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ナンバリング

魔界において強さは絶対の指標である。それを示すのがナンバリングだ。魔界全体にかかっている魔法の効果のせいだろうか、強さが自動的に算出される。その範囲は1から10。


「まあ、そのほとんどは魔族なんだけどねー。」

第9位、サナがそういう。一見順位が低いため弱いと思われがちだが、ナンバリングされている時点で圧倒的な強さを誇っていると言える。


「でもどうやってナンバリングされてるの?気になるわね。」

第7位、イリーナがそういう。私はこの二人と魔界を移動し、さまざまな「人間」についての情報を集めている。人間とは魔物に比べて強いとされる種族である。と言っても私たちのような魔族と比べるとそうでもないが、一般の魔物たちにとっては恐怖の対象でしかない。


「私達でも余裕だけど、キサラにとってはさらに余裕でしょ。」

「ま、そうだね。」

言い忘れたが、私の名前はキサラ。第3位。一見二人と私は同等な感じで接しているが、根本的な部分では私に従う存在である。魔界において強さは絶対の指標だからだ。順位が一つ違うだけでも、その実力差は大幅に違う場合もある。


「とうちゃーく!」

ぼーうっと魔界を飛び回っていたわけだが、サナの言葉で目的地までたどり着いたんだと気づいた。


「ここが魔界の門……ね。」

ぐるっと周囲を見渡しても特に変わった場所というわけではない。ただの平野だ。しかしこの異様な門はこの景色には少し浮いていた。多くの魔物はわざわざ人間界に行くようなことはしないが、戦闘を好む魔族は力試しに人間界へと向かうこともあるようだ。今回私たちは力試しというわけではなく、ただ単純に人間の生態を知るために来た。


「壊れるのかな?」

ガンッ!!そんな音が聞こえたかと思ったら、サナが魔界の門を殴っていた。


「な、何をしているの!」

イリーナが止めに入ろうとしたが、


「いったーい!!」

サナが手を抑えて転げまわっていた。……サナの攻撃でも傷一つつかないほどの強度なのか。


「それくらいにして、早くいこう?」

「ええ」

「はーい」

そうして魔界の門の中に入る。


--


時空が歪んだ気がした。気が付くと別の場所へ飛ばされていたようだ。


「ここは……」

人間界なのだろうか。いや、ここは人間界だ。その理由は周囲の瘴気が格段に薄くなっているからそう思った。


「こんな簡単に来ることができるのね……。」

「早く人間見たい!」

早速人間の町を探そうと思ったら、背後からさっきを感じた。


「誰!」

私が振り向いた瞬間、二人が警戒態勢を取る。


「魔族が人間界に何の用でしょうか。」

その姿を見た瞬間、私の肌がひりつくのを感じた。おそらくだが、強者だ。しかし一つ懸念点があるとすれば……。


「メイド?」

それはメイド服をきていた。


「私はグルンレイドのメイド、ミクトラ・マリー・ローズ、この門を守護しているものです。」

グルンレイド……聞いたことがない。が、


「私たちが何しようと、あなたには関係ないでしょ?」

そういい放つ。サナとイリーナもそう思っていることだろう。


「いいえ、そうはいきません。わたしはご主人様からの命令により、人間に害をなす存在を捕えろと言われております。」

「私たちが、害だって?」

サナがこぶしを構えてそういう。


「かもしれないというだけです。」

「失礼な奴。」

サナがすごい勢いで飛び出す。


「まって……」

その声も届かずにこぶしはあのメイドの頭めがけて飛んでいく。しかし、


「えっ?」

メイドの体をすり抜けて、後ろの岩に激突してしまった。魔法を使っている……?それとも人間ではない?


「はぁ、また人間を殺しに来た魔族ね。コトアルがいなくなってからこっちも見ないといけないからほんと大変。」

そういったメイドの周囲に魔力が集まっていく。そして腰に下げている剣が宙に浮き始める。


「華流・」

っ!危ない!私は駆けだす。


「周断」

「エアヴェール!」

ズンという音とともに、空中に浮いている剣が止まった。……ものすごい威力。


「ファイアーアロー!」

イリーナが魔法を唱え、確かにメイドに当たっているのだがまたもや貫通して後ろの岩に当たってしまう。


「華流……」

「す、ストップ!」

私は大声でそう叫ぶ。目の前にいるメイドと、次の攻撃を仕掛けようとしている二人に向かって。


「あ、あの、人間を襲わないなら通してくれるの?」

「……そうですね。」

「私たちは最初からそのつもり。ただ人間の町を観察しに来たの。」

私がそういうと、メイドは目をじっくりと見てくる。うっ……なんか頭の中を覗かれているようでやだな。しかし目をそらさずにじっと見つめ返していた。


「まあ、嘘ではないようですね。あなたは問題ないでしょう。そしてあなたがいればあの長髪の魔族も問題はない。ですが……」

そういいながらサナの方を向く。


「な、なによ!」

「あのおチビちゃんは危ないですね。」

「お、おチビ……な、なんですとー!」

ガン!と、とびかかったサナの頭をたたきつける。


「うげぇ!」

そして地面に滑り込んでいく。


「私が目を光らせておく。絶対に危害を加えさせないから。」

「分かりました。あなたの実力ならおチビちゃんを止めるには十分でしょう。」

「お、おチビ……」

サナが悔しそうな表情をしているが、無視してメイドは話し続ける。


「これは通行証です。もし私と同じような『グルンレイドのメイド』にあったらこれを見せてください。私の許可が下りたという証明です。」

「うん、わかった。」

怪しいものだが、おとなしくもらっておくとする。魔力の付与もされていないし大丈夫だろう。それをもらって、私たちは歩き始める。サナは帰るときもあのメイドに向かって威嚇をしていたが、私が注意したらやめた。


人間は弱いと思っていたが、そうではないらしい。あれほどの強者を従えている、『グルンレイド』という勢力も調査する必要がありそうだ。少なくとも敵にはしない方がいいだろう。


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