番外編:柏城彩の体育祭3
「まずは、何をやりたいのか、黒板に書いていった方がいいんじゃない?」
メガネ男子、名前は……えっとさっき自己紹介をしてもらったばかりなんだけど、なんだっけ?が言う。そんな流れで、黒板に『総務』『看板』『広報』という文字が書かれた。
自分のやりたい部門の下に名前を書いていくらしい。正直どこでもいいので、みんなが書くのを待つことにした。すると、予想通りに菅野さんは総務の下に名前を書いていく。ふむふむ、みんなすらすらと書いていくんだね。
残るは東野君と私だけになった。残っているのは広報のみ。ということで私と彼は広報へ。だけど、少し問題が起きてしまった。
「総務が五人……。」
東野君がつぶやく。そう、多くても一部門には四人までしか入ることができない。もし佳奈子が総務に立候補していたらすぐにやめさせたのだが『私イラスト描きたいー』とか言って看板の方に行ってしまっていた。っていうか、どれだけやる気があるんだこの人たちは。総務って一番めんどくさそうな印象だけどあってるよね?
「東野君、どうしたらいいと思う?」
なかなか進展しないので、彼には話し相手になってもらうことにした。菅野さんなんて、なぜやりたいのか理由を一人ずつ発表しようなんて言ってるし。
「まあ、あいつらに任せておけばいいんじゃねぇの。って言いたいところだが、あれは西田が遊んでるだけだ。もう少ししたら解決するだろ。」
西田君が遊んでいる?どういうことなんだろう。確かに西田君も総務に立候補して、なんならやりたい理由を熱弁中なんですけど。
「あいつはほんとはどこの部門でもいいんだよ。ただすんなり決まったらつまらないという理由だけで、人数が多い総務に立候補してる。」
「ほんとに?こういっちゃ悪いけど、西田君ってそこまで考えてるとは思わないんだけどな。」
第一印象はあの佳奈子より馬鹿、という感じだったからね。仕方ないね。
「確かに馬鹿だが……なんて言うか、頭のおかしい馬鹿、いや……。」
東野君が言葉にできないほど、変な人ということになる。と考えているうちに五人の発表が終わったようだ。すると、西田君が急に話し出した。
「いや!すごい、すごすぎる、みんなそこまで考えて総務に立候補していただなんて!俺はすごく感動した。そして、そんな君たちに総務を任せたいとも思った!みんな、俺の分まで頑張ってくれよ!」
嘘っぽく涙を浮かべている。西田君はこういう人だということが、だんだんと認知された来たらしい。みんな、あぁ、またあいつか。といいうような視線を向けている。総務に立候補した残り四人に限っては、自分が総務を務めることができるという安堵の表情を浮かべていた。
ということで、一年生は総務四人、看板三人、西田君を含めて広報三人ということに決まった。菅野さんが解散のあいさつをすると、みんなぞろぞろと教室を後にした。
「いやー。みんなの発表がすごすぎて、俺が入る隙がなかったぜ!」
そいう言いながら東野君と私の方へ歩いてきた。
「西田やりすぎだし、あとめんどくせぇ。早く帰りてぇんだよ。」
「へー、東野がこの話し方をするってことは柏城さんと仲良くなったんだな。」
一瞬誰の声か分からなかった。でも西田君の口が動いていたので、彼が発した声だろう。
「はぁ……。柏城。こいつがそういった理由としては、俺が西田に向かってきつめの口のきき方をしているからだ。クラスメイトとかの前では俺はこんな話し方をしない。」
「そ、そう。」
という返事しかできないよね。まだちょっと頭がついていっていない。
「あの、実は西田君って、案外まとも?」
「柏城さん、そのきつめの口調、東野に似てきたんじゃないか?俺はいつでもまともさ!」
キラーンと八重歯が光った……気がした。声色も元に戻っていた。
「柏城、驚くなよ。こいつは俺よりも成績がいいんだ。」
……彼は何を言っているの?私ちょっとわからなかったなー。東野君よりも成績がいいってことは、私よりも成績がいいってことなんだよー。
「東野君、冗談は顔だけにして?」
「さっきのことも俺の顔も冗談じゃねぇよ……。」
ということは何、私が学年三位。東野君は学年二位。これは甘んじて受け入れるよ。でも、まさか西田君が学年一位?あのバカが?
「俺は馬鹿じゃないぞ?そう、少なくともお前らよりはな!はっはっはー」
屈辱……。私が学力に関してこの人より劣っているというの?
「柏城、つらいと思うが……気を落とすなよ。」
東野君が励ましてくれた。次の定期テストは絶対に負けないと心に誓った。
あ、それと佳奈子は看板の女子たちとパンケーキを食べに行った。君はいつも食べることばっかりだね!私はそれに安心感を覚えつつあるよ!佳奈子はいつまでも変わらず、そのままでいてね!




