その1
ブクマ、いいね、本当にありがとうございます!
大変励みになります。
最後まで頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私たちは連れだって城へと戻った。足取りは重く、これからどうなるのかも不安でしかたがなかったが、こればかりは逃げる訳にはいかなかった。やっとのことで城へ戻ると、扉の前でアリシア王女が待っていた。
「ただいま戻りました」
口角を上げることさえできず挨拶すると、アリシア王女が駆け寄ってくる。
「ああ! エミリー嬢! どうなりましたか?」
「魔女チェレルに会い、解毒薬を作ってもらいたした。けれど……」
私は途中まで事情を説明し、言葉を切る。
「どうしたのです? そういえば、シチュワート王子は?」
「それが……」
私は改めてこれまであった出来事を、アリシア王女にすべて報告した。
「まあ!」
アリシア王女の顔が苦痛に歪む。みんなが笑顔になるため魔女へ会いに行ったのに。私は拳を握り締めながら、報告を続ける。
「ですから、私たちが真実、お互いを思い合っていると証明しなければ、解毒薬は現れないのです」
説明を終えて口を閉ざすと、アリシア王女がおもむろに私の手を取ってきた。
「……エミリー嬢、これはすべてわたくしの責任です。大変申し訳ないことをしました。わたくしが余計なことを企んでしまったばっかりに!」
口元に手を当てアリシア王女が嗚咽する。私は心を奮い立たせ、明るい声音で語りかけた。
「泣かないでください、アリシア王女。あなたは確かに良くないことをしてしまいましたけど、魔女チェレルが言っていたんです。私たちが会うのは『運命』だって。だから、この試練、乗り越えなくちゃならないのは私なんです」
「エミリー嬢」
涙声で名を呼んでくるアリシア王女を前に、私は胸に手を当ててみせる。
「大丈夫です。私が絶対にシチュワート王子をてんとう虫から人間に戻してみせますから!」
「エミリー嬢、あなたは強いのですね」
私の言葉に、アリシア王女が目元の涙を拭き口許を綻ばせた。
「一人じゃないですから。シチュワート王子がついていてくれるから、私は立っていられるんです」
私は肩にとまっているてんとう虫を見つめつつ微笑む。
「羨ましいわ……」
しみじみ告げてくるアリシア王女の気分を上向けたくて、私は話題を変えた。
「それよりワイアード王は今どうしてるんですか?」
私の発言に、アリシア王女は目を瞬かせる。
「午後のご公務をなさっていたと思うのだけれど」
「普通に?」
「あなたの顔を見なければ普通でいられるようですわ」
悲しく微笑むアリシア王女の言葉を聞き、私は姿勢を正した。
「なら、今のうちに部屋へ戻ります。今会っても解毒薬がなければ意味がないですから」
「そうね。それがいいと思いますわ」
首肯するアリシア王女を背に、私は扉へと向かった。
***
さあ、部屋へ戻ってすぐにルナと作戦会議を開かなくっちゃ。などと勢い込みつつ部屋のドアを開けると、そこには先客がいた。
「ワイアード王!」
まさに招かれざる客!
冗談じゃない、と後ずさりしていると、ワイアード王がずかずかと近づいてきた。
「エミリー殿! 待ちかねていたぞ!」
「どうしてここに!」
私が尋ねると、ワイアード王が眉を八の字にした。
「もう会えないのではないか、と不安になり、そなたの温もりを感じたくてここを訪れていたのだ」
私は手を握ってこようとするワイアードをすり抜け、腰に手を当てた。
「ワイアード王、いいですか! あなたが好きな人は他にいるんです。だから、早くお仕事に戻ってください」
だが、ワイアード王はかぶりを振ってくる。
「それは違う。この胸の高鳴りはそなたを前にしてしか起こらない。エミリー殿、今一度乞う。私はそなたが好きだ。愛していると言ってもいい。だから、ぜひ私の妃となってはもらえぬだろうか?」
膝をつかれ、恭しく見上げてくるワイアード王を前に、私はノーを突きつけるべく口を開いた。
「はい!」
私は、言った途端冷や汗を掻いた。自分で自分が信じられない。なぜ? まさかワイアード王にも反対の言葉がでてしまうの?
「え? エミリー様?!」
ルナが目を剥いて駆け寄ってくる。
「あ! いや、そうじゃなくて!」
私は必死で手を左右に振った。だが、ワイアード王の瞳には、歓喜の色が浮かんでいる。
「私の想いを受け入れてくれるということか? 私を愛していると?」
ワイアード王の言葉に、私はもう一度否定しようと口を開く。
「はい! 愛しています!」
「エミリー様!」
私はまたしても思っていることと逆の言葉を発してしまい、隣で聞いていたルナが絶叫した。だが、そんな私たちをよそに、ワイアード王が目を潤ませ近づいてくる。
「エミリー殿!」
両腕を広げて抱きつこうとしてくるワイアード王を前に、私は両手を突き出しガードした。
(いやー!)
全力で突き飛ばす覚悟を決めた時だ。水の柱がワイアード王を吹き飛ばした。目を瞬いていると、ほんの一瞬だけ、半透明のシチュワート王子が姿を現した。
「シチュワート様!」
私が叫ぶと、シチュワート王子は振り向き、にこりと微笑む。だが、次の瞬間、その姿は消えた。代わりに現れたてんとう虫が私の肩にとまる。
「ありがとうございます、シチュワート様」
私はてんとう虫に向かって口許を綻ばせた。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。
気に入ってくださいましたら、ブクマ、評価などしていただけますと、
大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。




