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6.夜会の始まり

「夜会だと…?帝国の皇太子が来る!?」


「ど、どうしましょう?」



届いた書簡には帝国の皇太子が視察に来るので夜会を開くようにとのことだった。

王族はもちろん、貴族も全員が参加するようにと記されている。

…まずい。ミルティアはまだ見つかっていない。どうやって誤魔化すか。


「…公爵、ここはとりあえず、ミルティアは原因不明の感染症にかかっていることにしよう。

 父親である公爵が説明すれば、少しは説得力があるだろう。」


「感染症ですか…わかりました。今回はそれで切り抜けましょう。

 フォレッド王子たちは出席させるのですか?」


「…仕方あるまい。全員出席するようにとのことだ。

 何人も欠席させたらあやしまれてしまうかもしれん。」


「わかりました。」




帝国から使者が来るのは数年ぶりのことで、歓迎の夜会は盛大に開かねばならない。

それもただの使者ではない。皇太子が直々に視察に来るという。

王宮の大広間だけでは足りず、大広間の近くの部屋や中庭もすべて夜会会場となる。


これほど多くの貴族が集まると紹介をしながらの入場は出来ず、

帝国の皇太子の挨拶の時間だけが決められ、貴族たちはその時間よりも前に入場することになった。


親世代の貴族たちが大広間に集まる中、令息や令嬢は中庭を中心に集っていた。

先日の卒業を祝う会での醜聞騒ぎが伝わり、大広間に居づらかったということもあった。


最初は気まずそうに話していた令息や令嬢だったが、お酒の力も加わり、

次第にいつもの夜会の雰囲気に近付いているようだ。

そして、その中心にいたのはやはりフォレッド王子とレミアだった。

謹慎中だということも忘れ、王子たちは酒を飲み、楽しそうに笑っている。


そこに現れた一組の男女に気がついた令息や令嬢が言葉を失う。

水色のシフォン生地を重ね合わせた一級品のドレスを身にまとい、

バファル国で唯一の銀髪を綺麗に結い上げた気品あふれる美しさのミルティアと、

宰相姿とは違って眼鏡を外し黒髪を整えたことで、本来の端正な顔立ちを隠さないカインだった。


二人はぴったりと寄り添い、仲の良さを隠そうともせずにフォレッド王子とレミアの前に立った。


「お、お、おまえ!生きてたのか!」


「あらぁ。お義姉さまってば、よくこの場に来れましたね?」


「…フォレッド王子とレミアは相変わらずね。」


「なんだ、その態度は。ここは汚れた女が来る場所じゃないぞ。

 さっさと帰るんだな!」


「うふふ。汚れた女だなんてぇ。でも、そうよね。

 お義姉さまはあの日何人の令息と仲良くしたんでしょう?

 カイン様、お義姉様を横に置いておくとカイン様まで汚れますわよ?

 こちらに来て一緒にお話しましょう?」


「汚れた女?誰のことを言ってるんだ?」


「ええぇ?知らなかったんですかぁ?お義姉様はこの前の夜会でぇ、

 いろんな令息たちにめちゃくちゃにやられちゃったんですよ。

 だから汚れちゃってるんですぅ。ホントかわいそぉ。ふふっ。」


「はーホントだ。こんな悪女が好きって、王子は趣味悪すぎだろう。」


「おい、なんだと!?」


「言っておくが、ミルティアは少しも汚れてないよ。

 この前の夜会も俺がすぐ解毒剤を飲ませて保護したからな。

 他の男には指一本ふれさせてないよ。

 俺は婚約者を他の男にさわらせるようなことはしない。

 ミルティアはそのまますべて綺麗なままだよ。

 ほら、俺のミルティアは女神のように美しい。」


「カインってば、言いすぎよ…もう。」


「いいんだよ、このくらいはっきり言っておかないと、

 周りも誤解したままだろうしな。」


見渡すと、騒ぎを聞きつけて貴族たちが集まっていた。

その中には前回の夜会での出来事で心を痛めていた者もいたようで、カインの説明でほっとした顔をしている。


「は?婚約者ってなに?カイン様がお義姉様と婚約?うそでしょ?」


「あぁ、そうだぞ。公爵家の者が陛下の許可なしに婚約できるわけ無いだろう。

 お前らいいかげんにしないと不敬で捕まえるぞ。」


「何をしているんだ!この馬鹿!早く謝れ!」


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