第三十二話
第三十二話です。
「ぐはっ、はぁはぁはぁ、あ、危なかった。まさか、あんなところで記憶が戻るとは思わなかった。
だが、樹の『時間改変未来』は奪えた。後はこれを完璧に習得し、自分の能力にする。
だが、まずは回復だ。『能力奪取』の代償。」
もう、鈴木真由美ではない!ネイサだ!ネイサ・クローリーだ!
樹の能力の三分の一を奪えたのは幸運だった。
達成しなくてはこちら側に来た真の目的を。
ネイサは再び新たな拠点である廃墟を見つけそこに身を隠すことにした。
そこで回復に専念しているとふとあることを思い出した。
そう、城ヶ崎瑠奈が見た断片的な記憶を連結するために必要なものだった。
私は、城ヶ崎瑠奈が好きだった。
異世界側から現実世界側を水晶で見るときは城ヶ崎しか映さなかった。それ以外に興味が湧かないほどに。
ある時、城ヶ崎が学校でいじめられているのを目撃してしまった。
放課後のことだった。クラスの数人の男子生徒に呼び出されたのは。
「ねーこれ城ヶ崎さんでしょ?」
男子生徒は城ヶ崎にスマホの画面を見せる。
それは、あるはずがない城ヶ崎のハメ撮りの動画だった。
城ヶ崎は見に覚えがない。フェイク動画で確定だ。
でも、顔は城ヶ崎に似ている。
それに、この男子生徒はそれをフェイク動画とは信じないだろう。
「違う。これは私じゃない。」
「いやいやどう見ても城ヶ崎さん本人だって。」
「私はこんなことしない。帰ってもよろしいでしょうか?」
城ヶ崎は教室から出ようとする。
ドアに手をかけたとき一人の男子生徒が、
「じゃあこれクラスのラインでばらまいていい?」
と言った。
「え…?」
「だって城ヶ崎さんじゃないんでしょ?だったらいいじゃん」
「やめて!」
「それは認めるということでいいのかな?」
「うっ…」
「黙っちゃって。わかったよじゃあ今から確認しよう本当かどうか」
「確認…?」
「そう、確認だ。よく見てみなよ、この動画ではここの胸のあたりにホクロがあるでしょ?もし、城ヶ崎さんが違うってんならホクロがないはずだ。脱げ!今ここで。でないと、ネットで拡散する。」
だめだ。ここで脱いだら本当に私のエロ動画ができあがってしまう。
「ほらー早くしなよ。脱げないなら俺達が脱がしてあげるよ」
「いいわ、その動画は私ではないものネットにでもあげていいわよ。じゃあね。」
城ヶ崎は教室からダッシュで逃げる。
「あーあーそんなことすんだー。よし、予定が変わったお前たち城ヶ崎を捕まえろ。今俺はとてもムラムラしてるんだ。早くしろ。」
「了解しましたー!」
数分後…
「ゼェゼェ居ません。どこにも昇降口に城ヶ崎の荷物があったのでまだ、学校内にいるはずなんですが…
見つかりません。消えました。」
「ちっ…だめだ早く探し出せーーっ!!」
「はいっ」
それはそうだ、学校にいるわけがない。
城ヶ崎が逃げている途中でネイサが異世界に転移させたからである。
「君ぃー大丈夫?」
「え?ここは?」
城ヶ崎が場所を尋ねたところで目が覚めた。
何か懐かしい気分だ。でも、どんな夢を見たかはもう覚えていない。




