その6
「ワイアード王、私はあなたが他に想う方がいることを知っています。私はあなた方のようにあなたのことを考えたりしていません。真実想い合っていなければ、聖水を飲んでも問題はないはずです」
私の話に、ワイアード王がかぶりを振る。
「だが、偽りの愛でも作用してしまったらどうする。取り返しがつかないではないか」
「それもやってみればわかるかと」
ワイアード王の言葉に私は肩を竦める。だが、ワイアード王は焦ったような声を上げた。
「いやいや、わかっていないようだな。私はそなたの顔を見ただけで、真実そなたを好きになってしまうのだ。わかるか? しかも日に日に深くなってきている気さえするほどだ」
予想外の話に私は目を見開く。計算外もいいところだ。
「それは、困りましたね……」
呟くと、ワイアード王が深い溜め息を吐いた。
「まったくだ」
「ちなみに今は私ではないのでしょう?」
一応確認すると、ワイアード王がふんと鼻を鳴らす。
「当たり前だ。本来ならば私の心は生涯アリシアに捧げるつもりだったのだから」
終わったことのように言うワイアード王が切なくて、私は問いかける。
「過去形、ですか?」
否定して欲しくて訊いた私に、ワイアード王が身を縮こませた。
「わからなくなってしまうのだ。私は真実アリシアを愛しているのに、そなたの顔を見るともう抑えが効かなくなってしまう」
苦しげなワイアード王の声音に、私は、なら、と言葉を投げかける。
「もっとご自分を信じるべきです」
きっぱりと告げると、ワイアード王が訝しげな声を上げた。
「どういう意味だ?」
「ワイアード王はご自分に自信を持ってなさすぎです。そんなんじゃ、惚れ薬を飲んでいなくても、アリシア王女は愛を受け入れてくれないかもしれませんよ? それじゃ、困るじゃないですか」
私が言葉を紡ぐと、ワイアード王が唸る。
「む……。確かに……。だが! だとしてもだ。今聖水を飲むことはできない」
断固としたワイアード王の発言に、少し考えたあと私も同意した。
「それは、私もワイアード王の話を聞いて思いました。たぶん、私たちは儀式の時まで極力顔を合わせない方がいい」
「うむ」
ワイアード王が首肯する。私は視線を光の神の像に向け、それに、と口を開く。
「私の力だけでは、何かが足りない」
私の言葉に、ワイアード王が頷く。
「そうか。なら、どうする?」
訊いてくるワイアード王に、私ははっきりした口調で告げる。
「見つけます。その、最後のピースを」
私が言い切ると、長い溜め息が聞こえた。
「……私にできることがあれば、言ってくれ。使いをやろう」
「ありがとうございます」
「ではな。今日はそなたにここを譲るとしよう」
影が踵を返す気配がして、私はその背中に向かい呼びかける。
「ワイアード王……。必ず元に戻してみせますから。だから、気を強く持ってください」
「ああ。そうだな……」
ワイアード王が微苦笑とともに首を縦に振る。去っていくその影を見守りながら、私は強く拳を握り締めた。
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