第二十一話
第二十一話です。
城ヶ崎琉奈にとって大きな誤算があった。
現実世界に逆転移するとき記憶消去で樹とアリシアの記憶を削除するために能力を使った。しかし、その時城ヶ崎自身と他三人の女の能力者までもが記憶消去の巻き添えとなってしまった。しかも、それだけではない、逆転移していった奴ら全員それぞれの学生として、憑依する形で転移してしまったのだ。幸いにも元の人間の記憶は引き継がれるらしく自然と周囲に溶け込んでいる。もちろん彼女らは自分が異世界から逆転移してきたなんて思いもしないだろう。普通の学生として生活しているのだ。
城ヶ崎だってこれらの誤算をしていることに気づくこともない。
――一方異世界では
「樹さん、私の記憶はほんの数時間前の記憶がないだけです。
さぁ、当初の目的である城ヶ崎を助けに行きましょう。」
「何言ってんだ。城ヶ崎には能力があるじゃないか、それと今気づいたが、『支配』の能力を持ってるやつは佐東だ。やはり、服装が変わっていたので分からなかったが間違いない。あいつらは仲間なんだろ」
「はい。でも、先程この部屋に来る前に水晶を現実世界に設定し覗いて見ましたがどうやら変なんです。」
「変…?」
「逆転移していった四人を追ってみたんですが、どうやら記憶が無いらしんですよね。」
き、記憶が無いだとっ!?
「ですから、樹さんが時間を戻す前となんら変わってないんです。
変わったことがあるとすればただ沢城樹という人物が居ない世界ができてしまったことです。
なので、助けに行きましょう。」
「……でも、やっぱり俺が助ける意味を見いだせない」
「わかりました。では助ける理由を提示します。
城ヶ崎さん、佐東さんそして他の二名、これらの記憶が戻ったら現実世界が終わります。」
「終わる?」
「ええ、記憶、支配、無限、略奪。
もう世界の均衡が保たれなくなります。
そして、この中で一番記憶を戻してはいけない人が――」
「城ヶ崎琉奈か……」
「はい、城ヶ崎さんの記憶が戻ってしまうと記憶操作で他の三人の記憶が戻される可能性があるからです。」
「それで?」
「記憶をそのまま維持するにはできるだけ彼女の平穏を保つことが必要です。
なので樹さんは城ヶ崎さんの平穏で普通の学生生活を送らせるという理由を見いだせるはずです。」
「はぁ〜」
俺はため息をついた。やるしかないのか。
「わかったよ。アリシア、水晶を出せ。」
「はい!」
アリシアは相変わらず「それ入らんだろ」って感じのバックから水晶を取り出す。
中はどうなっているのやら。
俺は水晶を覗く。
水晶には学校の教室で城ヶ崎と佐東が話している所が映った。
何を話しているのだろう。
「ねー城ヶ崎さん今日一緒に帰らない? 引っ越して来たんでしょ? この町を案内してあげるよ。」
「お願いします佐東さん。」
おい、全く同じ会話じゃないか。ということは……
「城ヶ崎さんスイーツとかって興味ある?」
「スイーツ、私好きですよ興味あります!」
だよな、歴史は繰り返されると言うわけか。
それから佐東と城ヶ崎はバスに乗り、電車に乗りと結構な大移動をした。
薄暗いその路地は狭く薄気味悪くジメジメとした人気のない例の場所だった。
もう、何が起こるかはわかっている。なので俺は少し早めに能力を使うことにした。
『能力発動、時間作成』
コピーの俺を現実世界に先行させた。とりあえず物陰に潜ませる。
城ヶ崎がやられたという事実がほしいためである。
「そうそうこの辺なのよねッッ!!」
佐東が城ヶ崎を殴った。
今だ!
俺は城ヶ崎の前に颯爽と登場する。
「おい、お前何してんだよ」
「は?あんた誰よ?」
そういえば俺はこの世界に存在しないんだった。
「誰だっていいじゃねぇか
傷ついている今にでも泣きそうな女の子を見過ごせるわけねぇだろ!!」
「は?何よそれ?ま、いいわ今日はまだ初日だしね
見逃してあげる」
そういって佐東は立ち去った。
やはり、記憶が消されているのだから前と同じように男子生徒を支配するのは無理そうだな。
「おい、お前大丈夫かよ」
城ヶ崎に手を差し出す。
「あなたは?」
「ただの通りすがりさ」




