エセル・エルス1
「死ぬかと思ったわぁ。」
「大丈夫だ、私も最初はそう思った。」
聖族様がそういう。いつ見てもこの立派な羽、存在感、そのすべてが私を感動させる。まあ……完全に聖族、というわけではないようですけれど。
「よかったじゃないか。無事にグルンレイドの一員に認められて。」
「普通はありえないことですものねぇ。」
私は『元王国魔法士団団長』エセル・エルス。王国に攻めてきたグルンレイドを殲滅させようとしたもの。だけど、先ほど辺境伯様に許可をいただき、グルンレイドの一員として認められた。
「それでぇ、認められたはいいものの、私は何をすればいいのかしらぁ?」
「ここのメイド……になるんじゃないか?」
メイド……。まあ、生かしてもらった身だから文句は言わないけれど、私にメイドは似合わない気がする。やってみたくない、とも言わないけれど。
「あなたはメイドにはならないよ。」
グルンレイドの屋敷の長い廊下を歩いていると、そんな声が聞こえた。……聞き覚えのある声。
「おまえ……アシュリー、じゃあこいつはどうするんだ?」
アシュリー様、聖族様を従える遥か上位の存在。
「エセル、あなたはロンドの下につきなさい。」
「よ、よろしいのですかぁ!?」
願ったりかなったりだ。聖族様のもとで生きることができるということは、それだけで私は幸せである。
「おい!私をおいて勝手に……!」
「いいね?」
「お……おう。」
アシュリー様に睨まれて、聖族様はそのまま首を縦に振る。
「これからよろしくお願いしますぅ、聖族様ぁ。」
「……まあ、分かった。が、聖族様っていう呼び方はやめてくれ。」
「では何とお呼びすればぁ?」
「ロンドでいい。」
っ!人類よりも遥か上位に位置する聖族様を、名前で呼ぶなど……。しかしこれは聖族様の命令……。
「ロ、ロンド、様。」
「まあ、いいだろう。」
あぁっ!なんという幸せ……聖族様を名前で呼ぶことができるなんて。
「あんたも雑用ができてよかったじゃん。」
「いないときよりは、だいぶ助かるだろうな。」
「エセルもいい?」
「もちろんだわぁ。」
私はそういってロンド様の一歩後ろへ向かう。ロンド様の負担を全力で取り除き、敵を排除する。そのために私はこの力を使おう。




