その1
夜が明けた。
今は城の門扉の前で、馬の準備ができるのを待っている。
私は馬に乗らないから関係ないのだけれど、シチュワート王子たちは皆馬で行くことになっていた。
「昨日は眠れましたか?」
「はい。おかげさまで」
話しかけてくるシチュワート王子に、私は笑顔で答える。
「シチュワート様、馬の準備ができました」
「そうか。わかった。それではエミリー様、行きましょうか?」
ルーカスに頷き、シチュワート王子が私を促してくる。
「ええ」
私は首肯し、門扉の外へ向かう。
馬の手網を引いたシチュワート王子とルーカス、それからルナを横目に、ポケットから青い液体を取り出した。小瓶の栓を抜き、城の門の外へと勢いよく撒く。待つことしばし、青い足跡が浮かび上がってきた。
「行きましょう」
私が三人を振り返ると、それぞれが首を縦に振った。私は前を向き、青い足跡を追って歩きだす。足跡はゆっくりと現れるので、徒歩の私でも問題なく追うことができそうだった。
空も青く、白い雲がぽっかりと浮かびゆったりと進んでいく。本当に長閑な旅で、これから先もなんとかなるような気がしてきた。
(これなら、全部上手くいきそう)
一人微笑んでいた時だ。
突然、後ろから荒々しい蹄の音が聞こえてきた。
「待て待て待て! エミリー殿! 頼むから待ってくれ!」
猛烈な勢いでやって来たのは、ワイアード王だった。
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