桜梅桃李
この世界には、理解出来そうで理解出来ない事は多々ある。
それが人の感情が絡むのなら尚更だろう。
胎天理教の教えにある『真実の愛』。
ソレを求めれば求める程に『愛』が何だか解らなくなった。
漠然とした形としては何となく感じられるのだが…。
言葉にしようとすれば、ソレはその形を失ってしまう。
そして『愛』には…。
相手が必要なのである。ソレは勿論、私以外の存在と云う事になる。では…。私は私の事を理解しているのだろうか…?否。理解しているつもりになっているだけだったのだ。自分自身の事でさえ解らぬ私に、私以外の存在を理解出来る道理は無い。そう。血の繋がりがある家族の事でさえ、私は解らなかったのだ。況してや血の繋がりの無い他人を理解出来るのであろうか…。
私が、その『迷い』の中にいると…。
教祖は…。ある言葉を紡いだ。
【濃密な時間を共有するモノは天国の扉を開く鍵となる。】
その言葉を聞いて、私は涙が零れた。
私には家族がある。その家族とは血の繋がりがある訳では無い。専門学校時代に知り合った友人達だった。その友人達も家族が破綻していたのだった。疵を舐め合う様に寄り添っていた私達の関係は、世間的に云うのなら歪な関係なのだろう。
しかも…。
私達は、ある秘密を共有している。
そう。濃密な時間を共有している事になる。
そして…。
私は…。
友人であり家族でもある。4人を胎天理教へと導いたのだ。
現在から3ヶ月程前…。
恋人である上村直仁が…。
解りやすく狂い始めた。
天国へと至る階段を見つける為に…。
数人の教徒と関係を持つ様になった。
会社員。女子高生。女子大生。
そして…。
私の家族であり、唯一の同性の親友…
横峯亜紀だったのだ。