントせねばならないといった連帯責任を問われる競技だ。最終的に、カウントが一番多いやつを比較する。そして、何より重要なのは制限時間の管理だ。制限時間は五分と結構長い。この長い時間を取っているのはしっかり意味がある。長い時間ということは失敗する回数が増えるということ、すなわち集中力を長く続ける事と正確さが勝敗の要因となってくるのだ。
と、大縄跳びの確認をしていると自分の番に近づいてきた。
19、20、21と回し手が跳べた回数をカウントしている。プ、プレッシャー…
ストン
足が縄に引っかかってしまった。もうしわけない。
「あら〜大丈夫ぅ?」
どうやら回し手は佐東だったようだ。イヤなやつ。最近あまり絡んで来なかったけどやはり、鬱陶しいな。
「大丈夫。ありがとう。」
「なぁに~いつものお嬢様言葉は使わないの?」
「もう、卒業したので。」
「そ。まぁ、クラスの足引っ張らないでちょうだいね。」
「たまたま縄が引っかかっただけなのでご安心を。さ、続けるわよ。みんなごめんね。」
だが、その次もその次も何回やっても縄に引っかかってしまう。だんだんクラスの雰囲気が悪くなっているのを感じる。
「ごめんみんな、今日ちょっと調子悪いみたい一旦抜けるね。」
この日は体育祭練習を見学することにした。
これ以上あそこにいたら、クラスの雰囲気だけでなく、自分が嫌いになりそうだったから。
抜けるのは我ながらいい判断だったと思う。
だが、妙な違和感を感じた。
小中は問題なく跳べたはずなんだが、やはり、回し手の佐東がまた、何か企んでいるのだろうか。




