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桜の記憶
生命のある総ては…。
やがて共通する1つの事象へと辿り着く。
どうやら、現在の私の眼前には…。
其れがあるらしい。
其れは私が犯した罪の罰であり…。
然るべくして行われるモノなのだ。
眼前に佇んでいるー
この男性の瞳はマットブラックの様な色だった。
ー誰だっけ?この人は…。
記憶なんてモノは不確かで曖昧だ。
覚えていた記憶が正しいのかなんて誰も解らない。
見覚えがあるような気がする。だけれども知らない人だ。
言葉を交わした記憶はない。何処かで出会っていた記憶もない。
それでもー
《この眼前にいる異形の影に私は殺される。》
そう思えて仕方ないのだ。
そのマットブラックの瞳は語る。
「私には関係の無い事だけど、あのシチュエーションだけは赦せないな…。過去を思い出してしまった。私を不機嫌にさせたんだ。それ相応の罰を受けて貰うよ。楽に死ねると思わないでね。だけどその前に知りたい事があるんだ…。」
走馬灯と云うモノが存在する。
ならば…。
現在、私の脳内で動き回る記憶は…。
そういったモノなのだろう。
これから始まる物語はー
私の物語でありー
楢木桜と云う人間の人生の記憶だ。