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その4

 シチュワート王子が去ってから、私は表の庭園に散歩にでかけた。雨が降っているので、ルナは顔を顰めたが、私はどうしても外に出たかったのだ。

 庭に出て、木々を見ながら歩いていると、奥の方で薔薇の花を眺めている女性が目に入った。


「アリシア王女」


 私が声をかけると、アリシア王女が振り向いた。


「まあ、エミリー嬢。こんなところで会えるなんて」


 柔和に口許を綻ばせるアリシア王女に、私は一礼する。


「結婚式の招待状ありがとうございます」


 礼を言うと、アリシア王女が激しくかぷりを振った。


「お礼を言いたいのはこちらの方だわ。本当にありがとう。それから散々迷惑かけてごめんなさい。招待状の話は聞いてます。お兄様が届けてくださったのね」


 アリシア王女の言葉に私は頷く。


「はい。でも、アリシア王女。もう『お兄様』は卒業では?」


 少し悪戯っぽく視線を送ると、アリシア王女が目を見開いた。


「あ、そうね。ええっと、ワイアード様」


 頬を赤くして訂正するアリシア王女に、私はくすりと肩を揺らす。


「お顔が真っ赤ですよ」

「まあ、年上をからかって!」

「今までのお返しですよ」


 頬を膨らませるアリシア王女を前に、私は笑いながら肩を竦ませた。二人してくすくすと笑っていると、前方から声が飛んできた。


「こんなところにいたのですか、エミリー」


 驚いて顔を上げると、シチュワート王子が歩いてくるのが見える。


「シチュワート様! なぜここに?」


 目を瞬いて尋ねると、横に並んだシチュワート王子にアリシア王女がお辞儀をする。


「シチュワート王子。この度は本当にご迷惑おかけしました。色々と助けてくださりありがとうございます」


 丁寧に挨拶をするアリシア王女に、シチュワート王子が手を左右に振った。


「いやいや、私はエミリーが心配だから傍にいただけなので。お礼を言われるほどのことはしていませんよ」


 笑顔を張り付かせて言うシチュワート王子の言葉に、アリシア王女が一瞬固まる。


「……怒っていらっしゃるのね。無理はありませんけれど」


 しばらくして、吐息とともに言葉を吐き出すアリシア王女へ、シチュワート王子が肩を竦ませた。


「エミリーが許しているのだから、もういいですよ」


 シチュワート王子の言葉を聞いて、私は頬を熱くする。手で仰いでいると、アリシア王女が羨ましげな声を上げた。


「とても愛してらっしゃるのね。エミリー嬢は幸せね、こんなにまで想っていただけるなんて」


 悲しげな表情をするアリシア王女に、私は告げる。


「ワイアード王だって、アリシア王女のことを本当に深く想っていらっしゃいましたよ? それこそ、夜眠れないくらい」


 事実を話すと、アリシア王女が大きく目を見開いた。


「そうだったの……」

「はい」


 みるみるうちに頬を赤く染めるアリシア王女を見てほっこりしている私に、シチュワート王子が声をかけてきた。


「そうだ。エミリー、ご両親のことなのですが。ご実家に行くのではなく、城へ来ていただこうかと思っているんですよ。いかがですか?」


 いきなり話を転じられ、私は目を瞬く。


「お城へ? ご迷惑じゃないでしょうか?」


 不思議に思って尋ねると、シチュワート王子が首を左右に振る。


「いや、むしろ馬車を街中に長々停めておく方が迷惑かなと思いまして」


 シチュワート王子の言葉に、私は家の前のことを想像する。そう言われてみれば、広場とはいえ、大きな馬車が街中に置いてあるのは、少し邪魔なような気がする。


「確かにそうですね。じゃあ、私手紙書きますね」


 今回は正式な挨拶でもあるから、街着で向かう訳にもいかないのだろう。私は内心で吐息しつつシチュワート王子へ返答する。だが、シチュワート王子はかぶりを振ってきた。


「あ、それは大丈夫です。水を飛ばしますから」


 シチュワート王子の発言に、私は問う。


「あ、水でメッセージを送るっていうあの?」

「はい」


 頷くシチュワート王子に、私は微笑んだ。


「じゃあ、お言葉に甘えます。よろしくお願いします、シチュワート様」


 そのまま見つめ合っていると、脇からアリシア王女の声が聞こえてきた。


「まあ、ゆっくりしようと思って来たのですけど。なんだか当てられに来たみたいですわ」

「アリシア王女」


 文句を言うアリシア王女に、私は耳を熱くする。そんな私をよそに、シチュワート王子が口を開いた。


「とにかく、お互い幸せだということですよ」


 爽やかに笑むシチュワート王子に、アリシア王女も同意する。


「そうですわね。本当に。二人ともありがとう」


 改めて礼を言ってくるアリシア王女に、私は破顔した。


「アリシア王女、お幸せに!」

「あなた方もね!」


 私がアリシア王女の手を取って告げると、アリシア王女も幸せそうな笑みを浮かべ、手を握り返してきた。


ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。


気に入ってくださいましたら、ブクマ、評価などしていただけますと、

大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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