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桜の花弁
その日以来、家庭内での暴力が収まる日はなかった。日に日に母親から笑顔は消えていき、逆にそれに反比例するかの様に傷は増えていった。白く綺麗な肌は赤黒く変色し、綺麗な艶々とした黒髪も生気を失くし光沢は褪せていった。そうなると不思議なもので母親は急激に老け込んでいったかに見えたのだった。そう思えてから、よく母親を観察してみると今まで気にもとめていなかった些細な事が目につく様になった。
染み、皺、白髪。
きっとそれは以前からあったに違いないのだろうけど…。
そういったモノが私から母親への想いを汚していった。
母親は家に引きこもるようになり、そしてまた老けていく。
抜け出すことの出来ない悪循環に陥った。
半年程過ぎた頃。
事の異変に漸く気付いた母親の両親が…。
警察へと相談し、私達家族を解体したのだった。
私は母親に引き取られることになった。正確に云うのならば母方の両親。つまりは私の祖父母に引き取られたのだ。母親は気が触れていたのだろう。母親としての機能を持ち合わせていなかった。
離婚してからの父親の詳細は知らされてはいない。
知る必要もなかったからだ。