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人間観察1

「ここは何かしら?」

イリーナの声をきき、その方向を見る。人間界の上空を飛んでいるときに一風変わった場所を見つけた。


「大きな建物……。」

しかもすごい装飾だった。やはり人間が作るものは精密だ。


「人間がいっぱいいる!」

サナが指をさしながらそのようなことを言う。確かに多くの人間が歩いているのが確認できた。しかし何かが変……ここにいる人間、全員魔法が使える?


「ちょっと見てくる!」

「あ、まちなさ……」

イリーナが止めるがそれを聞かずに地上へと降りていってしまった。


「……どうする?キサラ。」

「はぁ……認識阻害をかけて私たちもおりよ。」

「わかったわ。」

イリーナが私にも認識阻害の魔法をかけてくれる。そしてゆっくりと地上へと降りていった。



「アナスタシア様。」

ソフィアさんが急に私の名前を呼ぶ。


「わかってますわ。」

その理由は私もわかっている。この学園の上空に何かがいる。


「どうされました?」

アナさんが私たちの表情を見てそのようなことを口にした。


「いえ、特に何もありませんわ。……私、ソフィアさんと少しお話があるので先に部屋まで帰っていただけません?」

「は、はい、かしこまりました。」

そういってアナさんは私の部屋まで戻っていった。周囲を見渡すとこの学園の学生がちらほら歩いていた。


「人払いの魔法をかけます。」

ソフィアさんの周囲の魔力が学生たちの精神に影響を与える。私たち周辺から徐々に人々が離れていく。


「とりあえず訓練場へ行きますわよ。」

「はい。」

広い場所の方が戦闘があった場合に被害を抑えることができる。



「一番魔力密度の濃いところに降りたんだけど、あんたらのどっち?」

……魔族。ハーヴェストさん以外の魔族を久しぶりに見た気がする。相変わらず魔力密度が濃い。


「この学園に、何か御用でして?」

「私が質問してるんだけど。」

鋭い目がこちらを見据える。


「……礼を欠く相手にはそれ相応の対応をさせていただきますわ。」

最初からそのような態度で接してくるのであれば、丁寧に接する必要はない。今はアナスタシア・アスターなのだ。貴族があまりへり下りすぎるのも良くないだろう。


「はぁ、めんどくさいから殴っていうことを聞かせよー」

消え……


「かはっ!」

ドン!という音とともに私の腹部に衝撃がはしった。不意打ちとはいえ、攻撃をくらってしまうとは。魔法障壁を貼っていたから致命傷まではいかないが、なかなかい痛い。


「へー、すごいね。結構本気で殴ったはずなんだけど。」

ソフィアさんが回復魔法をかけてくれたので、既に傷は治っている。


「申し訳ありません!私がいながら!」

そう言いながら私の前に出ようとする。私を守るためについてきたのに、その役目を果たせなかったことを悔いているようだ。


「問題ありませんわ、ソフィアさん。」

が、私はソフィアさんが前に出るのを止める。この魔族は野放しにできない。ここで私が止めなければ学園のみんなが危険に晒されてしまう。それと、この魔族の態度が私は気に入らない。


「次はもっと強く……」

「次はありませんわ。」

ボトリ、と相手の魔族の右腕が落ちる。


「は?」

魔族は何が起きたかを理解していないようだが、私はさらに闘気を練り上げる。


「バルザ流・断頭」

「は、ま、まて、がぁっ……」

首も地面に落ちていく。


「サ、サナ!?」

その瞬間何もなかった空間からさらに魔族が飛び出してきた。長い水色の髪が印象的だった。


「よ、よくもサナを!」

こちらへとものすごい勢いて突っ込んでくる。


「ソフィアさん。」

「はい、かしこまりました。」

ここはソフィアさんに任せよう。


「はぁぁぁぁ!」

「華流・剪定」

魔力のこもっていた拳が、ソフィアさんの短剣によって受け止められる。


「ファイアーボール!」

「バニッシュルーム。」

「なっ!」

長髪の魔族が出した魔法が、その瞬間に拡散される。


「華流・一刀」

「超硬化!」

ガギィンとまたもや新しく魔族が現れ、ソフィアさんの攻撃を受け止める。……おそらくこの魔族が一番強いのだろう。雰囲気がまるで違う。


「よくもサナを……!」

短髪の魔族の右腕に魔力が集中していく。


「ブラックナックル!」

「エアヴェール……っ」

っ!ソフィアさんの頬から一滴の血が流れる。この魔族はかなりの攻撃力を持っているということだ。私がくらったら骨が何本か折れたことだろう。


「え……私の全力が……。」

「バインド」

「しまっ……」

短髪の魔族を魔法によって縛り上げる。


「華流・一刀」

「あ……」

長髪の魔族の首から左肩にかけて、切断する。魔法障壁が貼ってあったがソフィアさんの攻撃力の方が上のようだ。



化け物。一言で表すならこうだろう。少なくとも人間ではない。私は今起きている現状を理解しきれていなかった。


「心配は無用ですわ。殺しはしませんので。」

嘘だ。あの二人は完全に呼吸が止まっている。死んでいないはずがない。


「最後に、名前だけでも教えてほしい。」

魔族である以上、自信より強い相手にはたとえ仲間を殺されようと敬意を示さなければならない。


「私の名前はアナスタシア・アスター……いえ、グルンレイドのメイド、アナスタシア・ローズですわ。」

グルンレイド……『グルンレイドのメイド』!?私は反射的に魔界の門の手前でもらった通行証を取り出す。


「それは……ミクトラさんの魔力ですわ!?」

金髪の少女が驚きの表情を見せる。


「それを早くいってくださいまし!ソフィアさん!」

「はい!」

すると後ろにいたくせっ毛が印象的なメイドが何かしらの魔法を唱える。すると……


「ん?どこ?ここ。」

「私は切られたはずでは……」

切られたはずの首は後も残らないほど綺麗につながり、二人が体を起こした。


「……一体、何が。」

これほどの回復魔法を使える存在は異常だ。


「申し訳ありませんわ。許可された魔族だとは知らずに反撃をしてしまいまして。」

「い、いや、先に手を出した私たちが悪かったから!」

私はすぐに頭を下げる。これが魔界の門であったメイドが言っていた『グルンレイドのメイド』か。想像以上に規格外の存在だ。


「二人もあやまって。」

立ち上がった二人にもそういう。


「すみませんでした。」

「ごめんなさい。」

イリーナは素直に謝るだろうと思っていたが、サナもなんの反論もせずに素直にあやまったことに驚く。しかし魔族の性質を少し考えれば納得がいく。全力で戦って、負けたのだ。サナの中ではその事実が揺るぎのないものになっているのだろう。


「今後、急に人に殴りかからないと約束していただけるだけで結構ですわ。」

「もちろん殴りかからない。この二人がそうしようとしても私が責任を持って止める。」

「あなたがそういうのでしたら、安心ですわね。」

少し戦闘をしただけで、私たちの強さを完全に把握している。……私たちではどう足掻いてもこの二人には勝つことはできないだろう。



「あの魔族の方達、強かったですね。特にあの短髪の人。」

「そうですわね。」

短髪の魔族が本気を出していたら、ソフィアさんももっとダメージを負っていたことだろう。


「ですが、人間を意図して殲滅するような魔族ではなくてよかったですわ。」

そのような魔族はミクトラさんが通さないと思うが。


「ですがなんのためにこっちにきたんでしょうか?」

「私もわかりませんわね。……念のためにアシュリーさんに伝えておいてくださいまし。」

「かしこまりました。」

あの感じからすると人間やグルンレイドに害を与える存在にはならないと思うが、一応伝えておいた方がいいだろう。もしかしたらあの魔族たちもグルンレイドの利益へと繋がるかもしれない。


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